ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

制作 : 北村英哉 
  • 英治出版
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762870

作品紹介・あらすじ

女性は数学が苦手、男性はケア職に向いていない、白人は差別に鈍感、年寄は記憶力が悪い
「できない」と言われると、人は本当にできなくなってしまう。

社会の刷り込みと人のパフォーマンスの関係を紐解いた「ステレオタイプ脅威」という現象。
社会心理学者が、そのメカニズムと対処法を解明する。

【ステレオタイプ脅威とは】
周囲からステレオタイプに基づく目で見られることを怖れ、その怖れに気をとられるうちに、実際にパフォーマンスが低下し、
怖れていた通りのステレオタイプをむしろ確証してしまうという現象。

●直接差別的な扱いを受けたり、偏見の目を向けられたりしていなくても、社会にステレオタイプが存在するだけで、人は影響を受けてしまう。
●努力をすればするほど、その影響は大きくなる。
●自力で抜け出すのは難しいが、ちょっとした声がけや環境設定で無効化することができる。

(日本語版序文より一部抜粋)
「ステレオタイプ脅威」自体は、対人関係の問題を研究する学問である社会心理学の世界では有名なモデルである。しかし、実社会ではまだよく認識されていないように感じる。その理由の一つは、ステレオタイプが、「差別」と「偏見」と混同されやすいことにあるだろう。ステレオタイプは、あるカテゴリーの人にどういった「イメージ」があるかという認識面(認知という)に焦点をあてた概念で、社会心理学のなかでも「社会的認知」と呼ばれる研究領域で扱われる。これに対して偏見は、ネガティブな他者へのイメージに対する拒否的、嫌悪的、敵意的感情であり、この感情に基づいた行動が差別である。簡単に言えば、ステレオタイプは認知、偏見は感情、差別は行動ということになる。たとえば、社会全体にある「女性はリーダーシップ力が欠ける」というイメージはステレオタイプ。このイメージをもとに女性のリーダーや上司に不満を感じやすくなるのが偏見。差別は「だから登用しない」といったように、個々人の能力の査定に基づくのでなく、女性だからというステレオタイプで実質的な被害を他者に与えてしまうことである。さて、多くの研究や社会での施策では、実際に人々がいかに偏見を持つか、差別的な行動をとるかということを扱う。近年は、自分が自覚していなくても偏見を表明してしまう、無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)という概念も注目されている。現実にまだまだこうした無意識のゆがみがあることで、その対象とされる人々は窮屈に感じる。たとえば、男性社員には決して言わないのに、女性社員にだけには「早く帰らないと子どもが大丈夫?」と言うのも、「子どもは女性が育てるもの」という無意識のバイアスのあらわれと言えるだろう。逆に、女性の方が多い保育や看護の職場では、男性が無意識のバイアスにさらされていることもある。しかし、この書籍のテーマは「どんな偏見の目を向けられるのか」「実際にどう差別されているか」ではない。周りからの偏見や差別がなかったとしても、「本人が周りからどう思われるかを怖れる」だけで、ステレオタイプ脅威の影響は出てしまうのである。

感想・レビュー・書評

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  • 自分自身のアイデンティティとは?

    ステレオタイプ(先入観、思い込み、固定観念、偏見など)が、人の心理やパフォーマンスにどのような影響を与えるかを社会心理学によって検証した一冊。

    たとえば、才能が無いのだから、人の何倍も努力しなければいけないという考え方。ともすれば「やればできるはず」の根拠の無い根性論にも行き着いてしまう。本書ではこれもステレオタイプのひとつで、"過剰な努力"と表現している。

    「自分はXXXだから」と、ひとりで結論づけて自身の可能性にブレーキを踏んだり、うまく行かない理由をステレオタイプと都合良く結びつけて、チャレンジすることを諦めていないだろうか。自分自身にそう問いかけずにはいられなかった。

    また、たびたび登場するアイデンティティという単語が強く心に残った。自分とは何者だろうか?存在が、所属
    を生み、ステレオタイプへと繋がっていく。

    良書だと思うが、気になった点も2点挙げさせていただく。

    1. 著者自身が黒人で、人種差別がアメリカで根深い社会問題であることは理解できるが、テーマであるステレオタイプへの考察が、人種問題からのアプローチに少々偏り気味なことは少し残念だった。

    2. 帯で謳っている「男性はケア職に向いていない」「年寄は記憶力が悪い」は、本書では検証されていない。またカバーが白人の若い男女なのは、恐らくマーケティングの要素もあるのだろうが、ミスリードされて手にする読者もいるはず。

    #StayHome

  • 読了

  • 女性は数学が苦手、男性はケア職に向いていない、白人は差別に鈍感、年寄は記憶力が悪い…
    「できない」と言われると、人は本当にできなくなってしまう
    社会心理学者が解明した、そのメカニズムと対処法。

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著者プロフィール

社会心理学者。「ステレオタイプ脅威」と「自己肯定化理論」の研究で知られる。多数の論文を執筆しており、米国科学アカデミー、米国教育アカデミー、アメリカ哲学協会、アメリカ芸術科学アカデミーのメンバー。カリフォルニア大学バークレー校の副学長、コロンビア大学の副学長を経て、現在はスタンフォード大学で心理学教授を務めている。

「2020年 『ステレオタイプの科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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