- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861823114
作品紹介・あらすじ
1961年5月、ドミニカ共和国。31年に及ぶ圧政を敷いた稀代の独裁者、トゥルヒーリョの身に迫る暗殺計画。恐怖政治時代からその瞬間に至るまで、さらにその後の混乱する共和国の姿を、待ち伏せる暗殺者たち、トゥルヒーリョの腹心ら、排除された元腹心の娘、そしてトゥルヒーリョ自身など、さまざまな視点から複眼的に描き出す、圧倒的な大長篇小説。
感想・レビュー・書評
-
人間というものは、最初からそうだと、現在そうであると、将来そうなるだろうと、一度そうなったら永久にそのままになると決まっているわけではなく、ある日突然そうなったり、そうでなくなったりするものだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4.51/262
内容(「BOOK」データベースより)
『1961年5月、ドミニカ共和国。31年に及ぶ圧政を敷いた稀代の独裁者、トゥルヒーリョの身に迫る暗殺計画。恐怖政治時代からその瞬間に至るまで、さらにその後の混乱する共和国の姿を、待ち伏せる暗殺者たち、トゥルヒーリョの腹心ら、排除された元腹心の娘、そしてトゥルヒーリョ自身など、さまざまな視点から複眼的に描き出す、圧倒的な大長篇小説。』
原書名:『La Fiesta del Chivo』(英語版『The Feast of the Goat』)
著者:マリオ バルガス=リョサ (Mario Vargas Llosa )
訳者:八重樫克彦 、八重樫由貴子
出版社 : 作品社
ハードカバー : 544ページ -
ガルシア・マルケス『族長の秋』でも扱われるテーマで,解説によればさらに多くの人々が取り上げたそうだ。ある種のカリスマ性を持った人物なのだろう(良い意味ではないが)。
本作では複数の時間軸からトゥルヒーリョ像を書く技巧を見せている。後年の我々がトゥルヒーリョを正確に捉えることは難しく,それでも本作で見せる彼(とその周囲)の興奮と衰亡は,不思議と説得力が強い。
本作はれっきとした歴史小説であり,小説の技術を駆使して圧倒的な現実に挑戦している。特にウラニアの存在は完全にフィクションなのだが,誠意と悪意を兼ねそろえた証言者として現実を補完する。
読後感はどうかというと,なかなか苦いものであった。大統領の暗殺という,まさにカタルシスへまっしぐらな展開を迎えたものの,残ったのは敗戦処理ばかり。それが確かに存在した歴史である,そして歴史は終わらないことをまざまざと見せつけられる。
至る所技巧を張り巡らせた作品ほど,技巧の存在を感じさせない。変に文学を考えないで,純粋に楽しんで読めばいいと思う。 -
一冊で分厚い上に文字もぎっしり系。きついわーと思いつつ読んでいくと、しかし意外や盛り上がっていく後半。これは頑張った人には頑張った分だけ、得るものがあるというか。あれだ、大河ドラマ頑張って見終わったときみたいな充実感と、かなり感情移入してるということか。
何しろ独裁者である元帥が微妙に人間臭いというか、よる年波には勝てぬ、というところが微妙に泣けるじゃないか。いや、メインとしては秀才の娘なんだろうけど、そっちも熱いんだけど、しかしおっさんどうしようもないな。 -
文学
-
図書館で。
トルヒーヨ政権の小説、というので借りてみましたがオスカーワオのインパクトが強かったのでこちらはふうん、という感じで読み終わりました。
極悪非道の独裁者も一般人と変わらない人間なんだ、と書くとトルヒーヨだけが悪いんじゃなくて取り巻きも同等かそれ以上に悪いんじゃない?と言う気になってしまう。権力を握った独裁者におべっかを使い、先回りして彼の望みを叶えるべく(そして自分にも権力や富のおこぼれを頂戴すべく)尻尾を振っている政府高官の方が醜いし厭らしい。相当、悪辣な事をしてその地位に上り詰めているハズですからね。とは言え独裁者を擁護する気はさらさらないですが。
という訳でカブレラ氏の娘さんには全然共感できなかった…。というのも彼女や彼女の父が属していたのが支配階級だったからなのかなあ。そりゃあ酷い目にはあってるけどそれを言ったら長男一味に乱暴されて九死に一生を得た女子の方がもっと悲惨だし、被害を受けても助けてももらえなかった一般市民を思うと彼女はラッキーな方だった訳で。ウラニアさんは海外に逃げ出せたわけだけどドミニカに留まりそこで生き延びた人の労苦を思うと… 彼女よりはドミニカで苦労した人の方が独裁者を、ドミニカを糾弾する権利があると思うので。大体そのドミニカの金を(父の送金とは言え)使ってアメリカに留学している時点で一般的ドミニカ人とは言えないしなあ… 父の送金を受け取っている時点で父は絶対許さない、とか言われてもちょっとね(笑)彼女的にはトルヒーヨの息子のラムファス?の方が許せる、と言ってましたが正直、親父の金でやりたい放題しているバカ息子を私は許せないな。
暗殺実行犯達もなんだか…まあ複雑なのはわかるけど、という感じで。なんかちょっと動機が納得できないことも多いなあと。弟が誘拐犯に仕立て上げられた人の話もちょっと首を傾げる。弟は海外で殺人を犯したのにトルヒーヨが罷免してくれた。その時は感謝しかしないで罪をかぶせた後は憎悪するって。ちょっと自分勝手すぎませんかねえ?という訳で個々人の動機もちょっと理解できないこともありました。
オスカーワオは面白い本なんだけどふと考えさせられる事がしみじみと怖かったです。この本よりは独裁政権の圧迫的な息苦しさが感じられてドキドキしました。それというのも成功もしていない、普通の一般市民の立場から書かれていたからかな、と思うのです。 -
最後の全部繋がった感が半端ない。ハッピーエンドとは言えないかもしれないが、悲劇的な終わりの中に一筋の明かりを残しておくので読後感は悪くない。
-
えみりんさん
淳水堂です。コメントありがとうございます(^。^)/
バルガス・リョサの作品は「最後に繋がった感」がビシビシ来ますよね...えみりんさん
淳水堂です。コメントありがとうございます(^。^)/
バルガス・リョサの作品は「最後に繋がった感」がビシビシ来ますよね。緑の家とかすごい。
しかし確かに「日本をどういうもんだと思っているのでしょう?」という疑問は…(ーー;)
「悪い娘の悪戯」は読んでいませんが、ここにも妙な日本像が出てるんですか。
ペルーで日系人何かしたのかな~。
大統領選対立候補だったのがアルベルト・フジモリ氏だったというのも関係あるのか…。2015/06/30
-