邪悪なものの鎮め方 (木星叢書)

著者 :
  • バジリコ
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本棚登録 : 859
感想 : 107
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862381606

作品紹介・あらすじ

「邪悪なもの」と遭遇したとき、人間はどうふるまうべきか?「どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになる」極限的な状況で、適切に対処できる知見とはどのようなものか?この喫緊の課題に、ウチダ先生がきっぱりお答えいたします。村上春樹『1Q84』の物語構造、コピーキャット型犯罪が内包する恐るべき罠、ミラーニューロンと幽体離脱、被害者の呪いがもたらす災厄、霊的体験とのつきあい方から、草食系男子の問題にいたるまで、「本当ですか!?」と叫びたくなる驚愕の読書体験の連続。不透明な時代を生き延びるための「裏テキスト」。

感想・レビュー・書評

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  • 内田先生の著書を読むと、自分自身のひっかかりが、あぁここにあったんだなと気づく事が多々ある。とても上手に言語化して下さっている。

    こだわる=居着く
    自分の採用した説明に居着いてしまうと自力で現況を改善するのが難しくなる
    被害者意識をもつ=弱モノである自分に居着く
    これは自分自身にかけた呪いである

    被害者意識を持つ事に関して、非常に嫌悪感があった。
    (人がというより、自分自身に対して。)
    それはこういうことだったんだなーとそとんと腑に落ちた。
    責任の矛先を自分に向けることはとても勇気がいるししんどい。
    でも、ヨワモノである自分に居着いてしまった時点で、そこから抜け出せなくなる。
    抜け出すにはヨワモノである自分に居着いた自分を一度否定しなければいけない。ただでさえ勇気がなくてしんどいから逃げてしまった道なのに。
    自分にとって居心地の良い説明につい居着いてしまいたくなる。でも、自分自身に呪いをかけないように自分で自分を奮い立たさなくては。それができるのは自分しかいない。

    記号的殺人の呪いに関して
    あぁだから村上春樹はアンダーグラウンドで被害者の方々をインタビューしていくことで、「喪の儀礼」を行うことが必要だと感じたのかもしれない。

    バジリコ株式会社
    2010年

  • 「自分が所有したいのだけれど所有できていないもの」を数え上げるのを止めて、「自分がすでに豊かに所有しているので、他者に分かち与えることのできるもの」をチェックする仕事に切り替えるということの方が、心身の健康にはずっとよいことであり、すぐれた「危機対応」である。

    非現実の幻想を現実だと思いなす、かなり身勝手な人間の場合しか「妥協」ということは起こらない。可動域の制約は「織り込み済み」の与件として、それを「勘定に入れた」上で、自分に何ができるかを考えていく。

    まさに、「どうふるまってよいのかわからない場面で適切にふるまうことができる」ための発想の転換を促す要素が散りばめられています。

  • ずっと気になってた人の本なので読んでみました。
    だってタイトルからして気になる。

    ひとつひとつが短いエッセイなので読み易いんだけど、
    ひとつひとつ読んだあとに考え込んでしまう。
    今起こる事件やいろいろのムードについて、
    なんかすごく客観的に、雰囲気を掴んでるというか。
    言葉でその雰囲気をちゃんと説明してくれてるのか。
    あ、なんかよくわかんない感想になってるな。

    タイトルにもある「邪悪なもの」の定義がなるほど、って思いました。
    本によると、「どうしていいかわからないけれど、何かしないとたいへんなことになるような状況」ということです。
    これってさ、なんか結構よくあることじゃない?
    それに対する知恵というか、
    考え方を提示してくれるように思いました。

    あと印象的だったのは、「父」と「子ども」に対する考察。
    優れた物語は「私にだけわかるように書かれている」と、
    読者ひとりひとりに思わせるという話。
    あと犯罪の「歌枕」な構造。日本的な呪いの話。
    「内向き」でいいじゃない!ていう話。
    あと草食男子についてとか家族の儀礼についてとか。

    と、どんどん挙げられるので、
    ちょっと読み返してみようと思います。
    そしたらまた気になるところは変わっている気がする。

    去年出た本ですけど、今読むととても面白いと思う。
    多分去年読んでても面白かったと思う。
    とにかく、「今」読む本なんだろうなぁ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「なんか結構よくあることじゃない?」
      そう思います。こう言う捉え方が上手いですよね!

      「とにかく、「今」読む本なんだろうなぁ。 」
      内田セ...
      「なんか結構よくあることじゃない?」
      そう思います。こう言う捉え方が上手いですよね!

      「とにかく、「今」読む本なんだろうなぁ。 」
      内田センセの本は、今動いているコトと本質的なコトが、程よくミックスされているからでしょうか、いつ読んでも新鮮に感じます(私の物覚えが悪いのも一因かも知れませんが)
      2013/03/21
  • タイトルが大げさ!
    でも、読み終わった後、物事を肯定的に捉えられるようになってるから、確かに鎮められたのかもw
    決してオカルト的な本ではありません。
    考え方が非常に身になります。
    内田樹さんのブログを編集した本です。

  • 内田樹さんを私が好きな理由は、理性の外側に人間の強さがあると考えているところです。僕の読書と似たような点がある。読書は、本から意味を取り出すなどということではなく、読書は、読書として意味がある。と、かんがえているんだけれど、そのような根本的な考え方の部分を共有できている気がするのだ。

  • 内田先生の基本的なスタンスがたいへんによくわかる一冊。

  • あれよあれよと読み進んだ。非常におもしろい。このタイトル、必ずしも書かれている内容と合致しているわけではないけれども、内田ワールド独特の内容の曖昧さがにじみ出ていて、逆によかった。読み終わった後に、全体として何を言いたかったのだろう?と一瞬考えるが、恐らく各章で読者それぞれが"思うところ”があれば、しめたもの!なーんて著者は考えてそうである。どの問題提起に関しても、さらりとその知見を述べている。しかし他人へ強制している感もなく、そのマイペースさが心地よい。

  • ・裁判員制度は大丈夫?
    ・モラルハザードの構造
    ・人を見る目
    ・後両肩取心得
    ・そのうち役に立つかも
    ・失敗の効用
    ・反復の快
    ・学院標語と結婚の条件
    ・困窮シフト
    ・親密圏と家族
    ・草食系男子の憂鬱

  • 「1Q84」について書かれたエッセイが2篇ぐらいあって、きっとネタバレしているだろうから、先にずっと積んでおいた「1Q84」を引っ張り出しようやく読み出したのだが、なぜだかとてもページが重くて、結局こちらが先になってしまった。
    「1Q84」が楽しく読みやすいということは間違っていて、このエッセイ集が止まらなくなるということは残念なことに正解だった。

    著者のエッセイはずいぶん読んでいるが、最も軽く、笑えて、しかし示唆に富んでいる。
    3.11以降どうも暗く、硬いのだ。本作のノリが好きだ。
    恢復希望。

  • (特集:「先生と先輩がすすめる本」)
    タイトルは怖そうですが、幽霊とかが出てくるわけではなく、「邪悪なもの」に関するエッセイ集です。この本でいう「邪悪なもの」とは、「どうしていいかわからないけれど、何かしないと⼤変なことになる」状況と定義されています。学生の⽴場でいうと、難しい必修の単位や、卒業研究がこれにあたるのではないかと思います。放っておいたら留年という状況において、適切に振る舞うにはどうしたらいいかについて⾊々考えさせてくれる本です。
    (教員 推薦)

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00511805

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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