なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761545

感想・レビュー・書評

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  • 前々から気になってた1冊。旅行中、読もうと思い、持っていくも全然読み進められずにいてやっと読み終わることができた。

    最初の出だしの「心臓病患者がなぜ変われないのか」という問いからグッと引き込まれる内容。
    要は変わる必要性も分かっているし、変わりたいという想いもある。どうすれば変わるのかという方法も分かっている。
    なのになぜ人は変われないのかというメカニズムを解き明かしていることに本書の意義がある。

    簡略に言うと、それは人の固定観念に基づいているから。
    行動だけを変えても何も変わらない。その行動の裏にある価値観を変えないと変われない。
    それが「技術的な課題」と「適応を要する課題」の差。

    そして最も驚きだったのは、人が変わろうとする際には「変革をはばむ免疫機能」がそれを阻害するということ。
    変わりたいと思う自分が表だとすれば、裏では実は変わりたくないと自然に思っている自分がいるということ。
    要はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態。
    だから進もうと思っても進まず、人は変わらないのであるというわけ。

    正直、変革のための具体的な方法まですべて理解できたわけではない。何回か読み込む必要あり。
    でも、留学の価値の本質について確信を深められた。
    留学に行って人が変わるのは、やはり内面が変わることに関係していることは間違いない。
    そしてどうしてその内面が変わるかというと、それは自分の固定観念が明らかになるから。
    日本にいたときには気づきもしなかった固定観念があぶりだされる。
    そしてその固定観念に支配されないで、自分を支配していたものを「客体」として客観視できるようになる。
    こんなことは今明らかになったわけではないけど、学術的な側面から証明されたのは大きい。

  • 人や組織に限らず、
    問題解決など「変化」を語る前に是非読みたい本。
    個人的には星5つでもたりないと思うぐらい満足。

    人間は弱いものである。
    そして弱さゆえの無意識の思い込み(固定概念)にふりまわされる。
    その思い込みにきちんと目を向け、
    人や組織の本当の問題解決を目指す。
    それを免疫マップという表現で洗い出している。

    実際しっかり実践するのはなかなか簡単ではないだろう。
    普段意識下にもない無意識に向き合うことをやるのだから。
    だからといって諦めてはいけないのだと思う。

    我々が固定概念に囚われているということを念頭において、
    うまくいかない理由は隠れた無意識にあるかもしれないと
    「意識下におこうとする」ことから始めたいと思う。

  • 成長する為には変化が必要とされて久しいが、多くの個人や組織は変われなくてもがいている。その変化への処方箋として改善目標、阻害要因、裏の目標、強力な固定観念からなる免疫マップを提唱する。
    改善目標とは、権限委譲して重要課題に時間とエネルギーをつぎ込むなど、自分が目指すこと。阻害要因は新しいことに手を出して仕事を増やしたり、他者に仕事を頼めないなど、目指すことができない理由。裏の目標は他人に依存しない万能人間でありたい、自己犠牲の精神の持ち主でありたいなど自分の中の別な部分が望んでいる結果。強力な固定観念は、他の人に頼ったり、多くのことが実行できなければ自尊心を失うなど本人が無批判に事実と認識していること。
    このような分析やコンサルティングで改善目標へと導く多種多様な個人そして組織を描くことで、変化への考え方をとても分かり易く描いている。実際に行うのは自分の心との葛藤が大変で一人ではかなり難しそうだ。

  • 当該観点については非常に思うところがあり、手に取った本。
    知性の話に始まり、とても幅広く研究解釈されている名著
    自己変容型知性と仕事能力との相関関係性は強く共感
    深い洞察が多く盛り込まれている。
    組織と人の変革に関するバイブル的名著

    メモ
    ・自分を変えられない人は7人に6人
    ・人は何歳になっても世界を認識する方法を変えられる可能性
    ・月並みなリーダーと傑出したリーダーの違い、それはチーム全体の能力を高められるかどうか
    ・大人の知性の三段階
     環境順応型知性 周囲に合わせる、忠実、順応する
     自己主導型知性 環境を客観把握し内的判断基準に基づき、判断選択する。自身の価値観に基づく自我。
     自己変容型知性 自身の価値基準の限界を検討できる。システム秩序の不完全性を理解。矛盾や反対を受け入れられる。複数システムの保持を考えられる。矛盾を統合しつつ自我を形成する

    ・変革を実現できないのは二つの相反する目標の両方を本気で達成したいから。人間は矛盾が服を着て歩いているようなもの
    強力な阻害行動の裏の目標を明らかにする必要がある
    ・問題は同じでも本当の動機は人それぞれ

    ・裏の目標に加え、強力な固定観念の存在
     この真偽を試す行動をとれれば、固定観念修正の道が大きく開ける

    ・権限移譲できない人の例
      裏の目標 他人に依存せず万能でありたい、自己犠牲の持ち主でありたい、問題の解決策を見出したい
      固定観念 頼って上手くできなければ自尊心を失う、自分を最優先させると薄っぺらで自分が嫌いなタイプに、課題できないと価値がなくなってしまう 給料泥棒になりたくない

    ・変わるために必要な三つの要素
      心の底 変革を起こすやる気の源
      頭脳とハート 思考と感情の両方に働きかける
      手 思考と行動を同時に変える

    ・自己変革成功者の共通要因
      思考様式と行動の両方を変えることに成功
      思考と感情を鋭く観察し、結果を情報として活用したこと
      明確な意図を持って行動し、データに基づいた基本認識をつくり新たな力と評価基準を獲得したこと
    ・免疫マップ
     一枠 改善目標
      自分にとって重要なものであること
      周りの誰かにとっても重要であること
      目標達成のために自分自身の努力が必要だと認識できていること
     二枠 阻害行動
      目標達成の足を引っ張るもの
      要素多く、率直なほど免疫マップの診断効果高まる
     三枠 裏の目標
      二枠の反対行動を取った際の不安を考える。  
      不愉快な感情が生まれないか?感情を引っ張り出す。不安ボックスに書き込んでみる
      第一枠と衝突する裏の目標の候補を明らかにする
      自己防衛という目的との関わりが明確なものであるはず。裏の目標達成のために阻害行動が重要な役割を果たしているもの。
     四枠 強力な固定観念
      裏の目標の根底にありそうな固定観念。
      事実だと確信しているもの
      裏の目標の少なくとも一つを必然的な生み出すもの

    ・序盤 舞台を作る
      免疫マップを練り上げる
      事前調査を行う 周りに意見を聞く
     中盤 掘り下げる
      目標への道のりを作成する  
      自己観察をおこなう いつ固定観念は猛威をふるうか。覆す機会はないか
      固定観念の履歴書をつくる、検証する
     終盤 学習の成果を定着させる
      事後調査をおこなう まわりにきく
      落とし穴と脱出ルートを発見する

    ・発達思考の姿勢
     大人になっても成長できるという前提にたつ
     組織学習を業務と完全に切り離したものとしない
     自分を成長させる良い問題に取り組んでいるか
     感情が重要な役割になっていることを理解する
     考え方と行動のどちらも変えるべきと理解する
     メンバーにとって安全な場を用意する

  • 読み込むのは少し難しいですが、原理も分かりやすく、事例も多く、とても実用的な内容です。私はこれをベースに約200人に対して1on1コーチングを実践しました。今も進行中です。1人で考えても不安を避けようとするので、深い固定観念に到達するにはコーチの伴走が必要です。アレンジも必要ですが、とても効果を感じています。この本に感謝してます。A4サイズで履歴を残せるあたりも企業向けとしてもちょうどよいです。

  • 自分がどんなレンズを通して物事を見ているか、を客観視することで知性は向上する。
    私が心掛けている、感情で話すのではなく感情を話す、に通ずるものがある。

    知性の段階は3段階あるらしい。私が意識してるのは自己変容だが、対立を恐れるあまり環境順応に伏してる気もする。あまり自分の知の段階を理解できてないなー。

    人が変わらないのは、変わりたい欲求と変わりたくない欲求が無意識でぶつかってるから。変わりたくない欲求を顕在化させることで、表面的で単発的な打ち手に止まらず、行動と思考を一緒に変容していく方法論はすごく良いと思う。大学生ぐらいに自分なりの同じようなアプローチを理解していたが、自己認識が苦手で全然手をつけてなかった部分。

    免疫マップはさっそく自分で試してみた。が、改善目標からすでにあやふやで覚束ない(笑)
    とりあえず、SPIとストレングスファインダーも並行してやって自己認識を高めつつ、改善目標は周りからヘルプをもらって作り上げていこう。

    最後に、自己変革やチーム変革は、自分の免疫を作り変える作業なのでプロセスは辛いものだ。その中でも自分の成長や縛られている固定観念から解放されることを喜びと感じられる自分がいそうなら完走できる可能性が高いと思うので、ぜひやってみる価値はある。
    そうじゃない人も、自分が本当に変わりたいのか自問するために取り組んでみると良い。あまりベネフィットを感じれず完走できなくてもよいと思う。それも一つ自己認識の結果なのだから。

  • 印象に残ったところ。

    ハイフェッツは人が直面する課題を「技術的な課題」と「適応を要する課題」に分類する。盲腸の手術や、旅客機を無事着陸させるのは「技術的な課題」。
    その種の活動で得られる知識と技能は、言ってみれば、コンピュータに取り込む新しい文書やプログラムのようなものだ。そういう知識と技能にも、それなりに価値はある。しかし新しい文書やプログラムをどこまで活用できるかは、コンピュータのOSで決まる。
    本当の能力開発(成長)を成し遂げるためには、単に知識や行動パターンのレパートリーを増やすだけでなく、OSそのものを進化させなくてはならない。

    今日と明日の世界で直面する課題の多くは既存の思考様式のままで新しい技術をいくらか身につけるだけでは対応できない。この種の課題に対応するためには、知性のレベルを高めることによって、思考様式を変容させなければならない

    つぼみがいずれ綺麗な花になり、イモムシがやがて美しいチョウになってはばたくと知っていたら、
    目の前のつぼみやイモムシにいらだちを感じることはない。

    メンバーの知性の発達を促すために、リーダーが取るべき大切な行動がある。
    つぼみを力ずくで開花させたり、イモムシを特訓してすぐに空を飛ばせたりすることはできないが、
    チューリップを豊かな土壌に植え、イモムシにみずみずしい葉っぱを与えることはできる。

    支援と試練
    「他人に弱みを見せるのは、相手に銃弾を与えるようなもの。みんなの関係が良好なうちは問題ないかもしれない。でも、誰かがその弾を銃に装填して、背後から撃たない保証はありません」
    (さわ)

  • 目から鱗の一冊。早速ノウハウが指導に活かされました。

  • 「学習する組織」に続けて読むべき本。免疫機能という表現を使っているが、なぜ変われないかを良くえぐっていると思う。ここに書かれていることは理解できるが、実践するのは相当の覚悟と努力が必要。

  • べらぼうに面白い!心が湧き立つネ!
    通常の読書とは別に,教科書として,読み直しながら実践してみようと思う…いや,実践する!

著者プロフィール

ハーバード大学教育学大学院教授(成人学習・職業発達論)。30 年あまりの研究・執筆活動を通じて、人が成人以降も心理面で成長し続けることは可能であり、現代社会のニーズにこたえるためにもそれが不可欠であるという認識を広めてきた。授与された名誉学位や賞は多数。

「2013年 『なぜ人と組織は変われないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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