失われた時のカフェで

制作 : 平中 悠一 
  • 作品社
3.27
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本棚登録 : 237
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861823268

作品紹介・あらすじ

現代フランス文学最高峰にしてベストセラー…。ヴェールに包まれた名匠の絶妙のナラション(語り)を、いまやわらかな日本語で-。

感想・レビュー・書評

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  • ヌーヴェルヴァーグの、そう、たとえば初期のゴダールなんかに撮ってもらいたいような映像感覚の、そんな物語。
    カフェ・コンデに現れるミステリアスな若い女性「ルキ」とは何者なのか?4人の主語によるそれぞれの見方にて、時間と場所が錯綜しながら次第に明らかになる背景。しかし、背景が明らかになればなるほど、逆に離れていく「ルキ」という人物との距離感。とらえどころのない「ルキ」の行動がますます物語のミステリアスさを増幅してゆく。
    フランス人の日常生活に溶け込んでいると思しきカフェを物語導入の舞台とし、パリの街並みを縦横に思う存分紹介してくれているにもかかわらず、主語の「語り」が感覚的で柔らかでありながらどこか神秘的で抑制の利いた文体が、逆にイマジネーションの世界かと見紛うほどに不可思議な感覚へ読者を誘ってくれる。
    「ルキ」の現状からの逃避と脱出の繰り返しは、訳者解説にもある通り、本書のテーマの「永遠のくりかえし」を象徴する行為であり、絶えまなく漂流している若者の漠然とした心情をよく表現していたといえる。
    パリを舞台にそのようなふわふわ感を大いに楽しませてくれる、そんな物語。

    その訳者解説によれば、本書はモディアノの「ベスト盤」的な一作とのことで、4人の主語それぞれの語りがそれぞれの短編となって、これまでのモディアノ作品の魅力をぎゅっと凝縮したものとなってるという。そう聞かされてみれば少し得をした気分にもなった。(笑)

    • mkt99さん
      淳水堂さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      そうですね~。盛り上がっていませんね~。(笑)
      たぶ...
      淳水堂さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      そうですね~。盛り上がっていませんね~。(笑)
      たぶん推察するに、ハルキ逸賞の反動と(今回の賞が決まるまで妙に勝手に盛り上がっていましたからね~)、作品在庫が少な過ぎて本屋もキャンペーンできない状況だからではないでしょうかね。
      自分も読了は1冊だけですが、このところフランスにかぶれている自分には(笑)、まるでフランス映画のような世界だと思いました。さらには現実感のなさ加減はポール・オースターを思わせるような雰囲気も感じました。(と思っていたら訳者解説でもそう触れられていましたね。)
      フランスでは人気抜群の作家とのことで、作品群を見てみると、あーあの映画の原作者かと自分も新発見したりしていました。(笑)『イヴォンヌの香り』はパトリス・ルコント監督の映画で観たいと思っていますので、それ以外の作品を今度読んでみたいですね。
      2014/10/25
    • 淳水堂さん
      お返事ありがとうございます。
      モディアノはフランスでは熱烈ファンがいるようですね。
      現実感のない、いかにもフランス映画的な感じですか~。...
      お返事ありがとうございます。
      モディアノはフランスでは熱烈ファンがいるようですね。
      現実感のない、いかにもフランス映画的な感じですか~。
      やっぱり読むか読まないかうう~んな感じ(^^;)

      ノーベル賞ってある程度年齢が上な人に受賞させてるような。
      なのでもしも村上春樹が取るにしても10年先だろうなあとか思う。しかも去年の受賞者が中国人だから次にアジアに順番くるのは20年後か(苦笑)
      2014/10/25
    • mkt99さん
      淳水堂さん、こんにちわ!(^o^)/

      なんか映画化を期待しているんじゃないかと思えるほど(笑)、フランス映画にぴったりのストーリーだっ...
      淳水堂さん、こんにちわ!(^o^)/

      なんか映画化を期待しているんじゃないかと思えるほど(笑)、フランス映画にぴったりのストーリーだったと思います。ノーベル賞もとったことですし、その内、映画化されるような気がします。(笑)
      何かの記事で読みましたが、ノーベル文学賞は単なる文学上の潮流になっているだけでなく、過去に政治的社会的にも影響のあった人が選ばれる傾向にあるようで(ノーベル賞の政治化?)、そういう意味でも村上春樹はまだまだインパクトが足りないのかもしれませんね。
      2014/10/26
  • 逃げ去る時、誰かの前から消え去っていく瞬間にだけ、私はほんとの私自身だった。



     ミニマリズムのエステティックといわれる、2014年のノーベル文学賞作家の短編集。文学だ。すごく…。

     ミニマリズムというのはどうやら、日常の何でもないような風景を描写する中で表現していく手法らしい。

     フランスのパリに生きるなんでもなくて、何者にもなれなかった人間の姿を描いていて、あまりになんでもないような事ばかり書かれている。でも、その文章は知らないうちに心に響いているらしい。

     だから偉大な文学者なんだろう。

     日本人は昔はミニマリズムの文化を持つ、繊細な民族だったらしい。そういえば、川端康成とか谷崎潤一郎とか読んでいてピンとこない、さざ波のような文学だな。

     だから、モディアノは日本人向きらしい。

     しかし、ミニマリズムのエステティックって、なんかエロいな。

    ____
    p90  逃げ去る時、誰かの前から消え去っていく瞬間にだけ、私はほんとの私自身だった。



     この一節はすごい心に響いた。
     くだらねぇ糞みたいな世の中を生きるにはペルソナを被っていくしかない。そんな普段の自分は、私自身なんかじゃあない。じゃあ、本当の自分が出せるのはいつか、それは、誰もいなくなった時だ。その人と別れる時である。

     人間関係という、重荷から解放されたとき、人は自分に戻れる。帰れる。だから、別れは必要なの。

  • なかなかキッパリ引けない線。背景に溶け込むような不明瞭な輪郭線で描かれた人物像って感じ。悪くない。とはいえ続くとちょっと飽きる。

  • とてもノスタルジックな印象。
    モディアノらしいというのだろうか,何もかもが曖昧模糊なままだが,それが何とも言えない余韻を残している。
    ただ,原作がそうなのか,翻訳のせいなのか,文章がぶつぶつ切れていて,とらえにくい。
    また,やたらと長い解説?がついていたが,いらないな・・・

  • パトリック・モディアノの比較的最近の小説。ラストに驚きますが、いつものように、謎のヒロインを巡る何人かの独白体の組み合わせで、巻末解説にもありますが、モディアノのベスト盤といった雰囲気の名作。

  • 夢のような幻想のようなふわふわとした浮遊感が漂う。
    ルキと呼ばれる主人公はそこにいるようないないような不明瞭な存在。
    一番はっきりと彼女の姿が見えたのは警察で自分のことを打ち明けた時ではないかな。

    《雪》が出てきたあたりから危うい感じがしたけど、唐突なラストにはハッと息をのんでしまった。
    ルキの謎は誰にも解らないのだろうけど、その危うさには少し共感できる。
    繰り返すのは、暗黒物質にのみ込まれることもだろうか。

  • 終章、終幕…。胸を衝かれる。読み進めるうち、彼女の生き方に、それを予感させるものを感じてはいた。

     パリのとあるカフェ「ル・コンデ」。この店に集う人々。その群像が、スケッチのように淡々と描かれてゆく。やがて、幾つかの、物語の流れが浮かびあがってゆく。
     
    カフェの常連の人々をノートに記録し続けている男。その男から、記録ノートを借り受けるもう一人の男ケスレィ、彼は私立探偵であり、別の男性ジャン・ピエール・シュローから、失踪した妻の行方について依頼を受けていた。妻の名は、ジャクリーヌ・ドゥランク。カフェ・ルコンデでは、ルキの名で通っていた若い女性だ。

    冒頭からしばしの間、様々な人々が集うカフェ・ルコンデの情景が描かれる。その後、探偵ケスレィを一人称にした構成パートが続く。そして、ケスレィが、その謎めいた姿を追い続けた女性ルキの半生が、ルキの“恋人”であった作家志望の青年ロランによって語られる。そして、

    私が15のとき、人は私を19といった。

     イカしている。ルキ自身が一人称で語り始める章の冒頭の一節だ。
    ルキは、花街ムーランルージュで生業を立てていた母と、母娘二人で育った。そして、自らの居場所を探し続けるように、あるいは、自分自身の輪郭を探し求めるかのような、ルキの日々が描かれる。

    夜霧に覆われた如く、捉え難さの伴う作品も多いモディアノの小説である。だが、本作は、ルキの存在感、彼女の心の傷み、せつなさと哀しみを突き付ける読後感によって、ある種鮮明な印象を手にすることが出来た。

  • 難しい....
    雰囲気がもやっとしててきれいなのはいいんだけどな

    と思ったのは何年か前。

    いま、もう一度読んでみたい。
    きっと感じるものが違うんだろうなと思う。

  • 読みながら、三人目の語り手と私との間にどれくらい距離があるのか考えていた。今の私にとって彼女は、鏡の中に広がる平行世界の住人の一人に思えた。俯瞰するにはまだ時間がかかる。

    無限に循環する螺旋から脱け出した彼女は境界線を跳び越え、虚無に向かって飛び立ってしまう。真っ赤な花を盛大に咲かせる直前に、切望した安息の夢を見る。ほんとうの自分が永久に存続する夢を。
    逃亡でも失踪でもいい。別れるときの解放感と陶酔感は麻薬みたいに中毒性があるから、繰り返せば最後はオーバードーズ。接点は些末なもの。定点は足枷になるだけ。空っぽになるためにあらゆるものを振り切って彷徨する彼女を「ここ」に留めておくなんて消失点の向こうでもない限り不可能だ。

    そうなんでしょう? 
    もうひとりの___

  • 「逃げ去る時、誰かの前から消え去っていく瞬間にだけ、私はほんとの私自身だった。私のいい思い出はみんな、消え去った、逃げ去った思い出、それだけだった。」

    「人はいろんなことを言う……。そしてある人々がある日消え去ると、人は彼らのことをなにも知らなかったことに気づくのだ。彼らがほんとうはだれだったのかさえ。」

    「そう、それでいい。楽に行こう。」

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