夜を着こなせたなら

  • 短歌研究社 (2023年11月10日発売)
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感想 : 4
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  • 本 ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862727503

作品紹介・あらすじ

さりげない生活の風景、関係性の機微――新時代の空気をうつしとり、鮮やかなデビューとなった第一歌集『風にあたる』から4年、暮らしの手ざわりと明暗をいっそう深く、かろやかに刻む第二歌集。


【歌集より】

いちどきりピアスは耳を突き抜ける別の星から呼ばれるように

もう取っておいても仕方ないけれど総入れ替えの春の台割

頰に雨あたりはじめる風のなか生きているのに慣れるのはいつ

尾を垂らし虎はこころにあらわれるあれから痩せも太りもせずに

くるぶしを波にまかせている夢の浜はあなたと来たことがない


【多方面のクリエイターから絶賛のコメント】

大切な殺気がここにあり、美しく尖ったものに
出会うことはそうそうないことを知ることとなる。――空気公団・山崎ゆかり

目を細め遊ばせて日常をみる眼差しに、
短歌の「歌」が少しわかった気になってます。――キセル・辻村豪文

現代のこころと暮らしを千年先まで伝承する歌集です。
山階さんの才気にむせました。今日は温かくして寝こみます。――古賀及子

イメージから空間に飛ぶジャンプ力が半端じゃない。言葉が自信を湛えていて、誰もいないスタジアムにパンチラインを置いてくるJAY-Zみたいだと思った。俺もかましていくしかない。――没 AkA NGS ラッパー・プロデューサー/Dos Monos


装幀=名久井直子
装画=高山燦基

感想・レビュー・書評

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  • 装丁というか本の姿がなんだかもう綺麗すぎてしばらくカバンの中に入れて持ち歩いていた。

    第一歌集の多幸感が薄れて、もう少し冷静でかたい手触りがした。誰かとの煩雑で賑やかな暮らしでは無く、ひとりで正しく暮らしていこうとしている人の静かさや安らぎというような。

    やさしい言葉でありつつも一回で「わかった」と流せる歌はあまりないため何度か読み直しつつ読破した。とても時間がかかったけどいい本だなーと思う。

  • お洒落な装丁とタイトルに惹かれて買った歌集で、中身もすごく好きな感じで良かった。
    「頬に雨あたりはじめる風のなか生きているのに慣れるのはいつ」
    という少しきりきりした一首から始まるけれど、これは生きづらさ、というのとはちょっと違う気がする。生きているのにまだ慣れていない、まさにそんな感じで日常のふとした瞬間一つ一つに戸惑い、眺め、そこにぽこんと転がりでてきたような、みずみずしくてのんびりした短歌が多い。読んでいる私にも、日常から切り取られた瞬間がどれも見慣れない、新鮮なものに感じられてすがすがしい気持ちになる。短歌の言葉の引き算もとても鮮やかで、うまいなあと思わず唸ってしまうようなものもたくさんあった。
    好きな短歌がいっぱいだけど、特に好きなのは
    「ありとある祈りの型にすこしずつ似たあと水に流すせっけん」
    「夏に秋ふかく差し込む曇り日の川面はアルミホイルのように」
    かな。
    どこかひかりが感じられるような短歌が好き。

  • 既視感のない短歌を作れる作家だと思った。それはすごいことであるし、覚悟のいることだと思う。偶然性のなかに身を投げ出して言葉を紡ぐ作家だ。最終連でどう転ぶかわからず、そのままほんとうにつまずいて転んで膝から血を流すときもあれば、転んだと思って手をついて上を見上げたら綺麗な虹を空に見つけるようなときもあった。何はともあれ、この人に今度会うのだ。楽しみになった。

    人生の車体にかすり傷をつけきらめくばかり銀貨や銅貨

  • たった31語で、日常をこんなにも鮮やかに表せる才能にただただ脱帽です。エッセイとも小説ともちがう、制限があるからこそ生まれる豊かさ。まるで短編映画を見ているようでした。

    こころに響いた短歌に印をつけて、あとから見直してみたらほとんどが食べ物に関する歌だったのには苦笑い……

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著者プロフィール

一九九一年広島県生まれ。早稲田短歌会、未来短歌会「陸から海へ」出身。歌集は『風にあたる』(短歌研究社、二〇一九年)『夜を着こなせたなら』(短歌研究社、二〇二三年)。現在、NHK広島放送局『ひるまえ直送便』短歌コーナー選者。

「2024年 『現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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