- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862489463
作品紹介・あらすじ
天皇制への評価、戦争協力、マルクス主義-決して触れることのなかった歴史家のタブーに踏み込む「20世紀史学史」!明治20年代から始まる日本近代史学の120年を超える歩みの中で、歴史家は天皇制と戦争に如何に対したのか。
感想・レビュー・書評
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中世史家今谷明氏の「歴史家」論。とりとめはないが、なかなか興味深い内容。特に、平泉澄論は秀逸。学説を立論者個人から切り離して学説として尊重することの重要性を認識した。また、戦後の日本史学界において、いかにマルクス主義歴史学(史的唯物論)がくびきとなっていたかというのを感じた。
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タイトルのイメージと異なり日本近代の歴史家たちの歴史ともいうべき本。天皇はほとんど登場しません。皇国史観の大家・超国家主義者・平泉澄の若き日の「権門体制論」というアカデミズム上の功績が、その後の超国家主義から触れられなくなったことは残念という指摘。左右を代表する平泉と羽仁五郎が兄弟弟子で、平泉が羽仁を高く評価していたというのも大変面白いものです。東西の歴史観の違いは東大・京大の歴史の大家を紹介していますが、なぜ違うか?は結局、京大が特色を出すために考古学に力を入れたということが分かったぐらいか。京大史学の伝統を作った喜田貞吉、本庄清次郎、内田銀蔵、林屋辰三郎らの仄々とした人柄の良さが平泉に支配された東大との違いなのか、と感じました。そして網野善彦氏の「中世荘園の様相」「蒙古襲来」の登場がいかに新鮮だったかが分かります。
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日本中世史家に関する小論集で、メインは「皇国史観」の平泉澄の史学史的分析。平泉の神秘主義・国粋主義を生来一貫したものとみなし、近年社会史的研究の先駆として再評価される『中世に於ける社寺と社会との関係』の執筆時と後年の国粋活動家時代との断絶・「転向」説を否定する。圧巻なのは黒田俊雄の「権門体制」論を平泉からの剽窃であると主張した論説で、黒田に師事した京大出身者が師の代表的学説の道義的正当性に疑義を呈したことに驚かされた。
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日経新聞夕刊 7/25 エンジョイ読書 井上章一選