私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む

  • 英治出版 (2017年9月6日発売)
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  • 本 ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762467

作品紹介・あらすじ

子どもの貧困は、一生の財産になる「非認知能力」を獲得する機会を奪い取ってしまう。
ではどうしたら良いのか。その答えへの扉が、本書の中にある。
――駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事、「日本語版まえがき」より)

「やり抜く力」「好奇心」「自制心」……人生の成功を左右する力の育み方を、
最新の科学的根拠(ルビ:エビデンス)と先進事例から解き明かす!



近年、世界の教育者から「非認知能力の育成」に大きな注目が集まっています。

ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、
貧困や虐待など逆境にある子どものなかでも、IQや読み書きのような「認知能力」ではなく、
やり抜く力・好奇心・自制心のような「非認知能力」がある子どもの方が
将来挫折することなく成功する可能性が高いことを発見し、大きな話題となりました。

本書の著者ポール・タフは、ヘックマンの研究をはじめ、
世界中の研究者によるさまざまな科学的知見と先進事例を統合し、
特に貧困家庭に育つ子どもにとって、非認知能力の育成が
「その後の人生」に大きな影響力をもつことを前著『成功する子 失敗する子』で提示し、
全米ベストセラーとなりました。

一方で、非認知能力の重要性は理解されたものの
「どうすれば非認知能力を伸ばせるのか」という
具体的な方法論は課題として残されていました。

本書は、まさにその疑問に答えようとすべく、
2年にわたって新しい研究や事例を取材して結実した意欲作です。

・幼少期の親子関係のストレスをどうすれば和らげることができるのか?
・問題行動のある子どもがいるクラスの成績を上げるにはどうすればいいのか?
・自信のない生徒のモチベーションを高めるには、どんなフィードバックが有効なのか?

幼少時代から思春期まで、「子どもにとって本当に大切なこと」が詰まっています。

日本でも、「6人に1人の子どもが貧困状態にある」と言われるようになり、
「子どもの貧困問題」「教育格差」は切実な課題となっています。
子どもの教育、貧困問題に関心あるすべての親・教育関係者にとって
示唆に富んだ一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもの学力の差に、貧富の差が関わってくることを金銭的な問題だけではなく、非認知能力が大きく関わっていると説いているもので、とっても良かったです☺︎
    序盤のネグレクトされている子のエピソードには、私も思わず目をギュッとつぶってしまうくらいにショックな内容でした。
    家があり、面倒を見てくれる親がいることは本当に幸せで恵まれていることなんですね。
    東大などの頭がいいと言われる大学に進学でき、無事にいい企業に就職できたりするのは、その個人の力“だけではなくて”
    幼少期〜の環境がすごく恵まれていたのだということを、心から感謝すべきだと思いました。
    家庭環境が子どもにとって、どんなに大切なのかということがとてもよくわかる本です。

    最後のページに、子どもたちへどういう意識を持って行動してほしいか、筆者の想いがありますが、私も心を打たれました。

  • 前提として、自分の子育てというより、社会の中で質の高い教育にアクセスしづらい子どもたちに対して、大人は何をすべきかということを説いた一冊。

    非認知能力=《粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観主義といった気質》は、子供をとりまく環境の産物だ。

    そして一番の問題となる環境要因は人間関係、とくに子どもたちがストレスを受けているときにどう対応するかであり、人生の最初の3年間の環境がとりわけ大切とされる。

    『学習のための積み木』という概念も興味深く、非認知能力は、土台となる自己認識能力や人間関係をつくる能力がないと育たないというものだった。

    そして本書の一番の学びは、小学校入学くらいの年からは、非認知能力の育成において内発的動機付け(内面的な楽しみや意義を動機として決断をくだすこと)が鍵を握るというもの。
    そのために必要な要素は以下の三つとなる。
    有能感→自分の限界を少し越えた成功体験
    自律性→自分が選び、自分の意思で取り組む
    関係性→好感をもたれ、価値を認められ、尊重されていると感じる

    こうした、人間関係という環境の枠組みのなかで人間の内面を育てることで、学習を中心とした様々なことに向かっていける。
    当たり前といっては当たり前ととられるのかもしれないが、こうしたことを体系的に実証している点が素晴らしい一冊だったと思う。

  • お金がない、時間がない、自信がない。言い訳ばかりで一歩踏み出せない。そんな人多いですよね。
    親ガチャで子供は生まれる環境を選べないけれども、なんとか学ぶ楽しさをわかってほしい。大人のちょっとした働きかけで、世の中もっとよくなっていくのだろうと思う♡

  • 貧困により教育格差が開いている。けど、6歳以下の子どもをもつ低所得家庭に、しっかり介入して非認知教育すれば、効果的な対処法になる、ということが、ざっくり書いてました。

    とても参考になったのは、モチベーションの話。貧困関係なく、また、子どもと大人関係なく、モチベーションを高める施策は、見返りを顧みない生産性向上が期待でき、そして、自分も他人も幸せにできる、という気がした。
    お金でのモチベーションはダメやね。

    そして、こういう施策が最も効果的なのが、低所得者層で、社会的コストと換算して、持続的な施策を実施できたらいいな〜。換算難しそうやし、まだまだ研究段階なんやろうけど、こういうのは民間から小さく実績つまないと!

  • いわゆる学力ではなく、数年前にグッと流行ったやり抜く力(グリッド)や自制心、誠実さの方が学校を卒業した後の人生に大きく影響を与える、という視座の元に整理されていく「非認知スキル」。

    「非認知スキルが大切なのはわかりました、ではどうすればいいんですか?」という質問が必ず浮上してくると筆者も述べているが、そこだけをサクッと知りたいという方にはおススメできない一冊と言わなければいけないかもしれません。

    ただ、そもそもそういうテクニック的な介入で非認知スキルを上げようというアイデアはどうなんだ?という観点をお持ちの方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。

    どうやって非認知スキルを計測するのか、どのような習慣、そして環境が非認知スキルに影響を与えているのか、ということを様々な事例を通して解説し、さらにアメリカでどのような取り組みが行われているのかを詳説しています。

    途中少々事例連発で中だるみするような印象もありますが、学びの多い本です。

    みなさんの「やり抜く力」を使って読み切ってみてください。

    分量自体はそんなに多くないので構えずともさらっと読めると思います。

  • 最近よく言われてる、子供の環境、関わる大人の話だけど根拠がはっきりしていて、だから必要というのに説得力があった。
    翻訳だけどスラスラ読める。

    多くの人に読んでもらって、幸せな子どもが増えてほしいと思ったし、社会がもっと教育に対していい意味で関心をもってほしいと思った。
    昨今の教育現場批判だけではなく、社会政策としてもっと注目してもらいたい話。(だけど教育にお金、人をかけられない日本では夢のような話なのかな…)

  • 生まれにより逆境にある子どもの非認知能力を上げるにはどうしたらいいかについて、様々な研究レポートを取り上げながら書かれている。
    自身の子育ての参考としたく読了したが、我が子はここで扱う逆境にある子ではないので本書で扱う学術レポートによる効果の裏付けはあまりなさそうだった。
    ただ非認知能力とは何か、環境の大切さ、モチベーションの上げ方等学びは多いので読んで損は無い本だと感じた。

  • 意外とさらっと読めたけど、凄く目新しい所見は得られず。正しい愛情や、子どもにちゃんと向き合って構ってあげることは、親はもちろん、教師や周りの大人にとって、とても大切な役割なのだと改めて認識させられた。あえて知見を得たといえば、そういうことが落ち着いた行動だけでなく、成績や将来の所得にもかかわるくらい影響あるということかな。ご褒美賞金で成績や読書は伸びないとか。

  • 私たちに何ができるのかという点では、正直具体的ではないと思う。しかし、格差社会の中で恵まれていない層にいる子どもたちを、その属性だからと諦める必要はなく、そういう目線で見て期待を持たないことこそが、子どもたちのその後の人生に影響を与えているようだということが分かった。温かいまなざしや励ましが、ここにいて良いんだという安心感や役に立っているという気持ちが、子どもを貧困や犯罪から遠ざける。できることなら政策に対して提言していければよい。仕事を通して子どもと接するのであれば、子どもへの信頼、期待を持って接すればよい。親という立場なのであれば、わが子に目線を合わせ、対話したり遊びを通して関わる時間を心がければよい。
    本書の中で、日本の算数・数学教育が良い学習指導方法としてアメリカで紹介されていることに驚いた。日本においても学習指導方法やその評価は変わってきているが、対話的な学び、問題解決的な学び、協働学習などが有効であることも本書からわかり、大人として自分が受けてきた教育と今後求められるものの違いを認識して、ファシリテーション力も磨いていきたいと思った。

  • まず自分の子供からだけど、改めて彼らの内発的動機づけにつながるような外発的動機付けができているのか、その下地として自律性、有能感、関係性が育まれているのかって常に意識しないとだわ。そして、子供を産んでから、自分の子供が幸せであるには、世界中の子供が幸せである必要があるなぁと折に触れて感じることが多い。自分が社会に何ができるかも、考えていくステージに入ったんだなぁ。

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著者プロフィール

著述家。貧困と教育の関係に関わる著作多数。邦訳書に『成功する子 失敗する子』(2013)『私たちは子どもに何ができるのか』(2017、共に英治出版)『ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦』(2020、みすず書房)がある。『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ハーパーズ・マガジン』のエディターのかたわら、『ニューヨーカー』『アトランティック』『エスクァイア』などに寄稿。

「2020年 『ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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