顔のない軍隊

制作 : 八重樫 克彦  八重樫 由貴子 
  • 作品社
4.08
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本棚登録 : 40
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861823169

作品紹介・あらすじ

ガルシア=マルケスの再来と謳われるラテンアメリカ文学の俊英が、母国コロンビアの僻村を舞台に、今なお止まぬ武力紛争に翻弄される庶民の姿を、哀しいユーモアを交えて描き出す、傑作長篇小説。英国「インデペンデント」紙外国小説賞、スペイン・トゥスケツ小説賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 山間いののんびりとした村の日常に突如割り込んでくる暴力。誰だか皆目わからない相手。自分がいつ標的になるかもしれない恐怖。一向に役に立たない村の組織。軍隊を他のものに置き換えればどこであってもおかしくない話だ。現にこの国でも似たようなことが起きていないだろうか。主人公である語り手ののんびりとした語り口と語られる内容とのギャップが不条理さを際立たせている。

  • のんびりした語り口の中の凄惨な現実。ユーモアもあり、読みだすと止まらなかったが、マルケスの再来は言い過ぎじゃ(笑)文体が美しいとのレビューなので、これは原文を読むべきなのかもしれない。しかし近年西語の本がたくさん翻訳されてうれしいかぎり。

  • 左派ゲリラ、右派自警団、政府軍などが勢力争いを繰り返すコロンビアの町や村の現実を、ジャーナリストでもある作者が、実話を再構成して描いている。語り手となる70歳の主人公が静かに絶望していく様が、日常のシンプルな言葉でくっきりと描かれていく。南米文学は、ひとつの村を舞台にそれがひとつのかけがえのない世界であることを、そしてそれがどのように滅びていくのかを描くことが得意だなと思った。(今までに、マルケス『百年の孤独』やリョサ『世界終末戦争』など、たまたまそうしたものばかりを読んだだけなのかもしれないけれど。)

  • ここには、映画で観るような凄惨極まりない殺戮シーンがあるわけでなく、村人はただ静かに誘拐され殺されていく。村は爆弾や地雷で破壊され、人々の多くは村を捨てていく。村に残った僅かな人々に夢や未来はない、その事実を主人公イスマエル・パソスの目をとおして、淡々と語りかけてくる。 南米の物語であるにもかかわらず、ひんやりとした冷たい恐ろしさに覆われている。

  • コロンビアの名もない小さな田舎村では、のんびりとした穏やかな時間が流れていた。

    隣の嫁の裸体を覗き見ては老妻に怒られている元教師のイスマエルは、自分の庭のオレンジをもぐのが日課である。

    ただ、ゆっくりと時間が流れているはずだった農村が、気がつけば、不気味な連中に静かに侵略されていた。

    身代金目的で、次々と村の人たちが誘拐され、指を切断され、犯され、殺される。

    自分の村を歩いているだけで、見たこともない連中に侮辱されて虐殺される。

    この村の人々のほとんどが、イスマエルの教え子だ。イスマエルの妻も行方不明になってしまった。
    あまりの悲惨な現実にイスマエルは、死を乞う。「いっそ、大洪水にして何もかも沈めてくれよ、神様」

    コロンビアは、日本に住む私たちにとって遠い国である。徴兵制が敷かれており、左翼ゲリラ、パラミリターレス(右派民兵)、麻薬組織の間では、長年、激しい戦闘がおこなわれてきた。
    先住民や農民に対する非人道的行為はまだ、継続しているらしい。

    この書物は、元教師の老人イスマエルの視線で描かれてる。彼の見ている自分の村の真実は、悲哀に満ちており、苦しいほどリアルである。
    小説を読み進むにしたがって、厳しい現実がより厳しく残虐になっていく。読者は、イスマエルの語りに耳を塞ぎたくなる。しかし、飛び散った血の匂いにも死んだ少年の顔を啄ばむ雌鳥のくちばしの色にも読者に凝視強いる筆力をエベリオ・ロセーロは持っている。

    ロセーロは、ジャーナリストを経て現在は作家に専念しているという。
    ラテンアメリカだけでなく、ヨーロッパでの評価も高く、イギリスでは、「ガルシア=マルケスの後継者」と称されているらしい。

    今後の活躍が大いに期待される作家だと思う。

  • 老人の視点で進むシンプルな文章で読みやすいながらも読み物としても面白く、社会的な問題提起を行うとともに文学作品としても満足できる作品だったと思う。

  • 残酷でのんきで怖い話。

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