フーコー―主体という夢:生の権力 (入門・哲学者シリーズ 2)

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  • 青灯社
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862280169

作品紹介・あらすじ

フーコー 主体という夢:生の権力
もし「哲学」の本を一生に一冊しか読まないつもりならフーコーを読むのがいい、とつねづね学生には話している。
学校や性など、きわめて具体的な事柄をあつかっているくせに、西洋哲学において、まるで当たり前のように前提されていた事柄をことごとくひっくり返し、その結果、われわれがいつの間にか思いこんでいた常識にも風穴を開けるからだ。
本書は、そのフーコーの考えを、できるだけわかりやすく述べたものである。

感想・レビュー・書評

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  • フーコーとその生きた時代をざっと知るのに適した入門書という趣きだけど、ニーチェの言うルサンチマンについて他の誰が書いた物よりも簡潔に明確に書かれていたテキストを思いがけず見つけたので以下に書いておきたいと思いました。

    社会的な弱者などは、勝者や強者に対して、武力や財力、政治力などによって勝つことはできない。そのとき敗者や弱者はどう思うか。自分達は何をしても彼らには勝てない。だが勝者や強者は彼らに何も危害を加えていない自分達敗者や弱者をひどい目に遭わせている。だから彼らは悪者である。つまりそれに対して自分達弱者や敗者は善だ、と考えるだろう。こうしてニーチェによれば、善悪とは弱者や敗者が、強者や勝者に対して悪というレッテルを貼り、その反対に位置するものとして自分達を善と位置付けることによって生まれるものであることになる。その根底には、弱者や敗者が強者や勝者に対して、武力や財力などのほかのどの手段を使っても勝てないけれども、せめて道徳や倫理という観点からすれば優位に立てるし、それによって溜飲を下げることができるという、妬み嫉み恨みの感情があり、それをニーチェはルサンティマンと呼んだのであった。

    ちなみにサブタイトルに主体の夢とありますが、主体についての言及や解説は少ないです。 

  • 主体という夢、という副題が重い。フーコーはその著作を通して、主体=私の仮構性を暴くとともに、そこには権力が執拗に絡んでいること、主体は権力そのものであることを突きつけた。本書では希望をほのかに示しているが、ほぼ絶望的に思える。本文の筆致はこれ以上ないほど噛み砕かれ、読みやすい。

    ・P36:非理性や狂気などは非社会的なるものであるがゆえに隔離されるのではなく、「隔離が非社会的なものを生む」。
    ・P115:「性」は凸レンズや凹面鏡の「虚焦点」に似ている。・・・『言葉と物』における〈生命〉〈人間〉などと同じ。
    ・P123:かりに、こうした生の権力や生政治に「抵抗」を試みたとしても、性解放運動家に見られるように、あるいは一般に、「抵抗」は権力関係の一項としてはじめから組み込まれており、「抵抗」すること自体が権力関係を逆に強化し、確認することにしか終わらない。権力に「抵抗」しようとしても、そのように試みている主体そのものが権力の中で作られたものであり、権力に貫かれているからだ。

  • 『言葉と物』『監獄の誕生』『性の歴史Ⅰ』を中心にして、フーコーが述べた内容をその当時の状況を踏まえながら解説してくれる。読みやすい。

  • 敗者、弱者が自分たちを痛めつけた強者を”悪”と規定する。
    それに反するものとして自分たちを”善”と位置づける。権力、力で勝てない相手にせめて道徳心だけでも。
    面白いポイントは、まず“悪”を規定する。そしてそれに入っていないものを自動的に”善”とする。
    悪を意識して初めて善がわかる。

  • discours、もっともらしい「真理」を作り上げ、それを基にした「規則」をもって「支配」を及ぼす。実定的機能
    。フーコーは、国家から教育制度や家族制度など我々がそこに身を置いてる制度をそのような視点から暴きたてる。近現代においては、生の権力が我々を支配している。「生きさせるか死の中へ廃棄するか」と囁きながら、我々を調整・管理する。「良き生」を送るためには、そうした規則に従うことが最優先される。その不自由さは「監獄」に喩えられる。フーコーは、こうした権力にどういう態度で挑んだのか。こうした支配的な権力からの自由とは、一体どういう形で可能なのか。

  • フーコー好きです。特に「監獄の誕生」

  • このシリーズのニーチェから追いかけているのですが、相変わらず読みやすかったです。
    ニーチェはたまに聞いて、興味あるからまぁ読めるだろうけど、フーコーとか誰だろう。今度は無理かも……って不安が少々あったのですが、問題なく最後まで読めました。
    たまにニーチェとリンクしていたりして「あ、これ1巻でやったところだ!」と私は一人テンション上がっていたのですが、1巻から追わずとも、今回は今回でニーチェの必要な部分を分かりやすくまとめてあり、どこからでも読める構成になっていました。

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著者プロフィール

現在、専修大学文学部教授
1956年、神奈川県に生まれる。
1985年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。
現象学をはじめとする現代哲学、歴史理論、舞踊美学を研究。
著書に『図解雑学 哲学』(ナツメ社)、『哲学マップ』(ちくま新書)、『哲学ワンダーランド』(PHP)、『経験の構造:フッサール現象学の新しい全体像』(勁草書房)がある。

「2007年 『ハイデガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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