フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862483751

作品紹介・あらすじ

フランスでは教育費に税金や社会保障の負担として社会から広く集めたお金を使うのに対し、日本では子どもを持つ親が自らの蓄えをあてる。日本では親に十分な蓄えがなければ、子どもは大学へと進むことができず、社会階層の階段を上ることができない。かくして格差は固定する。

感想・レビュー・書評

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  • 少子化を止めたフランスの事情を知れるかなと読んでみたが、それ以上に収穫のある本だった。タイトルに対する答えは完結には「政府の援助と社会の意識」によるものだけど、それ以外にフランスでの「親」としての意識、「結婚・非婚」に対する考え方、「父親の育児参加」についての取り組みなど、ものすごく目からウロコの落ちる内容だった。フランス式を押し付けるわけでもなく、淡々とフランスの現実を書いているが故に読みやすく、また日本との違いがはっきりわかる。

  • バカンスのあるフランス。
    羨ましい。
    子育て環境も充実しているだろうけど、
    女性の社会的地位も高いんだろうな。

    専業主婦になりたい女性もフランスでは少ないらしい。
    M字カーブが未だに残る日本は主婦が財布をにぎることが多いことに
    関係しているのでは?という考えが的を得ている。
    日本の主婦も変わってきているだろうけど
    フランスではお財布はほぼ別々らしいです。
    家計管理の一切を妻が握る事も多い日本の専業主婦。

    そして、育児の一切ものしかかるワンオペ育児。
    著者はその男女入れ替わりのバージョンで育児と家事を担った。
    フランスで。その考察は10年以上前とは思えないほど今だ有効のままだ。

  • 元フランス在住、子育てライター(男性)のフランス子育て事情ルポ。
    自身が苦労した経験から、何故フランスは子育てしやすいのか?出生率が高いのか?を書いている。

    「女性が子供を産んでもそれまでとほとんど変わらない生き方ができるのがフランス」という言葉にフランスの社会保護の強さを感じた。

    確かに日本は「大きな政府」から「小さな政府」になることで、社会福祉に手が回らない、自己責任の傾向が強い社会になってしまった。

    社会のセーフティーネットを考え直す機会になった。

  • このジャンルでは珍しい男性視点の『高幸福度・高出生率』の本。
    男性ならではのクリアな切り口で、数字やグラフが満載。
    理論的に日本とフランスの違いを知ることができます。
    値段分の価値あり。
    男性の方で少子化問題・社会問題の国間比較をしたい方に特にお薦めです。

  •  子育てと労働を中心として日仏を比較しており、読めば読むほど暗くなる本。

     政府から支援は欲しいけど税金負担は嫌がる国民、日本に蔓延する「自己責任」、アメリカよりもひどい所得格差(さらには男女差別)などなど・・・
     もうやだこの国・・・そうだ、フランスへ行こう!!

     ・・・もちろん、フランスがユートピアなわけではなく、多くの問題を抱えているのは事実であり、著者も認めるところである。
     女性だけではなく男性にも読んでもらいたい本。いや、男性が読んで考えなければ日本の生きにくさを変えることはできないのではないかと思った。

  • 子育てに関する幅広い視野を持ちたいと思い、海外の子育てに関する本を読みたいと手に取った本。
    日本とフランスの子育ての考え方の違いなど、とても興味深く読みました。デモ大国フランスと呼ばれる背景なども理解でき、勉強になりました。
    また、日本での専業主婦や父親のあり方などの、刷り込まれた潜在意識を改善していく必要があるのを再認識しました。

  • 私が就職活動してたころがちょうど総合職がで始めた頃で、男女雇用機会均等法の元、さあ男に負けずに働くぞ!とライバル心を燃やした反面、働かずに芝居だけやりたいなー、と矛盾した考えを持っていた。会社勤めしたり、バイトしながら芝居やったりしてたけど、親に泣かれて就職した先で夫と出会い結婚を機に退職。こういう時、女の人は結婚したから辞めますー、が言い訳になってよかったわ。
    で、そこから転職して今の会社に足掛け22年。子供3人の産休育休、乳がんの手術で2ヶ月休んだりあったけど、よく働いた、私。特に子供できてから家事負担がドッと増えたけど、私の母も保育士しながら家をキレイに保って、手作りご飯作ってたから頑張らねば!と、17時までの時短勤務で働き続けたわー。
    自分の時間が持てたのは、下の子が中学入ってから。それまでサッカーだ、バレエだ、と土日も習い事の付き添い、園や学校行事に駆り出されてもうへとへと。テレビ録画なんか見る時間なかった、見事に。
    コロナで在宅勤務が始まったら、通勤時間の30分弱の電車に乗ってる時間だけが自分の時間だったと気づき、在宅で勤務上がったらすぐに家事に頭が切り替わらず、まじ疲れてご飯作れなくなった。つくりおき.jpのお世話になっております。ご飯作らなくていいってサイコーよ。
    ずーっと思ってたのは、男女平等と言いながら、女の会社にいる時間を伸ばしただけで、家事負担はそのまま女担当。それに対するフォローなし。ワークシェアという言葉も最近は聞かなくなった。でも今の私に必要なのは、男女の区別なく行うワークシェアじゃないか?給料下がるけど勤務時間を減らし、家や趣味の時間をふやした方が人生の満足は高まると思う。パートナーの片方だけが時短だと、結局短い勤務時間の方が家事に時間を取られるから、男女両方が絶対いい。
    どうやって変えていけばいいか、娘にはいいバトンを渡したい。そう思っている人たちで連帯すべき時なんだろう。
    さて、どうするか、、、95

  • フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由 単行本(ソフトカバー) – 2009/2/25

    本当の少子化対策のヒントがここにある
    2018年6月18日記述
    横田増生氏による著作。
    2009年3月12日初版発行。
    湯浅誠氏、推薦!とあり
    Amazonの商品紹介部分にも紹介されている。
    大変納得できると思うので再掲すると、

    [湯浅誠氏の推薦文(全文)]
    広く世界に目を向けよう。正社員賃金カットの前に、
    家計負担を軽くしなければ、少子化は進む一方だ。
    収入だけに目を向けるのではなく、家計支出にも目を向けてみよう。
    なぜ私たちはこんなに稼がないと、まともに子どもを育てられないのか。
    今の日本は支出が高すぎる。
    教育・住宅のセーフティネットがないために、働いても働いても余裕がない。
    高すぎる教育費・住宅費が長時間労働とサラリーマン戦士をつくる。
    取り残された非正規社員は結婚もできないし、子どももつくれない。
    誰もが安心して子育てできる国にしなければ、次世代はいったい誰が担うのか。
    日本ほどの急激な少子高齢化は自然現象じゃない。
    本当の少子化対策のヒントがここにある。
    日本の将来を憂うすべての人に読んでもらいたい。

    以上のように湯浅氏は本書を紹介する。
    次世代は誰が担うのか?という問いかけに
    正面から答えなければ日本国に待っているのはジリ貧だ。
    我が国ではなぜか自称保守派の人間に限って
    残念ながらあらゆる福祉を敵視し目の敵にする人間が多い。
    何から何まで自己責任とするのは単なる思考停止に
    他ならない。
    住み良い社会を作る為にはアメリカ以外でも参考になるものは貪欲に採り入れるべきだ。
    そうしないと日本以上に少子化の進む韓国のような
    状況がすぐそこにある。
    自称愛国派の人間はあれだけ韓国を事を貶す割には
    少子化対策に理解があるように見えない。
    また自称保守派、自称愛国者は移民も頑なに認めない。
    であるならば少子化対策は待ったなしに取り組み
    成果が出るまでトライ・アンド・エラーを進める他はない。
    あの保守派の権化のはずの安倍晋三ですら少子化を
    国難と認定し女性が輝く社会を叫び出したのだから
    自称保守派、自称愛国者は本書をバイブルとし
    フランス以上に子育てをしやすく国づくりに邁進、支持しなければそれは似非愛国者である。

    日本のネトウヨ共だけではなく社会の根底にある
    思想も変えていかないと少子化対策の継続性が悪くなる恐れを感じる。

    単に制度を作るだけでは無く、その考えの源流を変える事も必要不可欠なのだ。

    本書に目を通すと(2009年3月の初刷)未だに内容が新鮮で日本が大きく変化していない現実に驚かされる。
    願わくは本書の内容を読んで古臭い内容だなと思える程に日本国内が変わらないといけないと強く思った。

    子供を愛する能力は、女性に本能的に備わっていると言われる母性でもなければ、ましてや父性でもない。子供と大切に過ごした時間が人を親へと変えてゆき、そこから子供を愛する力が生まれてくる。

    子育てによるもう一つの特典は、自分の視野が広がることだ。
    中略
    子供が多少の迷惑をかけるのは、お互い様なのだという気持ちになってくる。
    子育てとは自分自身が親に育ててもらい大きくなった過程を、親となった自分の目を通して追体験することだ。

    育児か仕事かの二者択一を迫られ、育児を選んだときに抱く苦渇感は男であれ女であれ大差ない。

    子供を育てながら仕事をする上で一番辛いことは、時間が常に引き算になることだった。謙太郎がカゼをひいた、怪我をした、保育園がストで休みになった・・・その度に、仕事の時間が減ることはあっても増えることはない。

    本人が望むなら家庭も子供も、そして仕事も手に入れることの出来る社会に住むことが、幸福の条件だと考えることが出来る。つまり、日本のように子育てか仕事かの二者択一を迫られる社会に住む時、どちらを選んでも幸せになることは難しい。

    フランスで取材を進める内に、出生率が上昇をはじめたのには主に3つの理由があることがわかった。
    一つは所得格差が小さいこと。
    もう一つは職場における男女格差が小さいために、女性が仕事か子育てかの二者択一を迫られる事が無いこと。
    最後は、「週35時間労働」に表れているように、労働時間が短いため男女共に育児や家事に参加できること。

    (フランスでは2000年から週35時間労働となっている)

    子育てであれ何であれ、新自由主義的な考え方をふりまわして自己責任という冷淡な一言で片付けようとするのが日本だとすれば、フランスにはその対極にある社会的連帯という考えが流れている。
    それが小さな所得格差と子育てのしやすい環境につながっていた。

    女性が子供を産んでも、それまでと殆ど変わらない生き方をしていけるのがフランスなのよ(在仏10年以上日本人女性・子供2人)

    60%以上の男性が父親休暇を取る

    サラリーマンと専業主婦という家族の形を未だに標準世帯とみなしていることが日本の生きにくさの奥底にある

    必要なのは、子供を産みやすく、育てやすくする政治や企業による制度改革だけではない。
    日本人の家族観が変わらなければ、男女共に生きやすい社会をつくることはできないし、少子化の流れを止めることもできない。

    デモ・スト大国のフランスでは、学校の先生たちも年に1、2回はストを打つ。
    ここではストやデモが日常の一コマとなっているので、人々も決して慌てたりしない。

    子供一人を大学まで行かせるのに2000万円かかる日本

    どうして子育てにお金がかかるかといえば、教育費、特に大学にお金がかかるからだ。
    私自身、九州の県立高校を卒業して関西の私立大学(関西学院大学)に
    進んだ。その後、いったん働いてからアメリカの大学(アイオワ大学大学院)で
    2年間学んだ。
    現時点での私の通った学校の学費を調べてみると、高校が3年間で約40万円、大学が入学金を入れて4年間で380万円かかる。それに大学4年間に月10万円の
    仕送りをした場合、合計で900万円かかることになる。
    アメリカへの留学は脇に置くとしても、謙太郎が私と同じコースで大学まで進むなら、生まれてから18歳になるまで18歳になるまで毎年50万円を積み立てる必要がある。さらに高校を有名私立に通えば200万円の増加となり中学から私立にするとさらに200万円の増加で、年間に積み立てる額は70万円に上る。
    2人目、3人目の子供を躊躇するのに十分な金額だ。
    子供の学歴を高校までとすれば、教育費を心配する必要はなくなる。
    しかし、日本の雇用が不安定になり、非正社員の厳しい現実を目の当たりにすれば、それだけ親は自分の子供にはちゃんとした教育を受けさせたいと思う。

    大学教育における公的支出の割合は、OECD平均の70%台後半に対して、
    日本は40%台前半と非常に低い水準にある。
    一方フランスでは、この数字が85%を超え、福祉国家のノルウェーやデンマーク、フィンランドとなると、この数字がいずれも95%を超えている。

    フランスでは教育費に税金や社会保障の負担として社会から広く集めたお金を使うのに対し、日本では子供を持つ親が自らの蓄えをあてる。
    日本では親に十分な蓄えが無ければ、子供が大学へ進むことは出来ず、
    社会階層の階段を上ることが出来ない。かくして格差は固定する。
    日本人が子供を産むことに積極的になれないのは、現状のままで子供を産めば
    子供の将来に希望を抱きにくいことが大きく作用しているのではないだろうか。
    日本社会が機会不平等となりつつあることを半ば本能的に察知した人たちが子供を持つことに二の足を踏んでいないだろうか。子供を抱えて自分が苦労するだけでなく、子供も社会的弱者となってしまうような社会でどうして子供を産もうという気になれるだろう。

    女手一つで子供を大学にまでやると年金どころか貯金まで無くなってしまう日本と、子供が何人であろうと無職のまま大学までやることが出来るフランス。
    この隔たりは埋めようがないほど大きい。

    フランスには経済効率一本槍で行こうとする動きに対抗する政治勢力や民間団体、慈善団体や宗教家などが幅広く存在して、移民であろうともフランスに住む限りは最低限の生活を保障すべきという世論を下支えしている。
    そして、フランス人のいう最低限の生活には、きちんとした住居に住むことや
    子供を大学までやること、コンピュータやテレビを持っていることが含まれている。

  • タイトルの「フランス」プラス装丁の雰囲気がオサレ系を思わせ損していそうな正統派本。
    このタイトルでは服は10着みたいな受け取り方をされそう、と思って考えたけどその本を読んでいなかった。
    理念とイメージと戦略と政策。
    何故に日本は出来ないのかなぁ。

  • 自分の体験談を色濃く反映しすぎ。フランスにいる日本人のインタビュアーさんが日本の子育てを嫌いすぎて色眼鏡が強い。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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