ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか

制作 : 北村英哉 
  • 英治出版
3.97
  • (22)
  • (29)
  • (15)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 508
感想 : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762870

作品紹介・あらすじ

女性は数学が苦手、男性はケア職に向いていない、白人は差別に鈍感、年寄は記憶力が悪い
「できない」と言われると、人は本当にできなくなってしまう。

社会の刷り込みと人のパフォーマンスの関係を紐解いた「ステレオタイプ脅威」という現象。
社会心理学者が、そのメカニズムと対処法を解明する。

【ステレオタイプ脅威とは】
周囲からステレオタイプに基づく目で見られることを怖れ、その怖れに気をとられるうちに、実際にパフォーマンスが低下し、
怖れていた通りのステレオタイプをむしろ確証してしまうという現象。

●直接差別的な扱いを受けたり、偏見の目を向けられたりしていなくても、社会にステレオタイプが存在するだけで、人は影響を受けてしまう。
●努力をすればするほど、その影響は大きくなる。
●自力で抜け出すのは難しいが、ちょっとした声がけや環境設定で無効化することができる。

(日本語版序文より一部抜粋)
「ステレオタイプ脅威」自体は、対人関係の問題を研究する学問である社会心理学の世界では有名なモデルである。しかし、実社会ではまだよく認識されていないように感じる。その理由の一つは、ステレオタイプが、「差別」と「偏見」と混同されやすいことにあるだろう。ステレオタイプは、あるカテゴリーの人にどういった「イメージ」があるかという認識面(認知という)に焦点をあてた概念で、社会心理学のなかでも「社会的認知」と呼ばれる研究領域で扱われる。これに対して偏見は、ネガティブな他者へのイメージに対する拒否的、嫌悪的、敵意的感情であり、この感情に基づいた行動が差別である。簡単に言えば、ステレオタイプは認知、偏見は感情、差別は行動ということになる。たとえば、社会全体にある「女性はリーダーシップ力が欠ける」というイメージはステレオタイプ。このイメージをもとに女性のリーダーや上司に不満を感じやすくなるのが偏見。差別は「だから登用しない」といったように、個々人の能力の査定に基づくのでなく、女性だからというステレオタイプで実質的な被害を他者に与えてしまうことである。さて、多くの研究や社会での施策では、実際に人々がいかに偏見を持つか、差別的な行動をとるかということを扱う。近年は、自分が自覚していなくても偏見を表明してしまう、無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)という概念も注目されている。現実にまだまだこうした無意識のゆがみがあることで、その対象とされる人々は窮屈に感じる。たとえば、男性社員には決して言わないのに、女性社員にだけには「早く帰らないと子どもが大丈夫?」と言うのも、「子どもは女性が育てるもの」という無意識のバイアスのあらわれと言えるだろう。逆に、女性の方が多い保育や看護の職場では、男性が無意識のバイアスにさらされていることもある。しかし、この書籍のテーマは「どんな偏見の目を向けられるのか」「実際にどう差別されているか」ではない。周りからの偏見や差別がなかったとしても、「本人が周りからどう思われるかを怖れる」だけで、ステレオタイプ脅威の影響は出てしまうのである。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人をある種のカテゴリーで見る「固定観念」のことを「ステレオタイプ」というのですね。
    例えば次のようなもので、発言する者にとって都合がいい「偏見」要素を含むものが根強く生き残っているように思います。

    黒人はさほど知的ではない。
    白人は運動神経がにぶい。
    女性は理数系に弱い。
    女性の方が保育士や看護師に向いている。
    理系の人は空気が読めない。
    女性はリーダーシップ力が欠ける。
    子どもは女性が育てるもの。
    男子は運動能力が高いはずだ。
    太った人は自制心に欠ける。
    慢性疾患者は生活がだらしない。
    高齢者は記憶力が悪い。

    これらの「ステレオタイプ」は当てはまった時に声を大きくして言われます。
    当てはまらない時は何も言われないので、正しいような感覚が埋め込まれてしまいます。
    実際にそう言われることで、そのような傾向に振れるということが確かめられているようです。
    こうした「ステレオタイプ」の脅威は強力でしぶといため、我々の人生にひつこくつきまとっているのは実感できます。

    近年は多様性とか個性という理解を深めようという機運が高まっていますが、社会的に刷り込まれた意識を変えるのは簡単ではありません。
    日本では特に男女が必要以上に区別されやすい風潮はなかなか解決されないと思っています。
    女子アナウンサー、女医、女子大生、女社長、肉食女子のような○○女子、歴女のような〇女、など。
    「女のくせに」という偏見が(無意識に)あってこその表現だと感じます。

    本書は、著者が黒人であるが故に白人とは差別された多くの経験をしてきたことが基になって書かれているようです。
    ほぼ全編アメリカにおける黒人や人種に関する差別の問題と、それを解決する方法について語られています。

    原書の copyright は 2010年なので、アメリカで初めて黒人の大統領となったオバマになって1年後に出版された本です。
    著者は黒人差別の「ステレオタイプ」解消に追い風が吹いてきたと感じていたにちがいありません。
    しかし、それから7年後に、はっきりと「偏見」を口にするトランプが支持されました。
    こんなアメリカ社会をどのように見ているのか気になるところです。

  • 人種に対する偏見と差別。この本はアメリカ在住の、主に白人及び黒人学生が被験者となり、ある一定の条件下でそれら学生が個々の能力が人種、性別等の違いが関係なく発揮出来るか等の実験がされ、その結果が書かれております。数学や陸上競技、バスケットボール、音楽について、人が持つステレオタイプとそれに苦しむ各人種の人々。一方、黒人差別を是正する為に白人及び黄色人種に対する理不尽である意味差別的な措置。トランプ大統領が誕生した社会的背景についても書かれておりますので、気になる方は是非読んでみて下さい。一方、黄色人種(アジア人)についての記載は殆どありませんので、別の本を探して読んだ方が良いと思います。

  • 他者からどのように見られているか?を意識させられることで、それが事実かどうかは関係なく、パフォーマンスに影響してしまうという現象があるのだという。困ったことに、実力があるはずの人ほど悪影響が出やすいとも。
    そんなに人が皆、一律にプレッシャーに負けるものなのかとも思うのだが、これは心理実験の結果なので、プレッシャーに負ける人の方が多い傾向にあるということなのだろう。
    プレッシャーからの脱し方として示されているのが、ひとつにはクリティカルマスを越えること。クリティカルマスは、当事者が感じる多寡なので、何割を超えたら良いと一概に言えないのがミソだ。
    もうひとつはナラティブ。ステレオタイプを超えるストーリーを自分の中に持つことで、プレッシャーを跳ね除けることができるらしい。
    こうしてみるとステレオタイプを超えるには、ロールモデルの存在は一挙両得で理にかなっているようだ。

  • この手の本を2冊購入した。
    アンコンシャスバイアス、無意識の認識。
    思い込みが強い人とどう付き合うか?
    2冊の著者は、社会心理学の研究者で、2人とも黒人。
    彼らは生まれた時から不躾な視線を向けられ、自分の中でどう折り合いをつけているのか。

  • 意識的、無意識的に自分に当てはめられていると感じているステレオタイプによってどれだけパフォーマンスが下がるか、またそれを取り除くにはということを実験を通じて論じている。

    自分の体験的に腑に落ちる点が多くなるほどーってなりつつも、10年前の本ということが気になった。

    で、調べてみたら最近のブログエントリで再現性問題等について書かれたまとめを見かけた。

    ・『ステレオタイプの科学』と再現性問題
    https://note.com/yfunako/n/n18faa8c5a928

    ↑にまとめられているのもなるほどーとはなりつつも引用 tweet で紹介されてる "Science Fiction" は読めてないのもあって参考にはなったけど保留という感じ。とはいえ、10年で研究が何らかの方向に進んでいるのが見えたのはよかった。

    英語の本読んでる時間あんまないので、 "Science Fiction" が邦訳されたら読んでみたい。

  • 実際に差別されなくても、そういった恐れを想定することによりパフォーマンスが落ちてしまう、そのメカニズムがよく分かった。

    「安全を確実に示唆するサインがあれば、多くの場合、ステレオタイプ脅威を示唆するサインの威力は抑えられたのだ」

    引き算じゃなくて、足し算…!
    他者と関わって生きている以上、不便さを0にするのは難しい。
    それでも、安全や信頼を自分で見出したり周囲から与えてもらったりできれば、能力を十分に発揮して、納得のいく働きができるようになる。
    実践しやすそう。参考になる。
    苦戦して当然。いい学習の機会になるから、過度に恐れることはない。って助言も、その言葉を読んだだけで肩の荷が軽くなったような気がした。
    自分は誰かを指導したりマネジメントしたりする立場ではないけれど、セルフケアだったり、これからのために覚えておきたい。

  • ステレオタイプが、無意識下にまで
    いかに影響しているか解き明かす本。
    黒人は知的ではない、女性は理数系が弱いなどの
    ステレオタイプが、余計なプレッシャーとなり
    実力を発揮できないようにさせる。

    環境によって脅威を取り除くなど、
    対策編もとりあげている。

    タイトルは原著の
    「口笛でビバルディ」のほうが、
    中味に合っている気がした

  • ステレオタイプ脅威という社会からの刷り込みは誰もが影響を受けている

    人は集団に属することによって安心を得ているので影響は必ず受ける

    自分のような大人の男が車社会の田舎の昼間に出かけていると気まずい気持ちになるのはステレオタイプ脅威かな笑

  • ステレオタイプ脅威=ステレオタイプを追認することを恐れ本来の実力を出せなくなること、が本書のテーマ。
    数学のテストを受ける女子学生、
    知能テストを受ける黒人、
    スポーツテストを受ける白人など
    「元々そういうのが苦手な人たち」というわけではなく
    心理的なプレッシャーが実際の生理学的な影響を与え、パフォーマンスを下げることにつながっている。難しい証明だがいろいろな角度から研究を進め、対応策も見出し始めている。これまでステレオタイプ脅威のせいで埋もれてきた才能を考えると慚愧に堪えない。
    日本発売は2020年だが、米国で発売したのは2010年というのも驚き。

  • 「ステレオタイプ脅威」という概念を知れたのが収穫。

    いままでの人生の中でこれが原因でパフォーマンスが悪くなったように思えるような出来事がたくさんあることに気づけたし、逆に人に対してステレオタイプ脅威を引き起こすような言動や行動を無意識にしていた出来事にも気づけた。

    ステレオタイプ脅威を自覚できるだけでパフォーマンスは全然違ってくると思うし、脅威を引き起こすサインを自分が出していないかを意識することができるようになると思う。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

社会心理学者。「ステレオタイプ脅威」と「自己肯定化理論」の研究で知られる。多数の論文を執筆しており、米国科学アカデミー、米国教育アカデミー、アメリカ哲学協会、アメリカ芸術科学アカデミーのメンバー。カリフォルニア大学バークレー校の副学長、コロンビア大学の副学長を経て、現在はスタンフォード大学で心理学教授を務めている。

「2020年 『ステレオタイプの科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

クロード・スティールの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スタンレー ミル...
ジェームス W....
スティーブン・ピ...
劉 慈欣
レベッカ ソルニ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×