少年犯罪厳罰化私はこう考える (新書y 174)

制作 : 佐藤 幹夫  山本 譲司 
  • 洋泉社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862481559

作品紹介・あらすじ

厳罰化は少年犯罪を本当に抑止できるのか?犯罪被害者や遺族に対し、十分なケアを保障することにまったく異論はない。ただしそのことと、少年事件の「全体」を冷静に論じることとは別である。本書は、矯正や司法、教育、医療、福祉など、現場の第一線での豊富な実践の経験をもつ書き手が、昨今推し進められる厳罰化の是非にとどまらず、広い見地からの議論を提出しようとしたものである。加害少年は十年後、あるいは二十年後、必ず社会復帰する。そして私たちの隣人となる。どんな隣人となってくれることを私たちは願うか。それが本書の出発点である。

感想・レビュー・書評

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  • 2000年代の改正の是非を問う本書は、今般の改正議論の土台として読むべき一冊。少年院と少年刑務所の本質的な違いとして、前者では教官と少年は名前を知っている関係で少年を信頼・信用することが基本的な構えであるのに対し、後者では刑務官と受刑者は名前を知らない関係で、受刑者を信頼してはならない場所だとの分析は興味深い。重大非行の加害少年ほど、人との信頼関係を築く力を育てる「育て直し」が必要だ。少年司法は、少年を徹底して生身の人として扱い、その将来を構想し、それを科学的に検証する点に刑事裁判との根本的違いがある。

    適用年齢引き下げや厳罰化が、科学的根拠を持たずに押しはかられていることに危惧を覚える。本書では、具体的事件における判決文において、少年の未熟さを指摘する一方で、重い刑罰を課すことによって規範意識を喚起させることで再犯を防止させるといった常套句の欺瞞を暴く。そもそも、非行少年たちは、それまでの人生で非難され、拒否され続けた者が多く、重い刑罰も、本人に対する非難の一つと被害的にしか受け止められないケースが多い。刑務作業が中心の少年刑務所では、その気持ちを増幅させ、正しい方向から罪と向き合うことはできない。

    厳罰化がもたらすのは、少年の更生への阻害でしかない。心理学、発達教育学、医学、脳科学などさまざまな科学根拠を持って改正議論を行うべきであり、非行少年を排除して終わりではなく、少年が社会に帰ってきたときに、どのような大人になっていてほしいかを考えていくべきだ。

  • 平成24年1月27日購入(初版、古本)

  • 一見とっつきにくいテーマではあるが、それぞれの著者が分かり易く書いてくれているので、読み易い。書いてあることにも一々納得させられる部分が多い。図書館で借りてきた本だが、今後も参考にすることがありそうなので、改めて買いたいと思った。

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