- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861827525
作品紹介・あらすじ
台湾統治を軌道に乗せ、日露戦争を勝利に導いた“窮境に勝機を識る”名将の実像を、防衛省防衛研究所、防衛大学校で児玉を講義した明治軍事史の専門家が、軍事学的視点と新史料「児玉源太郎関係文書」を初めて使用し描き出す。日露戦争の作戦を指導した男の虚像と実像を暴く。新史料で通説を覆す決定版評伝!「児玉源太郎関係文書」を使用した初の評伝! ・児玉は二〇三高地で何をやったのか?・児玉の用兵思想とは?・児玉は天才的戦術家だったのか?・統帥権改革の真相は?・児玉が台湾統治で用いた「油さし政治」とは?二〇三高地攻略戦を指導し、日露戦争を勝利に導いた男・児玉源太郎。だが、児玉は戦争・作戦指導のみならず、軍事行政、軍制改革、軍隊教育、植民地統治でも成功を収めた。さらに、児玉には「平時の予言的改革者」としての側面もあった。これまでにも児玉の評伝は複数刊行されているが、近年になり公開された「児玉源太郎関係文書」を含む児玉関係史料を網羅的に収集することで、新たな事実が発見され通説を修正する必要が出てきた。本書は多面的才能を持つ児玉の生涯を、新史料を駆使し、軍事学・戦史的視点を中心に描いた、児玉評伝の決定版である。
感想・レビュー・書評
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「坂の上の雲」などで偶像視されてきた児玉源太郎の足跡を、過去の資料を丹念に渉猟して、従来の定説を覆している大変な労作。
例えば、日露戦争の陸上決戦である奉天会戦における第三軍(司令官乃木希典大将)の左翼からの攻勢が「不活発」との定説につき、逆に活発すぎて第二軍との戦線の間隙が出来た為に総司令部から停止命令を受け、結果として正面に敵対していたロシア第二軍を殲滅する好機を逸していた事など、児玉総参謀長の指揮の失敗なども一つ一つの戦闘や施策について検証されている。
そういう失策があるとはいえ、現代のマネジメントセオリーにも通じる人心掌握術と、政略と戦略を統一(大戦略/grand strategy)を具現化できる手腕についても詳細に事例とともに挙げられており、単なる人物評伝というよりも、経営学のケーススタディとしても耐え得る内容で、大変読み応えがある一冊であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
軍人として政治家として、その時々で行うべき事を行って確実に結果を出し続ける児玉の生き方には、100年経った今の時代にも見習うべき点が詰まっている。