「カタリバ」という授業――社会起業家と学生が生み出す “つながりづくり”の場としくみ

著者 :
  • 英治出版
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感想 : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862760876

作品紹介・あらすじ

「何とかしなきゃ!」立ち上がった2人の女性と共感して集まった人々。教育現場に一石を投じた、ゼロ年代起業家の熱き10年ヒストリー。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生へのアンケート結果が冒頭に上げられています
    2人に1人が「自分は人並みの能力はない」
    3人に1人が「孤独を感じる」
    5人に3人が「自分はダメな人間だ」
    5人に4人が「なんだか疲れている」
    5人に3人が「自分が参加しても社会は変わらない」

    本書は、カタリバというNPOを通じてみた、日本の教育現場の現状と問題提起です。

    <目的意識のない大学の学習>
    就職活動で学生が取り組むのが自己分析。自分はどんな人間で、どんなことをやってきて、それがどんな風に将来の仕事につながっていくか、という物語を紡ぐことになる。
    だが、多くの学生にとってこれが極めて苦しいものになる。それは、「自分自身を語る材料が足りない」、「どうして、自分はこんなに何もないんだろう」
    「もっとちゃんと考えて大学を選べはよかった」、「入ってから何をするのかを考えておきたかった」

    <一方通行の講義型学習の弊害>
    ・一方通行の講義型学習が大半なので、小中学校のあいだは、自分にとっての評価基準を設定することができない
    ・帰国子女の談:日本の高校はおかしい。どうしてこんなに一方的に暗記ばかりさせるのか。どうしてこんなのおかしいって声をあげないのか。
    ・純粋に好奇心をもって学ぼうとするほど、学校の勉強には追い付かなくなっていく
    ・わからないことに興味をもってはダメということでしょうか
    ・早く大人になりたいと考えている高校生は少ない。
    ・留学していた子供たちは、日本のスクールカウンセラーがあまりにも機能していないことに驚く、つまり悩みの持っていき場がない。
    ・日本の子どもの貧困率は、13.7%。7人に1人が貧困状態にある。

    <文部省行政>
    ・「学校の勉強ができる」ということは、学校に与えらえた評価基準をクリアしていくことをひたすらやっていたこと。
    ・誰も評価基準となるモノサシを与えてくれない場所にいったとき、自分でモノサシを設定することができないということである。
    ・教員ですら、相対的にしか物事を考えられず、絶対的な価値で判断ができなくなってしまっている。
    ・教科書とは:どの教科も結局、最終的な目標は人づくりだとおもっていました。
    ・先生にとって、授業はとても大切なもの。信頼のない団体がぽっといったところで簡単に授業の時間をもらえるわけではない。信頼と実績が必要である。
    ・公立高には、教員でない外部の人材や組織に対して、自校の判断で組める予算総額は極めて少ない
    ・教育はすべて学校内で行わなくてはならないという前提が教育委員会にも、自治体にもある

    <私大の問題とひきこもり、フリータ>
    ・進学率の上昇とともに、私大は大きな問題を抱えるようになった。大学に通う目的意識の薄い学生や、志望する大学に合格できず、不本意ながら、入学してきた学生が次々に中退してしまう。
    ・大学は学生を獲得するために、広報費を拡大してきたが、入学者に中退されてしまうと、意味がなくなる。
    ・また、大学の中退者の一定数が、引きこもりになったり、フリータになったりする。
    ・大学生活の全うさせ、社会に送りだすことができれば、個々人にとって人生の充実につながるだけでなく、その後仕事について税金を納める立場になる確率も高まる。

    <教育問題>
    ・日本では、交通事故の死者より自殺者が多い状態がずっと続いている。教育問題を子供の問題として捉えていてはダメだと思うようになりました。
    ・関係構築とコミュニケーションが何よりの処方箋になる
    ・仕事がつまらないと感じたら、それを変えることができるのは自分だ。
    ・福澤諭吉の言:世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事をもつこと

    目次は、以下です。

    はじめに

    第1章 「カタリ場」という熱気
    第2章 カタリバが生まれるまで
    第3章 周りも自分も「見えない」高校生たち
    第4章 仲間が集まり、実現したカタリバ
    第5章 組織マネジメントを成長につなげる
    第6章 難題=「いかに収益を確立するか」

    おわりに

  • 『日本中の高校生が、
    今よりも少し自分に自信をもち、
    今よりも少し意思ある日常生活を送ることができて、
    今よりも少し意思ある進路選びをするようになることが、
    自立した責任のある大人が増えることにつながります。
    教育現場に対するしかけによって、1人ひとりの力と可能性を引き出すこと。これが、社会を変える効果的な方法だと私たちは考えます。』

    そのための仕掛けが、カタリバである。高校の体育館を借りて、キャストと呼ばれるボランティアの大学生達がグループごとに自分のことを語り、高校生たちの話に耳を傾け、高校生たちが自分が何をしたいか、自分にもやれることがあるんじゃないか、自分自身に向き合うキッカケ作りの機会を与える。

    親や先生、友達には言えないことを、『利害関係のない、はじめて会った、少し上の先輩』(ここでは、『ななめの関係』と呼んでいる)相手に話すことで、高校生たちの表情が変わっていく。終わったあと、こんなに自分の話を話したのははじめて、こんなに自分の話を聞いてもらったのもはじめて、自分にも何か役に立てることがあるかもしれない、明日から頑張ろうと思えた、そんな声が聞けるという。

    そして、もう一つ大切なこと。限定された価値観の中で、高校生たちは『自分にラベルを貼っている』という。いわゆるキャラ設定というもの。クラスの中で、自分はこういうキャラと決まったら、卒業までそのまま変わらないことの方が多いだろう。そうしないと空気が読めない子、になってしまうからだ。その、『ラベルを剥がすこと』も、カタリバの大学生たちの重要な役割だという。
    カタリバという場は2時間程度だけれど、その一瞬でも、ラベルを剥がしたありのままの自分を出すことが出来、受け入れてくれる人がいることで、違う自分になれる可能性が広がる。その2時間は、高校生たちにとってかけがえのない2時間になるだろう。

    だが、こういった取り組みをNPO法人で事業として成立させるのは大変な苦労があった。大人からは、考えは素晴らしいけど、これを仕事として行くのは難しいよ、と言われ、実績がないからと断られ続け、それでも何か出来る方法がないかと模索していき、少しずつ実績を作っていった。
    この本で語られているカタリバの成長物語そのものがやればできる、ということを証明してくれている。

    コロナ禍の今はカタリバのプログラムは休止しているようだが、このようなカタリバ的コミュニケーションの場は是非続けてもらいたいと思う。

    このような取組みをしている若者(カタリバの皆様)がいるということが、嬉しいし、希望が持てる。
    我が家の子どもも、まだ自分自身に向き合うことは出来ず、目標を見つけられていない様子。難しい年頃でもあるので、ヘタに口出しは出来ない。が、このような機会に出会えるよう、親としても出来ることはしたいと思う。


    はぁ…忘れないようにちゃんと本の内容と感じたことを書こうと思うと、長くなってしまう…。上手く簡潔に(そして素早く)文章が書けるようになりたいものです。

  • 現在は震災地域の子どもの学びの場やサードプレイスの提供、不登校の子どもの支援や貧困家庭へ無償でwifiとPCの貸与を通じた支援をしているNPO法人カタリバの創業時のエピソードやメイン事業である高校での「カタリ場」の授業の様子や組織構築・マネジメントについて取材したもの。創業者である女性2人の創業時の覚悟やニーズの確信が現在のカタリバの形を支えていることが伺え、圧倒される。心に火を灯すこと=動機付けさえできれば、頑張ることができる子が多いのにその機会が得られないという問題意識でその機会格差を解消している。

    福祉で近年よく使われる「居場所」と「出番」を2000年初期から教育にも持ち込み、その具体化と組織継続のための人材育成や収益化について真剣に考えているところに感銘を受ける。9月には不登校の子どもへの支援の事業に焦点を当てた書籍が出版される予定。

  • 質が良ければ売れるっていう発想に行き詰まり、
    それから具体的にどのように利益を出していくかというところが、
    リアルで面白い。
    もちろん取り組み自体が面白いのはいうまでもないが。

  • 2012年81冊目。

    自社本のため割愛。

  • 大学の図書館でたまたま見つけた一冊。
    平日は大学の授業があるのでなかなか参加できていないですが、この本を読んではやく高校生のみんなの役に立ちたいなと思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「みんなの役に立ちたい」
      偉いなぁ~頑張ってね!
      「みんなの役に立ちたい」
      偉いなぁ~頑張ってね!
      2012/09/06
  • カタリバを舞台とした社会起業家の物語。創業者や現場の熱量が、ありありと伝わってくる。カタリバの現場で語られたという以下の言葉が、胸に響く。「君たちは昨日まで、学校に対して不満だ、ここが気に入らないと思っていただろう。学校はつまらないと言い放っていただろう。でも、おそらく3年後、大学に入ってからも同じことを感じるし、言い続けているに違いない。そしてそれは、社会人になっても変わることはない。やっぱり会社に不満を言い、つまらないと言い放っている。自分が変わらない限り、それは感じ続けることなんだ。自分という人間が、変えていくことができるプレーヤーであるということを自分たちが理解しないと、いつまでもそのスタンスは変わらない。面白くしてくれる人なんて誰一人としていない。それは自分しかいない、それに早く気付くべきだ」。
    2年で実績は文化祭出店の4件のみ、同志としての学校の先生、助成金の申請書を書きながら営業電話を掛ける日々、初めてのカタリバで大失態、組織変革の失敗などを乗り越えて、少しずつ事業を形にしていく。学校や教員にとって大きな壁であった予算の壁を打破するため、マーケティングと割り切った無料実施が功を奏し、大きく前進。教育委員会や起業、大学へも働きかけながらマネタイズをしていく過程など、起業後の経過をつぶさに追体験することができる。

  • NPO法人として、自分達が考える教育に関する社会貢献のうち、収益を最大にする取り組みを模索し続けた。色々な失敗を経験したのち、高校や大学、病院など、対話を大切にしたワークショップを行い、受講者の自分自身の価値に気づかせたり、将来のビジョンを描かせたりするなど、様々な人たちの関係性の中で、お互いがWIN-WINになる活動が紹介されている。

  • カタリバの設営理念に共感する。
    ななめの関係、いいね。わたしも、高校生時代は、先生ではなく、年の近い大学生(教育実習生)に、すごく腹を割って話すことができた経験がある。

    年齢が近いからこそ伝えられることがきっとあると思う。
    カタリバ、やりたい・・・・!

    まあ、これをやらなくても良い社会が理想なんだろうけど。

  • 変えられるのは自分だけ...。我々は分かりやすいニーズに踊らされている...。

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著者プロフィール

上阪 徹(うえさか・とおる) ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍、ウェブメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人超。担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『成功者3000人の言葉』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』 (ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『1分で心が震える プロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。

「2022年 『マインド・リセット 不安・不満・不可能をプラスに変える思考習慣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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