蝉声 (塔21世紀叢書) (塔21世紀叢書 第 190篇)

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  • 青磁社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861981777

作品紹介・あらすじ

稀代の女流歌人、河野裕子の死の前日までの427首を収録。自らの死とそして家族と、どう向い合ったか。
日本一行詩大賞

感想・レビュー・書評

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  • 「何といふ夏が来たものか紅いろのほうせん花さへ白じらと咲く」

    死に向かう日々、その前日まで詠まれていた歌には、もちろんその状況の圧倒性もあって歌だけを読むのは難しいのだけど、それでもやはりこれは死の力ではなく歌の力なのだと思う。
    ずっと抱えていたいような歌ばかり。

    「よい天気は怖い日ゆゑに梅干をふたつ入れたるおむすび握る」

  • 2010年8月12日に亡くなった河野裕子の遺歌集、最期の日まで歌を詠み続けた歌人のありように感動を覚える。八月に私は死ぬのか朝夕のわかちもわかぬ蟬の声降る/手をのべてあなたとあなたにふれたきに息が足りないこの世の息が

  • 乳がんに冒され、死に向かいゆく中で詠まれた歌を集めた遺歌集。歌集などほとんど読んだことがなく、とても星はつけられないが、この一冊を手にとって良かったと思う。

    ままならない自らの身体。来年見ることはないだろう、と思いながら眺める季節の草花。何気ない日常の一コマ。研ぎ澄まされた感性で見つめている。
    家族を残して逝く無念さや、病魔と一人きりで闘う孤独感が色濃く表れていて胸を締め付けられる。夫への愛情が滲み出た歌も多く、ただただ切ない。
    終盤は徐々に力無く弱っていく様が読み手にも伝わるほどだったが、亡くなる直前になると一転して歌を遺したいという強い意志が溢れ出す。そしてこの世に生きた幸せと愛を詠んだ翌日、逝くのである。

    死ぬまで情熱の炎を絶やさなかった一人の女性の生き様に心動かされた。

    「手をのべてあなたとあなたにふれたきに息が足りないこの世の息が」

  • 私の好きな歌人のひとり、河野裕子さんの遺歌集。
    やはり歌のほぼすべてが死を意識したものになっている。

    死を意識した人はずっとこういうことを考えているのかと思うととても寂しくなる。
    死を見つめながらも素直にその感情を綴った歌集は、最期まで少しでも多くの言葉を残そうとする河野さんの生き方を表していると思う。
    とても良い本だけど、少し余裕のあるときに読まないと辛いかもしれない。

  • 昨年八月十二日になくなった、歌人の河野裕子さんの遺歌集。


    頁を繰る毎に彼女に死が迫る様を見ているかのように泣く

  • 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が

  • 病に伏せ亡くなられた河野さんの遺稿をご家族が歌集として編まれた、最終歌集。
    見たもの、感じたものをまっすぐに表現する方だったがゆえに、闘病の過程から死に至るその日までの一日、一刻が克明に伝わってくる凄絶さに、喉が詰まる。
    ときおり歌に現れる、お孫さんや、お嬢さんの結婚に際し、注げる愛情を歌ったそのうつくしさも眩しい。
    「わたくしはわたくしの歌のために生きたかり作れる筈の歌が疼きて呻く」
    河野裕子というひとは、病めるときも歌人としてあろうとしたのではなく、生きるということは歌うことだったのだと、思った。
    鬼気迫るその姿はでも真摯で、とても人間らしい。かくありたい。
    [liblar転記]いただきもの。

  • 歌人、河野裕子氏の遺作集。がんに冒され、既に自分の死期を知りながら生きていくという肉体的にも精神的にも厳しい辛い状態の中、最期まで歌を詠み続けた人。今まで、いろいろな形で死期迫った人々の物語、小説、ドキュメントなどに触れてきたが、これほどリアルで辛く心に沁み入ってきた作品は初めてだ。短い三十一文字に込められた生、家族、自分の状態等心に響く。歌の力というものは大きいのかと驚かされる。私と10ほどしか年齢も違わず、発病したのは6年ほど前、人の命の儚さと強さを同時に感じる。体は自分の思い通りに動かせず、呼吸さえ自分でままならなくなっても、意識だけははっきりしている。これほどつらいことはあろうか。妻として母として家族に対する愛情を溢れさせながら、家族を残していく辛さ。また家族全員がとても優しいということも感じられる歌集だ。

  • 「短歌を詠む」ことがそのまま、「生きる」ことだったんだな、と。
    ことばのちからを、信じさせてくれる。

  • 先月でた著者の遺作歌集。まさに死の直前まで、歌とともに生きた​ことがよくわかる。7/10の朝日新聞読書欄で週間ベストセラー​(八重洲書店)にも入っていて、驚きました。

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