渡辺京二傑作選③ なぜいま人類史か (新書y)

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  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862487704

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  • 1980年代の講演録。

    著者の姿勢をよく表している一節
    <blockquote>先行する時代構造のパラダイム、たとえば倫理や伝統といったカテゴリーから自分は自由だなんて自慢したって、そんなのは、自分が現代という時代構造に安住しているということの告白でしかありません。 p.37</blockquote>
    アジア的共同体・・・国家を上級に疎外して干渉を免れる。二重所有。
    江戸時代日本の「国民不在」・・・長州藩の農民が外国軍の弾運びを手伝う。

    1.なぜいま人類史か
    1986年に健軍の真宗寺で行われた2回の講演より。ネオダーウィニズムからきた進化のランダムネスを唱える社会生物学を否定して、人類史を貫く法則・必然性があるはずだと説く。それがなければ人間は永遠に「天地生存」の実感を得られないと。

    2.共同体論の課題
    ここから1980、1年の福岡での公開講義より。マルクスの共同体論(アジア、ギリシア・ローマ、ゲルマン)の解釈について。古来、人間は共同体の一員としてしか存在し得なかった。共同幻想体。それを近代資本主義が「個」へと解体した。

    3.外国人が見た幕末維新
    『逝きし日の面影』の原型。なんともボンヤリした幕末の日本の平民。しかし、その目の中に炎が燃えているというゴンチャロフの観察。

    4.明治維新をめぐる考察
    マルクス主義歴史学のくだらん論争をバッサリ。維新の担い手は下級武士層しかいないだろうと。こんな議論は時代を感じさせる。圧倒的な外圧への対応を迫られたのが明治維新。近代資本主義という普遍的な流れに強姦された幕末の日本。下級武士は領主層ではなく官僚であったことが、彼らを革命の推進者たらしめた。

  • 2012/5/1購入

  • 渡辺京二の著作を読んでいると、吉本隆明とのシンクロする部分が多いと感じる。
    御両所とも、その独自の思想を展開している点において、である。
    以て範としたいと思う。

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著者プロフィール

1930年、京都市生まれ。
日本近代史家。2022年12月25日逝去。
主な著書『北一輝』(毎日出版文化賞、朝日新聞社)、『評伝宮崎滔天』(書肆心水)、『神風連とその時代』『なぜいま人類史か』『日本近世の起源』(以上、洋泉社)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞、平凡社)、『新編・荒野に立つ虹』『近代をどう超えるか』『もうひとつのこの世―石牟礼道子の宇宙』『預言の哀しみ―石牟礼道子の宇宙Ⅱ』『死民と日常―私の水俣病闘争』『万象の訪れ―わが思索』『幻のえにし―渡辺京二発言集』『肩書のない人生―渡辺京二発言集2』『〈新装版〉黒船前夜―ロシア・アイヌ・日本の三国志』(大佛次郎賞) 『渡辺京二×武田修志・博幸往復書簡集1998~2022』(以上、弦書房)、『維新の夢』『民衆という幻像』(以上、ちくま学芸文庫)、『細部にやどる夢―私と西洋文学』(石風社)、『幻影の明治―名もなき人びとの肖像』(平凡社)、『バテレンの世紀』(読売文学賞、新潮社)、『原発とジャングル』(晶文社)、『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』上・下(亜紀書房)など。

「2024年 『小さきものの近代 〔第2巻〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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