• バジリコ (2008年6月4日発売)
3.56
  • (17)
  • (14)
  • (30)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 226
感想 : 34
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784862381002

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

不安定に変転する場面と、残虐さや冷酷さが交錯する中で、氷の魅惑に引き寄せられる心の葛藤が描かれています。幻想と現実の境界が曖昧で、凄惨さと美しさが共存する世界に浸ることで、読者は痛みや恐怖を感じつつも...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とても美しい、幻想小説だった。

    幻想と現実のヴィジョンの境目はなく、血も髪も氷も、凄惨で美しい。
    生死に大した意味がなく、痛みと恐怖と幻想の世界に、ただただ浸かっていた。
    他のも読みたい。

  • 文庫版まで出た、というので読んでみたのだったが、主観的で見通しのきかない世界に終始している感が強い。虐待された過去を持つアルビノの少女を、二人の人物が、一方は自分のものにしようと他方は救出しようと繰り返すのだが、実はどちらの人物も「私」なのでは、ということに早い時点で気づかされる。作家自身の持つオブセッションにつき合わされているようで居心地が悪い。他者というものが存在しないエゴセントリックな世界になじめない読者であるこちらの方が、所詮縁なき衆生なのかもしれない。

  • なんかすごい!! 何度も再読したい。 (幼並感)

  • いったい誰の場面?と頭がついて行けず疲れた。
    話は単純だけど、あっち行きこっち行きするし…
    で、インドリって何?ググった…
    『半暮刻』に出てきた本

  • 起こっている事象を理解しても、次の行では先ほどまで描写されていた事象が全てなかったことになっている。現実か妄想か、はたまた夢か、そもそも視点は統一されているのか、最後まで答えは示されない。好き嫌いがかなり分かれそうな作品。

  • SFともとれるけれども、そうでない要素もあるのでね…

    冒頭から察することはできることでしょう。
    もう確実に世界が終わりを迎える世界軸です。

    そんな中何らかの使命を帯びた男が出会ったのは
    何やら訳あり気な少女だったわけです。
    そして、彼は少女を追い求めますが…

    これってまさか「○○」じゃないよな…
    結末は確実に破滅な点で
    なんとなくそう思えるのよね。
    あと著者に関しては…

    滅ぶものは美しい。
    さいごのあがきがな。

  • 妄想と現実、自己と他者との境界が曖昧な主観を綴る濃密な文章のかたまり。
    迫りくる雪と氷に追い立てられるように読んだ。
    権力と支配の象徴である長官と同化することで、自身もそうだと錯覚する主人公。反転して、認めがたい自身のパーソナリティを自覚するための鏡像たる長官。少女の自立を許さずに、自分の庇護下でなければ生きられないのだと共依存を望む歪な欲望。
    著者もこのような世界を見ていたのだろうか?そして自分ならあなたを救うことができるし理解したいと言い寄るうぬぼれた人たちに嫌気が差していたのだろうか。

  • まず、これが1967年の作品だということに、ひどく驚かされた。読みやすくて、全く古びていない。ほとんど改訳というのも頷けた。

    カヴァンの作品は、これで2度目の出会いだが、最初は、主人公の終始一貫しない行動理念にいらいらして、つまらなく感じられた。

    しかし、終盤にきて、まさにこれが生きているってことだよ、と至極納得させられた展開が、圧倒的な終末論をあおる風景の描写と相まって、とても美しく感じられた。

    また、時折、矛盾している描写が明らかに挿入されている寒々しさは、カヴァン特有の、幻覚を見せられている感(これが主人公自身の幻想か、作者自身の幻想かは分からないが)があって印象に残るし、主人公と長官と少女の3人が、1人の人間の様々な人格を表しているのではと思わせる感じも、怖いけど、何か惹き付けられるものが私の中にはあった。

    最も怖かったのは、死の間際という、刹那的瞬間でしか、生きているということを感じられないかもしれないと思ったこと。

  • 再び氷河期に入ったのか氷が迫り来る世界で、北国のスパイのような中年男の主人公がアルビノの「少女」(とだけ書かれてるけど、実際は大人の女性)を追ってあちらこちら危険な旅をするというような話。男は「少女」に対する庇護欲と嗜虐的な欲望の間で揺れており、「少女」の方も男に対してアンビヴァレントな態度をとっている……とだけ書くと、なんだか普通の小説のようだけど、場面はいきなり飛ぶし、誰の視点かわからない描写が続くし、書かれていることが主人公の幻想だか現実だかわからないし、ついて行くのに頭がくらくらするような幻想小説(作者は重度のヘロイン中毒だったと後で知って納得した)。
    迫り来る氷の壁、それが頭の上で轟音と共に崩れ落ちててくるイメージ、その氷とも共鳴するような透明感のある少女のイメージが美しい。破滅に惹かれているところが少しバラード風(そういえばバラードの推薦の言葉が裏カバーにあった)。
    でも中年男の狂気じみた執念に付き合うのは疲れる。

  • あるとき、世界規模の異常気象が起き、かつてない寒波が人々を襲う。氷の力に屈して滅びてゆく国々。生き残った人々の絶え間ない抗争。主人公の「私」は、とある国の重要機密に携わる身だ。しかし迫り来る人類の終末を目前に任務を離れ、己の心の欲するままに旅を始める。その旅とは、かつて愛した一人の少女を追い求める旅だった。白銀の髪と華奢な肢体。か弱く孤独な彼女は、男から男へと流れ流されて生きている。
    虐待されて育った少女の犠牲者のような表情がそうさせるのか、少女の庇護者は常に彼女の加虐者でもある。少女が「私」を捨てて夫に選んだ男性も、少女を拉致した「長官」も、暴力と高圧的な態度で少女を支配する。
    「私」は「長官」の支配力に魅了されつつ、彼の手から少女を助け出そうと奮闘する。そんな「私」の中にもまた、少女へのサディスティックな欲望は潜んでいる。男たちの少女への執着は、愛情というよりむしろ強迫観念的なもので、その点についてだけは支配関係が逆転していると言える。特に「私」の少女への執着心は病的なほどだ。男たちと少女、加虐と被虐の危うい関係が燠火のように行間を焦がす。そしてその火をも消し去ろうと忍び寄ってくる氷の存在感が寒々しい。
    苛烈に凍てついてゆく現実世界と、「私」が頻繁に陥る退廃した幻視の世界。交互に現れる二つの世界が織り成す物語は氷雪のタペストリであり、倒錯した愛のファンタジーでもある。無国籍で綴られる上、主人公たちに名前も個性も付与されていないため、寓話としても読める。奔放に行動する「私」の資金や移動手段が決して尽きないのは、現実にしてはあまりにご都合主義。
    しかし、この物語の真の主人公は世界を覆う氷であり、リアルであるべきは氷がもたらす終末のヴィジョンだけなのだと、読後に納得した。
    翻って私たちの現実世界を眺めれば、温暖化が叫ばれる昨今だ。しかし映画『デイ・アフター・トゥモロー』で描かれたように、温暖化の後に氷河期がやってくるという学説もあるという。学説が正しければ本書は予言書ともなるだろう。終末が迫るとき、人は最も自分の心に忠実になる。そんなシンプルな真実も、再認識させられる。

  • 私の理解力が低いのか、よくわからなかったというのが正直な感想。
    美しいとは思う。
    現実と幻想が入り乱れてるような感じで混乱。
    頑張って読み切っては見たが…

  • 2017.09.21 図書館

  • 正直に言うと、おもしろくもないし、見せ方も下手だと思う。バラードの絶賛が嫌味かと思えてしまうぐらいに。

  • 真夏のクソ暑い時に読むのに、なんと寒々しい小説だったことか。雪と氷に閉ざされたディストピア小説。
    カフカと並べられる作家だが、カフカの迷宮をさらに濃くし、幻想に迷いんだようだ。センテンスごとにどこへ向かっているか分からなくなる。
    非常にユニークで、孤高の作家性があるが、「うまい」という感じはない。銀髪の儚げな少女を助け出そうとするプロットは時に稚拙で時に破綻しているようにも見える。カフカが小説を発表せず書き溜めていたように、アンナ・カヴァンも生前に成功した作家ではない。パーソナルに、自分の内なる闇とイマジネーションを吐き出すための作品という印象がある。それ故に、救いの王子のファンタジーとは程遠く、無力・無個性な少女の蹂躙といった暴力性までもが行間から溢れ出す。この無防備さはカヴァンの魅力である。

  • 迫りくる氷に怯えながら一人の少女を探す男の物語。

    少女と迎えるデストピアは彼にとっての一つの希望なのでしょうか。

    ひえびえとさせてもらった海外文学バーテンダーさんに薦めていただいた一冊。

  • 氷に覆われていく世界。追い求める相手は逃げ、災難は払っても払っても降り注ぎ、理不尽に巻き込まれ。読んでてもちっとも楽しくならないのにどんどん引きずりこまれる。陰惨というほどの積極性のなさはこの作者の持ち味か?
    イメージはバラードの「~世界」系ですが…「~世界」は、あくまで変容していく世界が主人公(?)で、登場事物たちがそれにひきつけられていくのに対し、「氷」では世界の異変より個人の事情が優先するのが21世紀の現代的過ぎて不気味。

    「ちょっとー、地球が大変なことになっているんだよー、放っておいていいのー?」って。というか、「主人公張っているんだったら、もっと世界と関わろうよ、君ら」みたいな。
    改訂版ですが、小奇麗過ぎる装丁がちょっと無神経。

  • 1985年2月出版。山田和子さん訳。氷が迫り来る戦争のさなか、私は少女を探すのだけど、探したと思えば離れ、現実か妄想なのか、悪夢の繰り返しのようでよくわからない。私とか男とか名前がなく、誰が誰なのか、もしかして同一人物なのか。何を伝えたいのか私には何も響いてこず、ただただこの少女はそんなに魅力があるのだろうかという疑問だけだった。

  • 気象変動で氷に覆われていた地球が舞台。交通・情報が寸断され、核兵器が使われたという憶測があるが、定かではない。凍らない赤道の土地をめぐる戦争のさなか、名も明かされぬ主人公の男は、かつて恋した女性の行方を追い、氷の世界に足を踏み入れる。並みのSFであれば、地球のアイスボール化をさけるためにヒーローが現れるところだろうが、本作の人類は、氷の前に無力。そこがいい。ラストページの憂鬱な一行が印象的。

  • 現実なのか幻想なのか。独特の語り口にいつのまにかはまってしまう。何度も繰り返される冷たい氷に閉ざされようとしている世界。全く現実味のない人形のような「少女」が、最後に一人の女性としてむき出しの感情を表したことに救われる気がした。

全29件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1901年フランス生まれ。不安と幻想に満ちた作品を数多く遺した英語作家。邦訳に、『氷』(ちくま文庫)、『アサイラム・ピース』(国書刊行会)などがある。

「2015年 『居心地の悪い部屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アンナ・カヴァンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×