協同で仕事をおこす

著者 :
制作 : 広井良典  広井良典 
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861870828

感想・レビュー・書評

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  • 労働者協同組合(ワーカーズコープ)の理念と手がけた仕事など。

    何の本か知らずにタイトルだけで読んだので、労働者協同組合というのはこの本で初めて知りました。
    協同労働の協同組合とは働く人々・市民が、みんなで出資し民主的に経営し、責任を分かちあって人と地域に役立つ仕事をおこす協同組合、なんだそう。
    生協の労働版って感じなのかな?

    やっている事業は学童、障碍者雇用、介護、地域雇用支援など。
    こういう事業を行政から受託したり、自分達で事業を起こしたりと形態も色々あるようです。そうかー、こういうのって入札で受託したりするんだな。。。
    自分達で出資して、自分達が経営責任をとって、仕事をつくっていく、というスタイルらしい。

    体験談でも出てきたけれど、出資して働くなんてだまされてるんじゃないの!?という声。うん、確かにそれはあるかもしれないなあ。。
    思想的に偏っていそう=怪しいという感じを受けるんじゃないかな。。。

    雇われてるという形ではなく参画していく、これは仕事のスタイルとして理念としてはいいんだけれど、こういう「組合」としてのスタイルがよいかどうかはちょっと疑問がある。
    ビジネスという視点でいくと閉じた感があるというか、内輪に入ってる印象があります。
    これが社会起業とかNPOとか言うと大分語感が違うんだけど。

    これからの日本社会が市場としては縮んでいく中で「協同で仕事をおこす」というスタイルは増えると思うんだけど、うまくビジネス視点というか外からの協力を呼びこめるようにすること、継続的に事業続けていける仕組みを作るようにしないと発展しないんじゃないかな~なんて印象を持ちました。
    面白いスタイルだと思うからブランディング考えるといいのになーなんて思ったり。もっとも1冊読んだだけなのでよく内容わかってないだけかも、ですが。

  •  広井さんの本は注目しているので、アマゾンの推薦もあって購入。

     広井さんは、最初の対談にでてくるだけで、あとは、「労働協同」という取り組みの紹介。

     生活協同組合のように、組合員が自分で出資して、組合を維持しつつ、自分で働くという仕組みを提唱し、その実績をあげている労働者協同組合の紹介。

     やっている取り組みは、学童保育、障害者の受け入れ、閉鎖した店舗でのアンテナショップの運営など社会貢献という観点からはすばらしい。

     ただし、組合員が自ら出資し、自らが経営者となって経営しつつ働くという仕組みについては、一面では理想的だが、株式会社(合同会社)のような多くの出資者を広く集めつつ、雇用をしながら利益をあげる仕組みと比べて永続性に乏しい気がする。

     例えば、

    (1)介護、学童保育など、労働協同の事業のほとんどが、行政の補助金を前提に始まっているが、このような事業の始め方をすると、かえって事業規模、事業内容について、過大になりがちて、補助金がなくなった時に、赤字に陥りやすいのではないか。また、社会保障、労働政策的な補助金は今はわりと潤沢にあるが、国や市町村の財政事情から今後は削減されていくのではないか。

    (2)本文の中に何度もでてくるが、この労働協同の仕組みで働く場合には、まず、5万円を出資しなければならない。これを前向きに捉える人もいると思うが、通常の株式会社のように、ただ働きたいという人を事実上排除しているのではないか。

    (3)今は、介護保険などの仕組みが低価格、低サービスに限定されているが、今後、もっと行政負担を軽減しつつ、多様なものになってくると、民間の株式会社が参入してくると思う。現状でもワタミは介護事業に参入している。そうなると、今、生協の店舗が民間店舗におされて閉店しているように、労働協同の仕組みも、大規模な投資金額を集められる株式会社に負けてしまうのではないか。

     全体を通じて、株式会社、大会社は悪のようなトーンで書かれているが、実際には、株式会社は、投資家と経営者、そして勤労者を区分する仕組みであって、それ自体に善悪はない。むしろ、沢山の人から有限責任で投資を集められる仕組みが、今の資本主義を発生させたと分析している経済学者もいるくらい。

     むしろ、株式会社、合同会社などの利益をあげるシステムをつかって、補助金を頼らずに、継続的に社会貢献の要素の強い事業を行うためにどうしたらいいかを考えるべきだろう。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • クリエイティブなことより地道なアプローチが性に合う、でワーカーズコープが気になったわけで。具体例ばかりで理論的なとこが薄く、イマイチ理解が出来なかった。ただ理念としては参考になり、うちで持ち掛けるとどんな反応になるか未知数なり。広井さんの本読もう。

  • 社会学

  • 現在協同労働をおこなっているが、まだ雇用労働の効率化を第一に考えた対応になっていると気づかされた。適任をみつけ、有機農業のように他者といることによって本人のエンパワメントを伸ばしていけるよう考えていきたい。

  • 仕事起こしのノウハウ本と言うよりはワーカーズコープの紹介本。とは言っても中身は深い。

    ワーカーズさんとは一緒に仕事をしているが本当に彼らの取り組みは頭が下がる思い。

    社会を変えるためにぜひ「協同労働」という働き方を知ってほしい。

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著者プロフィール

広井 良典(ひろい・よしのり):1961年生まれ。京都大学人と社会の未来研究院教授。専攻は公共政策、科学哲学。環境・福祉・経済が調和した「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱。社会保障、医療、環境、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。著書『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大佛次郎論壇賞受賞。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)で不動産協会賞受賞。他に『ケアを問いなおす』(ちくま新書)、『ポスト資本主義』(岩波新書)、『科学と資本主義の未来』(東洋経済新報社)など著書多数。


「2024年 『商店街の復権』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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