資本主義のコスト

  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862484291

作品紹介・あらすじ

ウォール街のエコノミストとして、第一線で25年以上、活躍し続けてきた著者による「生きた経済」を知るための好適書。「ブーム&バースト」サイクルを繰り返してきた資本主義経済システム、その特徴と本質を平易に解明する!金融に対する信任を回復させる手立てとは。

感想・レビュー・書評

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  • 人々の楽観がバブルの形成と崩壊につながり、政府の救済策が必要になるという現象は、資本主義の避けることのできないコストである。わかったような、わかんないような…

  • 「資本主義のコスト」とは、自由経済・資本主義が払わざるを得ないコストであり、それは市場の混乱であると言う。市場の混乱を収拾するには、政府の介入という現実のコストがかかり、そしてそれに続く景気の低迷という見えないコスト(機会損失)がかかる。

    しかし、著者は、市場経済を否定するのはナンセンスであるとも言う。市場経済が自由にリスクを取るからこそ、成長が促進される。ただし、過剰を管理しないといけない。過度にリスクを取る群集心理やそれを促す商品などだ。歪みは資産価格の上昇などに現れるが、伝統的な経済学者や政策決定者はインフレと物価にばかり目を留めたがゆえに、そうした変化に対処するのが遅れた、と。

    バブルについては数多くのレポートや本がある。それを後から解説することは簡単だ。著者は予想が間違ったときのことも打ち明けているが、多くのバブルを事前に指摘していたことは興味深い。彼は、この本で紹介されているポスト・ケインジアンの経済学者ハイマン・ミンスキーの考えを研究したことと関係する。

    経済学者の話は後に触れるが、まずはこの本から、熱狂を疑う心がいかに大事であるかということと、トレンドを追いかけることの恐さをあらためて知らされる。実体経済と資産市場の関連を慎重に捉えること、そのためにマネーフローの動向と債券を含めた資産価格の動向を、時系列とクロスセクション(グローバル)の2つの軸から意味づけておく必要がある。

    米国の経済学派と金融政策の話を通じて、それぞれの学派の主張が分かりやすく書いてあるところはなかなか良い。「それで、だからどうなの?」と思うかもしれないけれど、中央銀行や政治家の金融政策を評価するときに、その考えの拠り所を経済学派で表すことが多いので、知っておいて損はないだろう。

    バブルは今後も起き、そして崩壊するだろう。経済がグローバル化し、国境を越えた垂直分業が進み、お金が自由に流れる現代では、コストが伝播する広さと大きさは過去とは比較にならないことが恐ろしい。

    ボクのブログより:http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20100513

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