人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
- 英治出版 (2009年8月10日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760609
感想・レビュー・書評
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支援者の役割には3種類あり、支援者は、その時々の状況に応じて、それらの役割を選択しないといけない。
1) 専門家の役割; 必要に応じて専門的な情報やスキルを提供する
2) 医師の役割; 患者の状態を診断し、診断結果に応じた処方箋をつくる
3) プロセス・コンサルタント; プロセスに着目し、プロセスに働きかけることにより、クライアントが問題を解決していくことを支援する
専門家の役割がうまく機能するのは、クライアントの側が、どのような支援が必要なのかが分かっている場合。
医師の役割がうまくいくのは、クライアント、すなわち患者が診断結果に信頼を置いている場合。
そのような場合ではなく、例えば、クライアントが、何かがうまくいっていないと感じているが、それが何か分からないし、どのように問題をクリアにしていけば良いのかも分からないようなケースに、プロセス・コンサルタントが活躍する余地がある。
少し分かりにくいが、プロセス・コンサルタントというものについての私の理解は以下の通り。
■組織や職場で起きていることのうち、見えるのは氷山の一角であり、それを起こしているもの、起きていることの原因になっていることが水面下の見えない部分にある
■水面下にも多くのものがある。例えば、構成員一人一人の考え方や、構成員の間の関係性や、無意識のうちに従っている組織の規範や組織文化。これらを総称してプロセスと呼ぶ
■水面上に出ているものは、水面下にあるものの結果であり、水面上にあるものにいくら働きかけても問題の解決にはならない。問題は水面下に、すなわち、プロセスの中にあるので、プロセスに働きかけない限り問題の解決には至らない
■逆に言えば、水面下に働きかける人をプロセス・コンサルタントと呼ぶ
これでも分かりにくいけれども、今のところの理解はこういったところ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.自分の行っていることがしっかりと人の役に立っているのかを科学的視点から分析したくなったので読みました。
2.本書は組織心理学の祖として活躍している著者が「人を助けること」についてどのような考えなのかを述べています。
人を助ける=支援というキーワードを紐解きながら、日常でのシーンを事例にして役に立っているケースと経っていないケースを比較しています。
役に立っている状態には必ず7つの原則が守られており、それを保つために4つの問いかけの順番を守っています。本書ではその原理原則とともになぜ役に立たない支援が出てしまうのかも述べています。
3.日常を振り返ると「問いかけの数」が少ないことに気づきました。ほんの少しの質問で分かった気になる。事前調査であらかた理解した気になるということが往々にしてありました。調べることは当たり前ですが、当事者に直接話を聞いて検証するという行為をしっかり踏んでいかないといけないのだと感じました。
大切なのは自分が何を話すかではなく「何を問うか」だと思いました。 -
なぜ人は人を助けたくなるのか、という心理的要因を探ってみたいと思い手にとった。
しかし、人が人を助けることは所与のこととして前提視されており、その原理についてはあまり触れられていなかった印象。
また、本書では「支援」を3つのパターンに類型化しているが、それぞれの境界が曖昧で、支援の中身がやや強引に定義されているとも感じた。
とはいえ、支援者による支援の形態として、被支援者が求めている「答え」をそのまま提供するのではなく、被支援者が自ら答えを導き出して進んでいくことを後押しする「プロセス・コンサルテーション」という考え方には深く共感した。 -
人を助ける・支援するというのは、兎角、 上下の関係に陥ってしまいやすい。
支援する対象を理解するという手順を欠いた場合、専門性や良心さらには人間関係そ のものを無碍にしてしまう可能性があると いうことがよく分かる一冊。
そうならないために、正しく寄り添うため の質問「どうしてほしいですか?」が素直 に聞けることの重要性を理解できた。 -
人を助ける、という行為は介入が伴うため、「助ける」行為を行う手前の意思表示の時点で影響を与えてしまう。
それが能動的に「教える」「助ける」姿勢になるとなおさらだ。
支援を受ける側も与える側も準備が必要であり、またクライアント(支援される側)によりそった「プロセスコンサルテーション」が有効な場面が少なからずある。
受け手がどう感じるか、というのは大切にしているつもりではいても、油断すると一方的な押し付けになりうる。この点は気をつけなければ、と感じた。 -
訳がすこし読みづらく感じたが、とても面白かった。
「支援」というものを、人を支援する側だけでなく、人に支援される側からも分析してあった。
今まで自分が受けた支援、した支援を思い返し、もっと違うやり方もあったんだなぁ、もっとこうしたらお互い気持ちいい関係のままだったのかなぁと学ぶことがとても大きかった
絶対に何度も読み返したい本。 -
印象に残った言葉
「われわれは会話をしていて、何を言うべきか、どう言うべきか、あるいはいつ言うべきか、という点で常に間違いを犯している。そうした過ちに失望するのではなく、そのおかげで学ぶ機会が得られたし、だから歓迎すべきだと認識しなければならない。」
自分の発言の過ちに後悔したり、落ち込んだりしても仕方がない。
問題なのはそれを次にどう生かすかだと思った。 -
Session7「プロセス・コンサルタントとしての人材開発部門のあり方」課題図書
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・関係の深さは、人が自らをさらけ出す中で、自分のために安心して要求できる価値の量という観点から定義されるのだ。
・より広範囲の専門知識を支援者に頼るようになると、クライアントは一層弱体化する。セールスやサービスを伴う関係では、容易に手を引くことができるため、クライアントはより高い地位にあり、権力を備えている。一方、クライアントが手ほどきを受けるような形式的な支援関係では、一層高い地位につき、権力を備えているのは支援者の方だ。
・クライアントの本当のモチベーションはなにか
・重要なのは、問題を前提とした質問で話を促さないことだ。それこそクライアントが否定従っていることかもしれないからである。質問は抽象的な内容を常に避け、抽象概念や一般的な事柄よりは、もっと詳しい例を求めよう。はじめのうちは、起きている事柄に集中すべきである。
・純粋な問いかけは、話によく耳を傾けることよりも効果的だ。
・活動的だが、控えめな質問のプロセスに取り組むことにより、支援関係における問題をはらんだダイナミクスもいくつか改善できる
クライアントに主導権を握らせ続け、自分のために問題を能動的に解決する立場を取り戻せるようにすること
ある程度まで自分のジレンマを自力で解決できるという自信を与えること
クライアントと支援者が協力できるように、なるべく多くのデータを明らかにすること
・4つのレベルの質問
純粋な問いかけークライアントの話だけに集中するもの
診断的な問いかけー感情や、原因分析、行動の代替案を引き出すもの
対決的な問いかけー現状について支援者自身の見解をもたらすもの
プロセス指向型の問いかけークライアントに支援者との即座の相互関係に専念させるもの
・議題には二種類のものー即座に注意を払わねばならない議題と、長期に渡る政策や戦略のように、もっと時間をかけてより深く議論しなければならない議題がある
・一段低い位置にクライアントが慢性的にいるなら、支援者はイニシアティブを取って支援を申し出るべきであり、絶えず頼み事を必要とするせいで、クライアントがあまり自尊心を失うことがないようにしなければならない。支援の行為に、自分の勝手でやるのだという理由付けをすることで、支援者はこの罪悪感を減らしてやれる
・支援者は自分の支援がもう必要なくなるのはいつか、助言して貰う必要がある
・フィードバックは、求められたものでない場合は有益とは言えない
・フィードバックは評価的なものより、説明的なもののほうが機能する。それによりクライアントも評価を行える
・適切な質問をすることによって支援関係を築ける
・組織であるクライアントと仕事するうえで最も難しい部分は、プロセスに関する専門的な意見や助言を与えながらも、質問者の役割にとどまり続けること
・支援しようという努力が快く受け入れられなくても、腹を立てないこと
・クライアントがあなたからの助言を執拗に求めたら、少なくとも2つの選択肢を与えなさい。そうすれば、クライアントはまだ選択しなければならないことになります
・組織行動論や支援学を学ぶ意味は、人との関係を生きる中で、心なき状態を、心ある状態に少しでも補正していく一助となることなのだ
・プロセス・コンサルテーション10の原則
絶えず人の役に立とうと心がける
今の自分が直面する現実から決して遊離しないようにする
自分の無知を実感する
あなたがどんなことを行っても、それは介入、もしくは揺さぶりになる
問題を自分の問題として用事者意識を持って受け止め、解決も自分なりの解決として編み出していくのは、あくまでクライアントだ
流れに沿って進む
タイミングがすごく大事
介入で対立が生じたときは、積極的に解決の機会と捉えよ
何もかもがデータだと心得よ。誤謬はいつも起こるし、誤謬は学習の重要な源泉だ
どうしていいかわからなくなったら問題を話し合おう
著者プロフィール
エドガー・H・シャインの作品





