地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト

制作 : Stewart Brand  仙名 紀 
  • 英治出版
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本棚登録 : 365
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761057

作品紹介・あらすじ

世界の動静。人類の可能性。原子力の是非、テクノロジーの進化、スラム経済の勃興、エンジニアと科学者と夢想家の役割、地球工学の公算…若き日のスティーブ・ジョブズを熱狂させた伝説の雑誌ホール・アース・カタログ発行人が描く地球の「グランドデサイン」。

感想・レビュー・書評

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  • 原子力発電肯定しているんですよ。カリフォルニア哲学。未来主義。テクノロジーへの楽観。311以前の本。でも私もこちらがわ。自分の子供が三人女の子が続いたら次は絶対男だと信じるタイプ。遺伝子組み換えは肯定したくなります。これを読んだら。

  • 「Stay hungry, Stay foolish」で有名になった本の第二彈。著者の立ち位置は地球環境の維持・人間と自然の共生であって盲目的な自然(グリーン)信仰ではない。
    一時は反原発だったと告白しているが、CO2増加による温暖化の進行という「目前に迫った人類最大の脅威」を前に原発推進を必要悪と認めており、それはFukushima以後もぶれていない("Foreign Policy")。
    目前の事件に右往左往するのではなく、100年、1000年という長期的視点が今ほど求められるときはないのだが、幼児化した日本の政治・言論・社会環境の中で日本に求めるのはもはや無理な話なのだろうか。

  • ▼内容の概略
     Whole Earth Catalogの編集長、Stewart.Brandによる著書。全世界をめぐる環境問題について書かれている。具体的な内容としては、気候変動、都市への人口集中、原発、遺伝子工学、エンジニア・科学者としてのあり方、などがある。興味深いのは作者が一貫して科学技術を推進する主張をしていることだ。原発は推進するべきだし、遺伝子組換え作物はもっと普及させるべきだといっている。もちろん単に主張するだけでなく、データに基づいた確固たる根拠があってのことである。一方的な主張をしているという点では、偏った知識が付く可能性がある点で危険ではあるが、環境問題を理解する一つの手段としては非常に有用な本である。

    ▼本を読んでの感想/学んだこと
     科学技術というと、環境問題について否定的に考えられることが多い。一番ホットな話題は原子力だろう。原子力の開発により、膨大なエネルギーを人類は得られるようになったが、その一方で広島・長崎の原発投下、チェルノブイリ・福島の原発事故など、同時に大きな被害を与えている。原子力が与えた恩恵より、それによる被害が大きく取り上げられる。遺伝子組換え食品についてもそうだろう。遺伝子組換えにより、作物は農薬を使うことなく、安定して収穫できるようになった。その一方で、生態系を破壊しうる、超雑草、超害虫の存在を示唆されたり、人体への影響をほのめかされると、それだけで遺伝子工学全体が否定されてしまうのだ。
     著者の意見で興味深いのは、そのような害を乗り越えるのも、また、科学技術であるということである。原発が危ないとなったら、それを禁止すべき、遺伝子組換えは人体に悪影響を与える可能性があるので、禁止すべき、というのが一般的な主張であるが、著者は原発が危ないなら、もっと安全な原発を設計すれば良い。遺伝子組換えが危険ならば(実際は危険なことなど無いのだが)、安全になるようさらに遺伝子を組み替えればよい。そもそもわれわれは、原発がなかった時代、遺伝子工学がなかった時代、もっというなら、産業革命が起こる前の時代、農業が始まる前の時代に戻ることはできない。人類ははるか昔から地球に何らかの影響を与えて繁栄してきたが、それをやめたからといってすぐに環境が戻るわけではない。それならば更に改良を加えて、よりよい環境にしていくべきだ。そのための手段として科学技術があるのだろう。
     この考え方には非常に共感した。工学の究極的な目標は人類が幸福に暮らせることである。 工学者、技術者を目指す人間として、 危険なこと、役に立たないことを切り捨てるのではなく、どうすれば危険でなくなるのか、役に立つのかを考えながら日々、暮らしていきたいと思う。

  • スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学におけるスピーチであまりにも有名になった言葉”Stay hungry,Stay foolish”。そのスピーチにおいてジョブズ自身が述べているように、この言葉は『Whole Earth Catalog』という伝説的な雑誌から引用したものである。最終号の裏表紙に掲載されていたそうだ。

    その『Whole Earth Catalog』を創刊した人物こそ、本書の著者スチュアート・ブランドである。カウンターカルチャーの文化を築き、スティーブ・ジョブズやエリック・シュミットを魅了し、ハッカー精神を体現した男。そんな稀代のカリスマが、地球という視点から、さまざまなテーマについて論考した一冊である。

    ◆本書の目次
    第1章 地球の趨勢
    第2章 都市型惑星
    第3章 都市の約束された未来
    第4章 新しい原子力
    第5章 緑の遺伝子
    第6章 遺伝子の夢
    第7章 夢想家、科学者、エンジニア
    第8章 すべてはガーデンの手入れしだい
    第9章 手作りの地球

    まず目につくのが大きなテーマの一つとして、原子力が取り上げられているということだ。まったく、なんというタイミングでの邦訳版発売なのだろうと思う。著者自身の原発へのスタンスは、かつては反核であったものの、現在は親核として原発を推進する立場に鞍替えをしている。本書においても、原発の未来をポジティブに論じきっている。

    原発を非難する人たちの反対理由は大きく分けると、安全性、経費、廃棄物の処理、兵器への転用という四つに集約される。これらの拒否理由に対して、著者は四つの論理で応戦している。その四つとは発電量の限界点、足跡による風景の変化、ポートフォリオ、政府のコミットメントというもの。電力供給のキャパシティ、発電所の面積については、化石燃料、水力、原子力という三つのエネルギー源における定量的な比較を行い、炭素の排出量、政府の役割という二点についても、具体的な提言がなされている。またマイクロ原子炉、核電池といった次世代型原子炉の動向なども見据えている。その是非はともかく、論考には緻密な印象を受ける。

    本書自身は、震災前に書かれているものであるが、震災後に書かれていたとしても、その言い方はともかく、主張の骨子は変わらなかったのではないだろうかと思う。それくらい、見据えている視点は俯瞰である。ただし、現実的にはローカルの視点も加味される必要があるだろう。

    一方で、本書は原子力の話題に閉じた内容のものではない。むしろ、日頃単一で語られたことの多い、「都市問題」、「原子力」、「遺伝子」、「ジオエンジニアリング」などのテーマが、地球のサステナブルという目的に向かって、一気呵成になだれ込むダイナミズムこそが、本書の最大の魅力である。

    全体を通して考えさせられるのは、カウンターカルチャーの体現者たる著者は、一体何と対峙しているのだろうかということである。答えの一つに「ポジティブ・フィードバック」という概念が挙げられるだろう。本書の説明によると、「ポジティブ・フィードバック」における「ポジティブ」とは決して良い意味で使われている訳でははなく、むしろサイバーネットの用語では「トラブル」を意味する言葉だ。出力の一部を、入力へ同相のまま戻す「積み重ねられた要因」、わかりやすく言えば「負の連鎖」のようなもの。著者が対抗している相手はそういったメカニズムに対してであり、決して「権威」や「世論」へのみ向けられているわけではない。

    その姿勢こそが、著者の論考を唯一無二のものにしている。そして、着眼はどこまでもロマンティックで、アプローチは科学的だ。その論考に魅了される所以は、そんなところにあるだろう。ちなみに、『Whole Earth Catalog』及びスチュアート・ブランド自身については、『ウェブ×ソーシャル×アメリカ』(池田純一・著、講談社現代新書)という本が詳しい。いずれにしても、『Whole Earth Catalog』をリアルタイムで体験した世代の人達のことを、うらやましく思う。

    本書のラストの一節は、「自然と人間は不可分だ。私たちは互いに、手を携えていかなければならない。」というもの。記憶に残しておきたい言葉である。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784862761057

  • 若き日のスティーブ・ジョブズが熱狂して読んだ伝説の雑誌
    ホール・アース・カタログ発行人が描く、地球の「グランドデザイン」。都市化、貧困、エネルギー、遺伝子組替、環境操作などの一筋縄ではいかない「論点」を、文化人類学に経済学や生物学、地球科学まで幅広い知見を織り込み、俯瞰的に見て歯切れよく論じる。

    第1章 地球の趨勢
    第2章 都市型惑星
    第3章 都市の約束された未来
    第4章 新しい原子力
    第5章 緑の遺伝子
    第6章 遺伝子の夢
    第7章 夢想家、科学者、エンジニア
    第8章 すべてはガーデンの手入れしだい
    第9章 手づくりの地球

  • 原発問題について考える材料を求めて手にとった。テクノロジーの進歩と環境保護は両立し得るかが個人的な感心である。それに対して筆者は、かけがえのない地球を守るという信念のもと、一貫して技術ベースによる具体的な解決案を提唱し続ける。

    印象的だったのは、原子力に関する主張。アメリカでは多額の国家予算を投じて、使用済み核燃料を山中深くに埋め立てる処理施設を建設中らしい。それに対し、
    「山を削るのに20兆円かけるくらいなら、発電所の隣に200億円で埋め立てたほうがよい。」という主張をする。(数字は例えであって正確ではない)
    つまり、世の中は絶えず変化するものであり、変化のスピードは予想をこえる。技術革新の可能性を考慮せずに、現在の価値軸で巨額の予算を投じるよりかは、少ないコストで問題を先送りし、残り予算を技術投資に回した方がいい。むしろ、それで得られる原子力のエコロジカルなメリットのほうが現実に起きている問題(地球温暖化)の解決に寄与するという意味で効用が大きい、という主張だ。

    予想が難しい将来の問題について、”今この時間を使って”定義し、解決に当たることが、どれほどのメリットがあるのか。このように、問題に優先順位をつけて解決に当たる方法はエンジニアリングの世界では常套手段であるが、それを環境問題の解決にもあてはめる観点はなるほどな、と思った。

    あとは気になった所のメモ。
    ・都市化が人口爆発を食い止める。筆者によれば都市に住むことこそ、最もエネルギー効率のよい方法らしい。単純に専有面積で割ればよい話である。都市化こそ浪費のアイコンだと感じていた自分にとっては、これも意外な話だった。
    ・緑の革命の功罪。生産量の増加←→土壌破壊
    ・世の中の遺伝子のすべて80%近くが遺伝子の配合を行っている。
    ・外来種の功罪。在来種が増える、自然環境の回復など、善の側面もあり。
    ・介護ロボットの需要増。確かに…。

  • 請求記号・ 519/Br
    資料ID・100059216

  • 都市化、エネルギー、原発、食料、人口、テクノロジー等々を網羅した1冊。
    「都市化はグリーンだ」と言う主張はおそらく正しい。インフラやエネルギー効率を考えるとそうなる。
    著者は地球温暖化或いは大幅な気候変動に警鐘を鳴らす。よって原発が現時点ではベターとなる。温暖化対策としては農業廃棄物を炭にして固定化することや、太陽光を反射する物質を成層圏に撒く(火山噴火の効果)など安上がりにできることが有るらしい。福島原発の問題は稼働停止していた原発も同じように事故を起こしたことだと思う。日本では当面天然ガスが増えるはずだが世界的には石炭発電が増える見込みが高い。CO2は置いといても煤塵、重金属、放射性物質などを撒き散らしてるし、炭鉱事故も多い。個人的には脱原発より脱石炭の優先順位が高いと思うが開発途上国のエネルギー事情からは手っ取り早いのは石炭になるだろう。
    太陽光、風力はばっさり切られている。エネルギー密度が低いと言うことは面積がいると言うこと。つまり環境負荷は大きくなる。太陽光に関してはピークカットの効果はあるのでスマートシティのモデルで実証実験を進めるのはやった方が良いでしょうね。
    「人口爆発はもうすぐ止まる。」これも可能性は高い。農村では子供は労働力なので多い方が有利、実際に子供を売る世界は今でも続いている。生活レベルが上がり都市化が進むと少子化が有利になる。先進国では格差が問題になっているが世界的にはむしろ国家間の格差は縮まっている。
    「遺伝子組み換え技術は推進すべきだ。」これもほぼ賛成、と言うかもうこの流れは止まらない。だいたいが遺伝子組み換えは自然界で普通に起こっているし人類は何千年と交配と言う名の遺伝子組み換えをやってきている。新しい技術と言うか自分が理解できない物を反射的に拒否しているだけだろう。大量に農薬を撒く方が悪いのはほぼ間違いないだろう。
    100億人が普通の生活をできるようにするには環境負荷を一定に抑えるように科学技術をベースに環境と折り合いをつけるしかないのだろう。

  • スティーヴ・ジョブズがより所とした思想家の本。
    ブランドが出した雑誌『Whole Earth Catalog』は、当時のヒッピーにとって最も重要な情報源だったそうだ。
    ジョブズの言葉によれば、「紙に書かれたgoogleアース」。

    新しいこの本には自然環境保護などの視点があるが、福島の原発事故以後にも関わらず、原発賛成の論調に変化がないのに驚いた。
    ようするに、原発にはリスクがあるが、それよりも地球温暖化防止のためには原発は必要、という見方なのらしい。

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