フットボール風土記

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862555748

作品紹介・あらすじ

全国に散らばる個性豊かなクラブの「Jリーグへのほそ道」を辿る。
「アマチュアサッカーの今」を克明に描写するルポルタージュ。

目次

なぜ、フットボール「風土記」なのか

第1章かくも厳しき全国リーグへの道
全国地域サッカーチャンピオンズリーグ 2016年・霜月

第2章親会社の都合に翻弄されて
三菱水島FC 2017年・睦月

第3章県1部からJリーグに「否」を叫ぶ
いわきFC 2017年・長月

第4章女川町にJFLクラブがある理由
コバルトーレ女川 2018年・睦月

第5章ワールドカップとJFLをつなぐもの
FC今治 2018年・文月~霜月

第6章世界で最も過酷なトーナメント
全国社会人サッカー選手権大会 2018年・神無月

第7章サッカーを変える、人を変える、奈良を変える
奈良クラブ 2018年・師走

第8章アマチュア最高峰であり続けるために
FCマルヤス岡崎 2019年・卯月

第9章最大の「Jリーグ空白県」でのダービーマッチ
ホンダロックSC&テゲバジャーロ宮崎 2019年・皐月

第10章なぜ「71番目のクラブ」は注目されるのか?
鈴鹿アンリミテッドFC 2019年・水無月

第11章北信越の「Fの悲劇」はなぜ回避されたのか?
福井ユナイテッドFC 2019年・文月

第12章クラブ経営の「属人化」をめぐる物語
北海道十勝スカイアース 2019年・葉月

第13章令和最初のJFL昇格を懸けた戦い
全国地域サッカーチャンピオンズリーグ 2019年・霜月

第14章蝙蝠と薔薇の街で胎動する「令和的戦略」
福山シティフットボールクラブ 2020年・文月

第15章多様性の街から「世界一のクラブ」を目指す理由
クリアソン新宿 2020年・文月~葉月

ピラミッドの中腹での15年

感想・レビュー・書評

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  • 私はサラリーマンであるが、若い頃に、所属している会社のサッカー同好会に籍を置いていたことがある。私自身は上手い選手とは言えない。というか、私ばかりではなく、籍を置いているほとんどの者が、学生時代にサッカーをやっていて、会社に入っても好きなサッカーをやりたいという気持ちで同好会に入ってきている。本気でやっている企業のサッカー部とは異なる。練習はない。その地域のサッカーリーグに加入したり、天皇杯の予選に参加したり、要するに時々試合を楽しみ、更には試合の後の飲み会を楽しむという同好会であった。我々自身は、平日は仕事と飲み会で不摂生を続けているわけで、学生時代、それなりに体育会等で頑張ってやってきた連中でも、会社に入って1年もすれば、学生時代の身体の切れはなくなる。
    日本のサッカーはJ1を頂点にしているが、実は、それは、最底辺の、我々が所属していたリーグまで繋がっている(私がやっていた頃は、今と少し構成が違うだろうが)。J1,J2,J3のプロリーグの下に、JFLという全国リーグがある。ここには、企業サッカー部がまだ存在したりしている。JFLの下は地域リーグ。九州とか四国とかの地方ごとに存在するリーグ、これがたいていの場合、2部構成になっている。JFLがJ4、地域リーグ1部がJ5、2部がJ6。その下に都道府県リーグがあり、これも2部構成のところが多い。県リーグの下には、県の地域、例えば県北とか県南とかのリーグがあり、その下に市のリーグがあり、これも大きな市だと2部とか3部構成になっている。例えば市リーグの2部にいるチームは、都道府県によって異なるが、J12とかぐらいになるのだ。我々が試合をしていたのは、そのレベルのリーグであった。
    そのレベルのリーグであったが、一応、J12であり(そんな呼び方はしないが)、11年連続で所属リーグで優勝したりすれば(もちろん、スタジアム保有等の別の条件も出てくるが)、J1入りが理屈上は可能なのである。更にはJ1で優勝し、ACLで優勝すれば、世界クラブ選手権に出場し、バルサと試合をすることも可能なのである。そういった繋がっている感は、サッカー競技の良さであったと思う(「あったと思う」と書いたのは、さすがにプレーは随分以前にやめているから)。
    本書は、JFLよりも更に下のリーグのチームに焦点を当てて書かれたものであるが、そういった、繋がっている感が、というか、実際に理屈上、Jリーグと繋がっていることが、地域のクラブチームのモチベーションになっているケースが多いことが分かる。

    本書を読んで、もう1つ考えたのは、企業スポーツがどうなっていくのかな、ということである。
    Jリーグが出来た時、多くのチームは前身の日本リーグから乗り移ったものである。フロンターレは富士通、横浜マリノスは日産、名古屋はトヨタ、ガンバはパナソニック、セレッソはヤンマー、アントラーズは住友金属、等々である。
    Jリーグは企業チームは参加できない。企業チームは、最高でもJFL、すなわち、J4までしか参加できない。JFLのHPを調べてみると、JFLのうち、企業名を名乗っているのは、HONDA, ソニー仙台、マルヤス、ホンダロックくらいである(判断できないチーム名もあった)。その他は、基本的にクラブチームである。HONDAにせよ、ソニーにせよ、そのチームでJリーグを目指す訳ではないというだけであり、プロ契約の選手はいるだろうし、Jリーグ出身の選手や、今後、Jリーグでプレーすることを目指している選手も多いはずである。要するに、サッカーという競技においては、トップクラスのチームはすべてプロのクラブチームであり、昔ながらの企業チームは、既にないということである。
    サッカー以外を見てみると、野球は12球団のプロ野球を頂点に、その下には、独立リーグがあり、また、サッカーとは異なり、社会人チーム(企業チーム)も、まだまだ多いが、最近はクラブチーム化の流れがある。バレーボールは、プロリーグがあるが、企業チームが参加している。バスケットボールはJリーグ方式のBリーグが発足。ラグビーはプロ契約選手も多いのだろうが、企業名でのリーグが行われている。
    全般的には、競技によってその程度は異なるが、プロ化の流れが基本的にどの競技でもあるのではないかと思う。ただ、プロが存在し得るかどうかは、競技によって異なるだろう。ただ、サッカーや野球等のように、プロリーグが存在し得る競技では、企業がチームを持つ意味は、ほとんどなくなりつつあるのではないかと思う。

    本書を読んで、上記のようなことを考えた。
    そういったこととは関係なく、本書は単純に読み物として面白いので、サッカー好きの方にはお薦め。

  •  Jリーグや海外クラブしか見たことない人、この本を読めば地元のフットボールクラブに興味が出ます。

     この本は、Jリーグより下のカテゴリにあるフットボールクラブを著者が取材したもの。12のクラブと、地域リーグからJFLにあがるための各大会を紹介している。クラブと土地の結びつきにフォーカスしているので、実際にその土地に行ってクラブを見に行っているような、旅行している感覚になる文章だった。

     色々な考えや目標を持ったフットボールクラブが紹介されているが、サッカーを手段にして地域を盛り上げよう、ビジネスとして成功させようというクラブに興味が沸いた。試合に勝ち、より高みにあがることだけがフットボールクラブではないことに気付かされる。

     行動範囲が狭まってしまったこのご時世、自分自身Jリーグを見に行くことはできなくなっている。でも、Jクラブがない土地にも、フットボールはある。競技レベルは全然違うが、追っかけていれば、心を動かされるレベルは一緒だ。この本を読んでから、地元で頑張っているクラブを応援しようと思った。
    遠くではなく、近くのものにピントをあわせる手助けをしてくれた本。おすすめ。

  • 1992年に10クラブで産声を上げた日本のプロサッカーリーグは2020年現在、J1からJ3までの3カテゴリーに56クラブが在籍している。この狭き門をたたかんと全国各地に次々と新たなフットボールクラブが生まれ、戦いを繰り広げている。その一方、「生涯アマチュア」を掲げ、生まれ育ったその地に根付かんとするクラブも生き続けている。そのJリーグの下部カテゴリーで戦うクラブを訪ね、全国各地に存在するフットボールを辿る著者の最新作が本書だ。

    元日本代表監督・岡田武史がオーナーに就任して「岡田メソッド」を提唱し、念願のJクラブ入りを果たした今治FCをはじめ、天皇杯でJクラブを圧倒するフィジカルを発揮して旋風を巻き起こした福島のいわきFC、被災地からJリーグを目指すコバルトーレ女川、新進気鋭の指導者や今までになかったビジネス的手法を取り入れて成長を続ける鈴鹿アンリミテッドFCや奈良クラブ、そして先日J3入りが承認されたテゲバジャーロ宮崎など、これまでのJクラブとまた違った理念や手法を掲げ、駆け足でJリーグを目指すだけでない姿があると知ることができたのは面白かった。一方で、FCマルヤス岡崎や三菱水島FC、ホンダロックSCなど、アマチュアクラブとして全国リーグを戦うクラブの矜持を知るのもまた興味深い。

    Jクラブもそうでないクラブも、全国各地に様々な想いをもって存在するクラブが数多ある。コロナ禍でサッカーのみならず世界中のスポーツがままならない状況の中、本書を通してあらためて「目の前にあるサッカー」を意識してみるのもいいかもしれない。

  • Jリーグだけがサッカーではない。色々なチームがそれぞれの目標に向かってボールを蹴る。面白いですよね。早くスタジアムに見に行きたいです。

  • 草の根フットボールの現像

    サッカー×人×地域のドラマがひしひしと伝わってくる。華やかでエキサイティングなプロだけでなく、JFLや地域リーグにも欠かせないその土地ならではのドラマがある。まさに風土記。

    ■概要
    Jリーグの理念「百年構想」が素晴らしい一方で、必ずしもJリーグの規範やルールが正しいとは限らない。独自の世界観を持ついわきや福山、新宿のようなチームがある。上のリーグを目指さない企業チームもあれば、今治の様にJリーグ昇格を目指すチームもあり。地域リーグは様々だ。
    ただ地域リーグレベルでもW杯、海外トレンドとはつながっている。また勝ち抜くのはそう簡単ではなく、何度も涙を飲んできたチームもある。
    それぞれのチームと地域、人の数のドラマを『風土記』として描いた。

    ■所感
    JFL、地域リーグの現状がたいへん分かりやすく伝わってくる。華々しいJ1と比べるとJ2/J3に行くほどより地域に根ざした地味なリーグになるが、JFL以下はアマチュアということもあり、それよりさらに小規模。
    ただ、そこにはJリーグとは違った別のドラマがある。Bリーグが閉鎖型のプレミア化、新B1を作る中で、B2以下はこの考えを取り入れても面白そう。あえて上を目指さない、でも独自みたいな。
    ランポーレが目指す姿だろうか?

  • ★★★2021年6月★★★


    地域サッカーに造詣の深い宇都宮氏の著作。

  • 783.4-U
    閲覧

  • 地域密着型スポーツクラブの美談には、お金儲けをできないと成り立たない、ビジネススキルの必要性という明確な条件がある。そこを軽視して、競技至上主義でも失敗するし、地域愛だけでも失敗する。

  • 様々な地域やカテゴリーのクラブが取り上げられていますが、企業や自治体がスポーツにお金を使う理由やケースの多様化が興味深いです。
    「競技志向」だけに等しかった日本のスポーツ界の変化の様なものも伝わり、面白いです。

  •  クラブを維持することの難しさと、それでも前向きに取り組んでいる人たちの姿。
     それでも、ホンダや水島の姿にちょっと応援したくなる。

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著者プロフィール

写真家・ノンフィクションライター。1966年生まれ。東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、テレビ制作会社勤務を経て、1997年に「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追いかける取材活動を展開。2010年『フットボールの犬 欧羅巴1999‐2009』でミズノスポーツライター賞大賞、2016年『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』でサッカー本大賞を授賞。現在、個人メディア『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信中。

「2022年 『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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