- Amazon.co.jp ・マンガ (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862638922
感想・レビュー・書評
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号泣必死の『地上で最も美しい生き物』。寓話か、もしくは昔話を聞いたような気分になる。助けられた動物が、その身を削って恩返しをしにやってくる、そんな昔話を読んでいる気分になる。美しいと形容する時、それはどんな意味を持つんだろうか。ビジュアル的に見た目の美しさを表す言葉として一番使われる言葉だと思うが、それと同じくらい、心を表す言葉でもある。でも、存在そのものを「美しい」と表現するのは難しい。寓話のような、昔話のような、とは思うが、それは私の ボキャブラリーのなさから生まれたもので、このお話は決して寓話でも昔話でもない。寓話や昔話は後世の人に読み聞かせる時に、教訓や戒めをほのめかす要素が含まれるが、このお話はそんなものでは決してない。あくまでも物語であり、2人の人間のお話だ。あの劇的な終わり方と言い…あれ以上しつこく描かない潔さと言い…ARUKUさんの物語力は小説の分量に匹敵する!!『地上で最も~』で毎度号泣してる。今でも。
『画家と音楽家』、一度でも創作者になりたいと思った人、現在それが職業として叶ってない人は読んで欲しい。短編6作品が収録されている一冊だが、こんなに価値のある紙の束はない…私には宝物だ。巻末の『地上で最も美しい生き物』を読むと、物欲では精神は満たされないと知る。『地上で最も美しい生き物』は、子供の頃に押し付けられた「この童話を読むと感動するのが正しい行いです」と言う読み方で読んではいけないんだ、と気づく作品。状況に感動しろではなく、孤独の中でも生きている人がいて、孤独の深さに気付いてくれる存在がいると言う事の奇跡に気付ける、と言う作品。
ARUKUさんはとても特別な作家さん。この人の「孤独」の描き方は、恐らく自身が味わっていて尚、それを人の性にせず生きている人のそれだ。孤独を噛みしめながら、優しい心根の持ち主であり続けられる強さに泣けてしまう。今の私にはとても難しいことだ。だから泣けてしまう。
ARUKUさんの作品は「文字起こし」出来ると思う。小説で費やされる文字量があの絵の中に含まれてる。凄いなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編集。胸キュンでかわいいBLとは違って、同じ男として生まれて真逆の境遇を生きる、容赦のない恋愛の数々が描かれています。
表題作はスランプに陥った孤独な音楽家が、困窮する売れない画家と出会って再び音楽への情熱を取り戻す話。
才能があり名声を手に入れても不幸だったギランは、ゾゾを愛したことで立ち直れたけど、ゾゾはどうなんでしょうか?
幸せとは何なのか?と考えさせられました。
ゾゾが好きな絵を描き続ける、ギランを好きでいるという幸福の代償は、貧困と苦しみと悲しみです。
ギランの想いは本物だと理解できますが、ゾゾの辛さまでは恵まれた立場の彼には伝わらなかったのかも…
とても不条理な気持ちにさせられました。
幸せに生きていくには、愛だけではダメというシビアな現実。
「何処無市ラブストーリー」は、内務省高官のツバクロと<名もなき人>である雨くんの、切なく優しい愛。
忘れてしまうからこそ忘れまいと一生懸命努力する雨くんの姿に胸が痛くなります。名もなき人でなくとも、忘れたくない大切な愛しい記憶は誰の胸にもあるものです。
「俺が覚えている限りそれは君の名前だ」と言ったツバクロの言葉に涙が止まらなくなりました。いつか雨くんがすべて忘れる時が来ても、愛し合った時間は永遠に消えることはないです。
「ここは、愛の惑星。」は、話はここから始まるのではないかとwwあれはもしかして…?
「家に帰るまでが遠足」はリーマンもの。最近のARUKU作品のテイストに近い感じです。
「地上で最も美しい生き物」は、競走馬をひたすら愛し育てる黒川と、話すことができないために誤解され蔑視されてもなお清廉に生きるコモの話。
みどりは「もし私が口がきけない生き物だったら…」と言っていましたが、そうじゃなくて黒川は口がきけない相手のこともきちんと理解できるから、コモとも心を通わせることができたのだと思います。
涙腺決壊しました。 -
すごくさびしくてつらいのに、救われた気持ちになる短編集。
弱いもの、孤独なものへの優しいまなざしと、容赦ないシビアな描き方が好き。 -
あれ?鬼畜くん・・泣いてるの?心の鬼畜くんをも泣かすARUKUさん、凄い!読んで良かった・・感謝<(_ _)>
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短篇集。やっぱり粒ぞろい。
ARUKUさんは、毎度面白い設定の切り口を持ってくる。
そしてやっぱり童話の構造っぽい。
全体的に、その後の未来が幸せじゃないかもしれない、
っていう刹那的な物がある気がする。
他の作品も読んでみたい。 -
もうダメかもしれない。
ARUKUさんの作品はとても独特な世界観が綺麗で好きだけど、切なすぎていまは読めない。
目に見えない自分の内側を信じ続ける芸術家たちの苦悩が読んでいて苦しい程伝わってくる。
描き上げられないハッピーエンドを想像する底力がないと、この作品を読むのはツラい。
物語の彼らはきっと幸せだと思うのに、そこまで描いて欲しいと願ってしまう。
なにこの片想いのような読後感… -
表題作と同時収録の2編もあわせて、とても考えさせられる作品。ARUKU先生の世界観がぎゅっとつまった深い作品ばかり。
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どの話も受が純粋過ぎてツラい。あ、攻もだな。みんな幸せになれば良いのに。
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短編集。幸福と呼べる結末なのに悲しい。心が痛くてつらいのに読むのをやめられない。 キャラクターたちの未来が気になって仕方がない、そこがこの作者の魅力かと。