エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ (新書y)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862483034

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  • ラディカルな活動の背景には、アメリカの独立戦争や奴隷解放運動の歴史があるとのこと。前半の各団体の活動や歴史はコンパクトにまとめられており、情報も多い。

    ・シー・シェパード:パタゴニアが資金提供。アニマルプラネットと連携する。1986年にアイスランドの2隻の捕鯨船を沈め、92,94年にはノルウェーの捕鯨船を襲撃した。アメリカ西岸北部のマカ族の捕鯨にも、クジラに向けて音波を発信することで妨害する。
    ・アース・ファースト!:デイブ・フォアマンが1980年に結成。工事現場の重機や建設資材のサボタージュ(モンキーレンチング)やツリー・スパイキングを行った。ジュディ・バリが率いた90年代にはエコ・フェミニズムも導入し、ツリー・シッティングなどの伝統的な不服従に回帰した。
    ・地球解放戦線(ELF):アース・ファースト!がモンキーレンチングから決別した90年代に分裂して形成。遺伝子組み換えの研究所や農場の放火を行っている。

    (背景)
    ・シエラ・クラブ:1952年にデイヴィッド・ブラウワーが会長に就任。コロラド川貯水計画法(反ダム法)を成立させた引き換えに、グレン・キャニオン・ダムの建設を容認した。ブラウワーは69年に会長辞職した後、地球の友を立ち上げた。1979年のRARE IIをシエラ・クラブが評価したことに対して、新しい活動家たちは従来の活動形態に限界を覚えた。
    ・ピーター・シンガー:「動物の解放」において、意識の複雑性や快・不快の程度の視点に注目して「種差別」の概念を用いた。動物への配慮は、その動物の持つ能力によるとしたことが、大型類人猿やクジラ・イルカの保護に専心する活動の背景となった。
    ・市民的不服従:思想家として、ソロー(米墨戦争の際の人頭税の支払いを拒否)、ガンディー、キングがあげられる。社会を主導している階層が、当該の問題から得る利益に立脚している以上、ロビー活動では改革できない。

    <考察>
    動物の権利の概念の背景には権利の拡大の概念があるが、それは西洋社会の差別や階層社会の歴史の裏返しなのではないか。そして、奴隷制度や人種差別の背景には、ローマ時代や大航海時代以降の植民地支配、帝国主義、アメリカの西部開拓時代の先住民支配といったものがあるのだろう。しかし、動物の権利を認めているにもかかわらず、種差別の概念を導入しているのは、人間と動物との境界の線引きを移動したに過ぎず、彼らが何らかの「区別」をせずにいられないことを物語っている。善悪の二分論から逃れられないということなのか。

  • 再読。
    環境保護運動や反捕鯨運動がアメリカにおいてラディカルになって来ているのは、アメリカの歴史に理由があると筆者は考えている。
    それは、奴隷解放、公民権、女性解放といった自由と権利の拡大にしばしば暴力性が伴い、また、法の遵守ではなく、踏み越えが決定的な役割を果たしたためで、過激なエコロジスト達の論理も自然や動物の権利を獲得するためには非合法的な行為を含もうとも問題にはならないと考えるからである。としている。
    このような観点から環境・動物保護運動の歴史、思想史を考察していく本。


    日本だとシー・シェパードの活動が問題になってます。すでにその過激な手法で批判をされていますが、その思想から見ても賛同は無理だと思いました。
    Shepherdは導き手という意味を含み、イエスを連想させる単語であり。彼らの行動を見るにつけ海の番人という単純なものではないと考えます。
    この度日本の調査捕鯨側から提訴されたのでちょっと再読。

  • [ 内容 ]
    「エコ・テロリズム」とは一体何なのか?
    過激な反捕鯨運動、動物実験関連企業や研究者への執拗な脅迫・襲撃、自然開発業者の関連施設への放火、バイオ関連企業への爆弾攻撃…。
    「環境保護」や「動物愛護」を理由とした暴力事件が近年続発し、欧米では大きな社会問題となっている。
    ラディカル環境・動物解放運動の歴史と思想的背景を読み解いていくと、戦争によって独立を勝ち取り、奴隷解放・公民権運動によって権利を勝ち取ってきた、「アメリカ」の真の姿が浮かび上がってくる。

    [ 目次 ]
    第1章 エコ・テロリズムとは何か(続発するエコ・テロリズム エコ・テロリズムとは何か)
    第2章 ラディカル環境運動と動物解放運動(グリーンピース シー・シェパード ほか)
    第3章 思想史的背景(直接行動主義的環境運動の源流 動物の権利 ほか)
    第4章 アメリカにおける反エコ・テロリズム(反エコ・テロリズムの源流 エコ・テロリズム関連立法)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 環境運動に対する考え方、歴史、学ぶものは多かった。 動物に人格というか人権というかを認めるか? 自然はどうだ、その判例等、しらない世界に踏み込むのは楽しい。 

  • 2010/10/27 購入
    2010/11/06 読了

  • 「エコ・テロリズム」とは一体何なのか?過激な反捕鯨運動、動物実験関連企業や研究者への執拗な脅迫・襲撃、自然開発業者の関連施設への放火、バイオ関連企業への爆弾攻撃...。「環境保護」や「動物愛護」を理由とした暴力事件が近年続発し、欧米では大きな社会問題となっている。根拠なき科学の代表ではないだろうか。これらがもつ真の意味を語っている。

  • グリーンピースやシーシェパード等の歴史と思想背景を説いた本。

著者プロフィール

浜野喬士(早稲田大学助教)

「2014年 『現代社会思想の海図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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