カント『判断力批判』研究――超感性的なもの、認識一般、根拠

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861824708

作品紹介・あらすじ

1790年に、刊行されて以降、思想・芸術そのものに重大な"霊感"を与え続けているまさに一つの哲学史的転換点。カント『判断力批判』。本書は、成立過程に新たな光を当てた日本のカント研究を世界レベルに上げる最新研究精華!

感想・レビュー・書評

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  • 副題にある三つの概念に焦点を絞り、『判断力批判』ないし広義の純粋理性批判というカント哲学の核心を解明する研究。従来さほど注目されてこなかった「超感性的なもの」「認識一般」「根拠」という術語がポイントになるわけだが、「完全性」「合目的性」「反省的判断力」「合目的性」といったその他の概念についても、周到に生成史的・体系的考察が加えられている。まず、ヴォルフ学派の「エステティーク」からカントが離脱していく側面が描き出されるが、これが一方で『純粋理性批判』における「感性論」に発展していき、他方で、「物自体」を「超感性的なもの」として再把握することにより、「超感性的なもの」の意義が肯定的に捉えられるようになる(これはもちろん実践哲学にも関係してくるだろう)。また、「認識一般」という術語により、直観の多様を合成する構想力と諸表象を合一する概念を統一する悟性という一般的な認識構造に、趣味判断が組み込まれているということをカントは言っている。これによって、趣味判断が主観的なものであるにもかかわらず、普遍妥当性を帯びることになる。このような趣味判断は主観的合目的性を備えているが、判断力の自己自律という事態が『判断力批判』によって解明されることによって、『純粋理性批判』における「理性の仮説的使用」が根拠づけられることになったとされる。とはいえ、その際反省的判断力の相関者として、技術としての自然という概念が出現してくる。この自然をどのように理解するかが「客観的合目的性」の議論のポイントとなる。解釈のさい、『実践理性批判』における「存在根拠」と「認識根拠」の区別の議論が導入され、「自然の合目的性」の「存在根拠」として「自然の可想的規定可能性」(理論的認識の場合のような、厳密に規定された、あるいは機械論的に規定された自然ではない)が位置づけられ、「自然の可想的規定可能性」の「認識根拠」として、「自然の合目的性」が位置づけられる。その論証こそ、「目的論的判断力の弁証論」で解決されるべき問題であった(もちろん、反省的判断力という固有の能力にとって内在的な原理として析出されるのであるが)。
     『判断力批判』は近年哲学分野に限らず注目を集めている著作であり、本書「結論」でも触れられているように、ゲーテ、シラー、ロマン派、ドイツ観念論者といった人々に対して与えた影響という点でも無視できない著作である。「レフレクシオーン」や講義録などから豊富に材料を収集しつつ、批判哲学全体に対する『判断力批判』の関連とその固有の意義を解明するこの研究は、これからの『判断力批判』、あるいはカント哲学全体の研究の出発点となるだろう。

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著者プロフィール

浜野喬士(早稲田大学助教)

「2014年 『現代社会思想の海図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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