これから資本主義はどう変わるのか――17人の賢人が語る新たな文明のビジョン
- 英治出版 (2010年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760760
感想・レビュー・書評
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17名の賢人から様々なアイディアが紹介されていた。要約を並べると共通点が見えてくる。
キーワードでいうと成長、起業、イノベーション、協力・支援・巻き込み、使命などが共通する。
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ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のビルゲイツは「協力とイノベーションこそが平和の道」
社会起業家フォーラムの田坂広志は「資本主義は、生命的システムへと進化する」
グラミン銀行のムハマドユヌスは「社会が社会の成長に必要な基盤を与え、貧困は博物館しか見れなくなるだろう」
持続可能な開発のための世界経済人会議のリカルダは「インクルーシブビジネスが世界を変える」
スイス歴史家のダニエレは「CSRが企業を変え、世界を変える」
シュバイスフルト財団のフランツ=テオは「エシカル消費と新しい農業が鍵になる」
国境なき起業家団のジャッキーは「法的通貨に加え、多様な目的を持った補完通貨を駆使することで社会問題が解決される」
マルワーウィツクアソシエイツのマルは「提示した20のビジネスアイディアで社会を変えられる」
ショワブ財団のミルジャムとパラグは「社会起業家が政府、企業、市民社会を巻き込んで活動することを社会全体が支援することが重要」
ヴォランズ・ベンチャーズのジョンとパメラは「社会的企業と大企業の仲介的な存在が必要だ」
ユース・スター・カンボジアのキャサリンは「地域に必要なのは若者の創造性だ」
アショカのビルは「過去の社会起業家のモデル策定をし、誰もが変革者の時代を作る」
エコーイング・グリーンのララは「1人でも戦う勇気と学ぶ力が大事」
コスモスのナンシーは「自らを変革する使命感を持った個人が人類全体を救う」
ティーカンパニエのギュンタリーは「市民起業、すべての人が人生の希望を持つことで世の中がよくなる」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと前の本ではあるが、現在進行している様々な取り組みや、社会変革の方向性について複数の有識者の意見や事例紹介がされている。直接民主制について述べられていたり、資本主義の新しい形はどうなるのかの予想がされていたりと示唆に富む。
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冒頭には、「本書は、この世界が着実に良くなっており、今後もよくなっていくだろうと信じる、世界各国の識者のメッセージを集めたものだ。」とあります。読後、やはり「あらゆる世界での大きな変革」が必要であると感じます。「社会起業家の父、ビル・ドレイトン」の章は特に興味を惹きました。
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■全体として何に関する本か
本書は、ビル・ゲイツ氏を始めとする資本主義経済界の要人や有識者など17名の著者による、これからの資本主義がどう変化していくのか予測を集めた短編集である。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏やグラミン銀行のムハマド・ユヌス氏、アメリカの「Teach for America」のウェンディ・コップ氏など経済界の大御所からスターまで様々な経済人の考えを知るのに最適な一冊である。
■何がどのように詳しく述べられているか
前半では「これまでの資本主義の発達を踏まえて、これから資本主義がどう進化していくのか」について書かれている。ムハマド・ユヌス氏のグラミン銀行の話やジャッキー・ダン氏による通貨の新しい可能性の話は大変刺激的で、読んでいて面白い。ジャッキー・ダン氏によると通貨が今後の社会において一つのレバレッジポイントになるという。ブラジルのクリチバ市というスラム街が新しい通貨制度を導入したことによって、国連から「最も環境に優しい街」に指定される程の大変貌を遂げたことや、スイスの経済情勢が高水準である背景として「WIR」というスイスフランとは別の通貨が一役買っているという事実が語られている。他にも最新の資本主義経済システムが数多く取り上げられている。
本書の後半は「変革の担い手」について書かれている。前半で紹介したような新しい経済システムを成功に導く人における共通の特徴や、変革者の育成方法などについて説明されている。
■その本は全体として真実か、どんな意義があるのか
それぞれの著者における共通の考えとして、民間セクターの役割が今後大きく変わろうとしていることが挙げられる。ある著者によれば、これまでの民間セクターの仕事は「株主のために利益を生み出すこと」「従業員のために職を提供すること」「所在国に税金を納めること」の3つであったが、これからは新たに「CSRの仕事」が重要な要素として加わるという。実例としてナイキやトリンプなど超大手企業がCSRを過少に見たため窮地に陥りかけた事例を紹介し、CSRの重要性を説いている。CSRとして社会的規範や環境保護規範を尊重することはもはや当然であり、これからの企業は自身の経営環境である社会を分析し、自ら必要な行動を起こすことが重要だという。ここ近年の社会情勢を見ても、CSRが企業の重要な仕事であることは明らかであるが、世界各地の事例を知ることでその認識は一層高まる。
■一番面白かったのはどこか、なぜ自分は面白かったのか
『世界はよくなっている』ビル・ゲイツ氏のこのメッセージが本書で最も刺激的だ。今日の世界を眺めて、病気や貧困、識字率の低さといった問題ばかり見てしまう人がいるが無理もないとゲイツ氏は言う。世界には苦しみがあまりにも多く、平和はあまりにも少ないからだ。さらにインターネットを始めとする通信技術の進歩によって、世界に存在する問題が目につきやすくなってもいる。
しかし、そのような見方をする人は、大きな流れを見逃している。実際には、何千年、何世紀、何十年、どの単位でみても、世界は少しずつ、確実に良くなっていると言う。
本書を読めば、まさにその通りだと感じるようになる。資本主義の悪いところではなく、資本主義の新たな可能性を強く感じることができる一冊である。 -
2011年19冊目。
自社本のため割愛。 -
2011/1/2セブにて読了
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初夏に長女が結婚します。 いつの間にかそんな年齢になってしまいました。そんなこんなで、最近、世代に繋がりがなければと感じ、次の世代やそのまた次の世代にどんな世の中を残すかを考えることが多くなりました。大雑把に言えば、「生まれてきてよかった」という「世の中」です。「様々な問題(貧困・教育・就業・紛争・差別などなど)」の解決には、とりあえず理想に向かって失敗を恐れずに半歩でも行動していることに意義(価値)があります。行動を伴わない他力本願の評論家的な傍観者では、何も変わらないと反省しています。