精神科医・安克昌さんが遺したもの: 大震災、心の傷、家族との最後の日々

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861827860

作品紹介・あらすじ

NHK土曜ドラマ「心の傷を癒すということ」(主演:柄本佑)
被災者の“心の叫び”と取り組み、その5年後、
わずか39歳で逝った主人公のモデル・安克昌さん。

「傷つきにやさしい社会」の実現を願う、
精神科医としての姿勢と生き方、そして家族との最後の日々を描く

「少し長いまえがき」より
“心の傷を癒すということ”とは、どういうことだろう。
安克昌さんは、そのような問いを私たちに残して、若くして去った。(……)
(本書は)阪神大震災でみずからも被災しながら「心のケア」ムーブメントの中心的な役割を担い、「世界は心的外傷に満ちている」と書きつけてほどなくして、肝細胞癌のため三十九歳の若さで亡くなった安医師と、遺されたご遺族のしばらくの日々を描いたものである。(……)
 安医師が阪神大震災の被災地を奔走し、手探りし、ときに涙を流しながらつかみ取っていった『心の傷を癒すということ』への視点は、災害が多発するようになったその後の日本で、限りなく貴重な財産となった。
(……)
(安医師の)妻が三人目の子供を妊娠していることがわかってしばらくして、癌は末期の状態で見つかった。彼は入院を最小限に抑えて自宅に留まり、代替療法によりながら、妻と幼い二人の子供、そして生まれてくる赤ちゃんとすごした。産気づいた妻を産院に送り出したあと、タクシーでみずからが闘病していた病院に向かい、二日後、帰らぬ人となった。驚嘆すべき、そして尊敬すべき生き方だった……。

安克昌(あん・かつまさ)さんとは?
 阪神大震災において、神戸大学附属病院精神科医局長として、自らも被災しながら、全国から集まった精神科医のボランティアをコーディネイトし、精神科救護所・避難所などで、カウンセリング・診療などの救護活動を行なった。その後も被災者の心の問題と取り組みつづけ、大震災の一年後に、その臨床報告としてまとめた『心の傷を癒すということ』を刊行。この本は「サントリー学芸賞」を受賞した。神戸大学医学部講師、神戸市立西市民病院精神神経科医長を務め、心的外傷の治療のパイオニアとして活躍していたが、2000年12月、39歳の若さで肝臓ガンで死去した。
 阪神大震災25年目となる2020年1月、安克昌をモデルとするドラマ『心の傷を癒すということ』が、NHK総合テレビで、4回シリーズで放送。

感想・レビュー・書評

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  • 阪神・淡路大震災から25年目の今年1月、NHKで放送されたドラマ「心の傷を癒すということ」は、とても心に残る良作だった。
    この作品は、ドラマの主人公のモデルで、自らも被災しながら被災者の心の傷に寄り添い、わずか39歳の若さで亡くなった精神科医・安克昌さんの生き方と遺された家族のその後の日々を、彼と共に震災後を体験したジャーナリストが書いたノンフィクション。

    ドラマの主人公・柄本佑があまりにも好演だったからか、作中の場面の一つ一つが映像を結び、ドラマの時のように涙を抑えられない。読めば読むほど、安医師の医師としての素晴らしさ、人間としての優しさ、大きさに胸を打たれる。

    「傷ついて動揺したり泣いたりすることは、社会の生産機能という点から見るとじゃまになるんですけれど、もう生産第一じゃなくてもいいんじゃないでしょうか。傷を負った人が一人でがまんして、涙を圧し殺さなくてもいいと思うのです」

    そんな社会を実現するために、自らの身を賭して闘った安医師には尊敬の念しかない。本当に、惜しい人物を亡くしたなぁ・・・
    引き続き彼の著書、「心の傷を癒すということ」も読みます。

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著者プロフィール

産経新聞編集委員 兼 論説委員。1961年生まれ。広島大学卒業。著書に『地中の廃墟から――「大阪砲兵工廠」に見る日本人の20世紀』(作品社)ほか。

「2019年 『精神科医・安克昌さんが遺したもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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