私は売られてきた

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861822810

感想・レビュー・書評

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  • 3.97/106
    『貧困ゆえに、わずかな金でネパールの寒村からインドの町へと親に売られた13歳の少女。衝撃的な事実を描きながら、深い叙情性をたたえた感動の書。
    全米図書賞候補作、グスタフ・ハイネマン平和賞受賞作。
    金原瑞人選オールタイム・ベストYA第三弾!』(「作品社」サイトより)

    冒頭
    『「もういちど雨季が来たら、うちの屋根はおしまいね」アマ(母さん)が、丸太のはしごにのぼって、わらぶき屋根のぐあいを見ながらいった。』

    原書名:『Sold』
    著者:パトリシア・マコーミック(Patricia McCormick)
    監修:金原瑞人
    訳者:代田亜香子
    受賞:グスタフ・ハイネマン平和賞

    メモ
    ー抜粋ー
    『毎年、一万二千人近いネパールの少女が、家族によって、知ってか知らずかインドの売春宿に売られています。アメリカ国務省の推計では、世界的には年間五〇万人近い子どもが性産業に売られています。(「著者あとがき」より)』183p
    『三〇ルピー。それって、…コカコーラひとびんのお金だ。それがあたしの値段。 』103p

  • (2011.01.14読了)(2011.01.06借入)
    2010年11月6日(土)の「週刊ブックレビュー」で紹介された本です。
    番組のホームページでは、本の内容を以下のように紹介しています。
    「ネパールとインドの間で横行する人身売買の、衝撃的な実態を取材した物語です。ヒマラヤ山脈を望む小さな村。13歳の少女・ラクシュミーは、貧しさゆえ、街に働きに出されることになります。女中奉公だとばかり思い込んでいた彼女でしたが、連れて行かれたのは薄汚れた売春宿。故郷から遠く離れた都会の片隅で、想像を絶する地獄の日々が始まります。今この瞬間も続いている悲惨な現実。感受性豊かな少女のまなざしが、読む者の胸をえぐります。」
    これ以上の紹介文は、簡単には書けませんので、借用させてもらいました。

    アメリカのジャーナリストが、関係者に取材して、物語として作り上げた本です。登場する人物は、実在の人物ではありませんが、実際にあった幾つかの人物の話を組み合わせて構成し直した話ですので、訴える力はあります。
    一人の少女、ラクシュミーが綴った形で書かれていますので、読みやすいのですが、内容は悲惨です。
    インドには、カースト制度があって、不可触民が警察に訴えても相手にしてもらえない、という話を読んだことがあります。この本では、アメリカ人が、救済団体として登場します。インドも経済成長により、社会も変化してきているのかもしれません。
    具体的な国の名前や都市の名前が書かれていませんが、主人公がそのような知識をもっていないからなのでしょう。僕も、あとがきを読んで、どこの話なのかを知りました。
    物語の中で、ラクシュミーの同僚が、売春宿での借金をすべて返し終えて、自分の家に帰る話が出てくるのですが、自分の家に帰ったら一家の中に恥ずかしい仕事をしたものが一緒にいるのは、世間に恥ずかしいから帰ってくるなといわれて戻ってきた、ということが書いてありました。家族のためにと自分を犠牲にしたのに、その家族に拒否されてしまうという悲惨、やり切れない思いです。

    ●足し算と引き算(104頁)
    いろいろ計算してみた。毎晩6人の男を部屋に連れてきて、一人30ルピーずつ払っていくとしたら、一日で180ルピー分、あたしが家に帰れる日が近くなる。あと百日働けば、ムムターズに借りてる二万ルピーはほとんど返せるはずだ。すると、シャハンナが街の引き算を教えてくれた。男たちが払うお金の半分は、ムムターズのものになる。それから、ムムターズが毎日の食事代として請求する80ルピーを引かなきゃいけない。他にも、ベッドと枕を借りるお金が週に100ルピー、妊娠しないように月に一度あやしげな医者に打ってもらう注射代が500ルピー。
    (引き算の分を考慮したうえで、計算してみると毎晩6人では、借金が増えるばかりになるので、最低8人は必要そうです。)
    ●警官もぐる(112頁)
    「警官ならほんとは、ムムターズみたいな人が女の子を売るのをやめさせるはずでしょ。でも、ムムターズが毎週お金を渡すから、あの警官は見ないふりをしているの」
    ●信じてた(173頁)
    何を信じればいいのかわからない。ふわふわした黄色い服を着たよそのおばさんがあたしを街で女中として働かせてくれるんだって、信じてた。夫のおじさんが街の悪い人たちから守ってくれるって、信じてた。「しあわせの家(売春宿の名前)」で一生懸命働けば借金が返せるって、信じてた。あたしのしてることがみんな、家族のためになるって、信じてた。
    (2011年1月17日・記)

  • 読み進めるのが つらかったです

    貧困から 売れれた女の子のお話でした

    この話がフィクションではない世界があるということに
    改めて打ちのめされますね

  • 騙されて、言葉も帰り方もわからないインドの売春宿へ売られるネパールの少女。
    その数、年間およそ12,000人。
    体験談形式で語られる内容は、読むだけでつらくなる。

    売春宿での日々の状況もさることながら、売られる前の生活がつぶさに語られ、貧困が及ぼす影響の大きさについて考えさせられた。

    痩せ細った母親の骨張った背中をヒマラヤの山に例えたり、乾季や雨季のたびに病気の子供が死んだり、スミウルシノキの樹脂でインクを作る方法を子供に教える一方で母親はそれを飲んで堕胎したり。
    男の子は大事にされるが、女の子の扱いはひどい。娘はヤギみたいなものだ、乳が出てバターを作れるうちはいいが、シチューにするときは悲しむ価値もない、と言われる。
    ひどい亭主であっても、男手がいるだけまし、と女は絶対服従を強いられる。
    女児を売春宿に売るのは、ほとんどが家族や親戚だ。そして、年季が明けて奇跡的に帰ってきた女性を、恥として村から追い返す。
    売春宿に売れない場合は、手か足を切り落として物乞いに売る。その方がお金を恵んでもらいやすいから。

    根強くはびこる身分制度や男尊女卑、そしてギリギリの生活を続ける貧しさ。これらを解決しないと、悲劇はいつまでも繰り返される。

    この本では、主人公にとって希望的な終わり方が提示されたが、読み手の心に重い問題提起を残していく良書。

  •  ネパールの小さな山村から、インドの売春街に売られてしまった13歳の少女の話。重いテーマだけど、ページを繰り始めたら止まらず最後まで一気に読んでしまった。

     フィクションとはいえ、実在の人物の体験に基づいて書かれている。この本を読まなければこんなに恐ろしいことが現在の世界で日常的に起こっているとは思えなかった。

     訳者の代田亜香子さんは訳者あとがきでこう語っている。「正直、これほどの胸の痛みと、ある種のあせりを感じながら原書を読んだのは、初めてです。読み終わったとき、ぜったいに日本で出版されるべき作品だと確信しました」
     
     たくさんの人に読んでもらいたい本。

     

著者プロフィール

【パトリシア・マコーミック・著】  全米図書賞の最終候補作品に二度、選ばれる。自傷行為をする少女を描いた『Cut』、ネパールの少女が人身売買の末、性労働を強いられる『Sold』(『わたしは売られてきた』作品社、2010)、カンボジアで大量殺戮を生きぬいた少年の実話にもとづいた『Never Fall Down』などのYA小説で高い評価を受けている。

「2014年 『マララ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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