解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

著者 :
  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862763181

作品紹介・あらすじ

「ふわっとしている」「既視感がある」「ピンとこない」
誰かにそう言われたら。言いたくなったら。

解像度が高い人は、どう情報を集め、なにを思考し、いかに行動しているのか。
スタートアップの現場発。2021年SpeakerDeckで最も見られたスライド、待望の書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    1 解像度が高いとはどういう状態か
    解像度…物事への理解度や、物事を表現するときの精細さ、思考の明晰さを、画像の粗さや精細さのビジュアルイメージを想起させながら示す言葉として用いられる。
    たとえば、解像度が低いと言われる状態として、以下のようなものがある。
    ・物事への理解が足りていないように見える。
    ・議論がふわっとしていて地に足が着いていない。
    ・具体的な数字などを挙げられず、説得力が弱い。
    ・抽象論だけで、具体例が挙げられない。

    逆に、解像度が高いとは、相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていること。
    解像度の高さは「深さ」「広さ」「構造」「時間」の4要素から導かれる。
    ①深さ…問題や課題の原因、要因、方法を細かく具体的に掘り下げる。縦軸の大きさ。
    ②広さ…考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保し、もともと考えていたのとは別の所にある原因や可能性に気づく。視野の切り替え。横軸の大きさ。
    ③構造…深さや広さの視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、共通部分、相違部分など、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を理解する。
    ④時間…時間の変化、因果関係、物事のプロセス、流れをとらえる。

    4つ全て重要だが、まずは深さを確保することに努めよう。


    2 今どこまで見えている?
    「状況」という状況で
    「課題」という課題を持つ
    「対象顧客」向けの
    「製品/サービス名」という
    「製品/サービスジャンル」です。
    これには「利点」という利点があります。
    「既存の代替品・競合」とは違い
    「差別化要素」が備わっています。

    以上の「」の中を、自分の構想しているアイデアで埋められるだろうか。また、埋めたあとどこまで具体的に話せるだろうか。

    ①深さが見えているか…どこまで細かく具体的に言えるか。ふわっとしていて、多くの事例に当てはまるような、よく聞く話では深さが足りない。その理由を7段階以上掘り下げられるかチェックする。
    ②広さが見えているか…幅広い選択肢をきちんと知っているか。競合製品との詳細かつ多面的な比較が言えるか。
    ③構造が見えているか…簡潔に埋められたか。ユニークな洞察があったか。
    ④時間が見えているか…短期的な目標は何で、長期的な目標としてどこまで辿り着きたいのか、そこに至るまでの道筋はどういったもので、なぜこの道筋が最適なのか、そして長い道のりの中での途中の到達目標を数値で明確に言えるか。


    3 解像度を上げるための取り組み
    まず行動する。高い解像度には情報×思考×行動の組み合わせで至ることができる。思考の材料となる情報が間違っていれば、どんなに思考能力が高くても正しい答えは出せない。どんなに素晴らしい情報を持っていても、思考が下手であれば良い判断はできない。そして良い情報と良い思考を持っていても、行動しなければ何も起こらないし、結果からフィードバックを得ることもできない。
    情報と思考と行動のすべてのレベルが高いことが理想。しかし、解像度を上げるうえではまず、情報や思考がまだ粗い状態でも、行動量を増やす、つまり、とにかく最初に行動し始めることが大切。行動すればフィードバックを得られるため、情報と思考の質を高めていくことにつながるからだ。

    周りから批判されないように、完璧なものを作ってから周りに共有しようとしてしまいがちだが、それでは多くのムダが生まれる。まずは試作段階、検討段階でもとにかく世に発表すること。そうすれば新たな情報が得られて、その新たな情報を用いて思考をし直すサイクルを行える。


    4 課題の解像度――まずは深さから
    症状ではなく病因に注目する。
    市場の課題と顧客の課題を混同しない。市場の課題は、企業や個人の課題の集積や、市場の制度が生んだ「症状」。「病因」は、「目の前にいる一人の顧客は、いったい何に困っているのか」というミクロな顧客の課題。お金を払うのは顧客であり、顧客の課題が分かっていなければ、適切な製品(病因に対する薬)を作ることができない。そして適切な製品を作ることができなければ、市場の課題という症状を解決することもできない。
    それに市場の分析やデータから見える「市場の課題」の事実は、多くの人が知っている。他企業と差別化ができるポイントは、そうした誰でも手に入るデータではなく、少数の人しか持っていない顧客の課題への洞察である。

    深さのレベルを上げるには、
    ①今自分が考えている課題を言語化する(外化)
    →仮説をとにかく紙に書き、考える土台にする。声に出して喋る、説明する。
    ②サーベイをする(内化)
    →情報を集める。大量の情報を仕入れるため、最低100の事例を集める。本、動画、講演などで情報収集する。
    ③インタビューをする(内化)
    →顧客や相手にインタビューする。ただし、顧客の意見ではなく事実を尋ねる(何が欲しいかは聞かない)。思考は顧客に任せすぎず、自分で行う。
    ④現場に没入する(内化)
    →現場で起こっている現象を自ら体験する。可能な限り写真や動画を撮り、観察結果をニュースのように書き起こし、言語化する。
    ⑤個に迫る(内化)
    →一人の顧客に集中して深堀りする。
    ⑥Why so?を繰り返して、事実から洞察を導く(外化)
    →取り入れた情報について「なぜそうなっているのか?」「どうしてそうではない(今まで解決されていなかった)のか?」と繰り返し続ける。
    ⑦習慣的に言語化する(外化)
    →メモをする。誰かと対話する。教える。
    ⑧コミュニティで深堀りを加速する


    5 課題の解像度――広さ、構造、時間
    ・広さ…物事の前提を疑う。視座を変える(高くする、相手の視座に立つ)。体験する(競合製品を使い倒す)。
    ・構造…情報を分ける。要素を比べる。関係づける。省く。
    ・時間…変化を見る。プロセスやステップを見る。流れを見る。歴史を振り返る。


    6 解決策の解像度
    ・深さ…言語化してみる(プレスリリースの形で言語化する)。Howを問い続ける。専門性を磨く。プロトタイプを作る、ロールプレイをしてみる、競合製品を使い倒すなど、手や体を使って考える。
    ・広さ…知識を増やす。人と話す。外部資源を活用する。解決策の真の意味を考える。
    ・構造…解決する範囲を決める。構造のパターンを学ぶ。新しい関係性を生み出す。捨てることや省くことを忘れない。制約を意識する。他システムとの連携を考慮に入れる。
    ・時間…二手先、三手先をシミュレーションする。好循環を作ることを意識する。

  • 普段仕事をする中で、「自分はもしかしたらある事象を抽象化して他の事象と結びつけることが得意なのではないか」と感じる場面があったので、よりその言語化を進めてみようと思い手にとってみた。

    読んでみた感想としては、「構造としては納得できつつも、ここまで意識的にやっていたら時間がいくらあっても足りなさそうだ…」というのが正直なところ。

    本書に書かれた内容を意識しながら整理するよりも、行動やアウトプットした内容を後から振り返るための手段として利用する方がうまく使えそうな印象を受けた。

    どちらかというと先に記載した自身のテーマが、解像度というよりは「抽象度」の上げ方だったこともあり、若干知りたい領域と異なっていたことは少し残念。(自分のせいだけれども)

  • 大書、4つの切り口で課題から、解決策への思考と行動をガイダンスしてくれるもの。物事を深く理解できているかどうかを、解像度として視覚的に表現しています。

    曖昧な思考を明晰にする、そのために、解像度を上げる
    ビジネスで要求される多くの面では、高い解像度をもっています。
    情報を構造化し、理解を容易にするために解像度をどうやって上げればいいかを論じるのが本書です。

    ■解像度の高い人がもっている4つの視点
    ①深さ 原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げる
     深さがなければ課題を考えるときも何が根本的な問題であるかが分からない
    ②広さ 考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保する
     広く原因を把握し、異なるアプローチや視点を幅広く検討することで、もともと考えていたのとは別のところにある原因や可能性に気づく
     十分な視野の広さがなければ本当の課題に気づくことができない
    ③構造 深さや、広さの視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握する
     物事を構造化して把握する
     共通する部分はどこで、違いは何なのか、どういった関係性にあり、その中でも最も重要なのはどれで、それはなぜなのか
    ④時間 経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉える
     時間が常に流れており、解像度を上げる対象となる世界は変わり続け、深さ、広さ、構造は常に時間とともに変わっていく
     時間が過ぎると顧客の行動は変わり、市場も刻一刻と変化していく

    ⇒まずは、「深さ」から始めよう、まず深さを確保することで、解像度を上げるサイクルが回り始める
    ⇒現場に行こう、現場に行かないと深さを十分に確保できず解像度を上げられない
    ⇒表面的なアイデアにとどまらず、現場を見て、具体的な顧客の課題を掘り下げる

    ■解像度の診断
    <わからないところがどこかわからない>
    情報を疑問をもたずにそのまま受け取っている ⇒へえ、そうなんだ
    分からないところが分からない ⇒だから、疑問がない、質問ができない
    分かっているところを調査すれば、分かっていないところがどこだか把握できる ⇒だから、「分からないこと」をはっきり指摘できる
    そうすれば、「まだ分かっていないところ」の謎を解き明かすことができる
    <解像度が高くなれば>
    ・構造
    重要なところを明確かつ簡潔に話せるようになる⇒要点を言える
    それってどういう意味?筋がとおっていないんじゃないの⇒ユニークな洞察、So What
    ・広さ
    幅広い選択肢をきちんと知っているか⇒物事の関係性を多層的・多視点的に説明ができる
    類似製品との詳細かつ多面的な比較が言える
    ・深さ
    どこまで深く、具体的に言えるか
    理由を七段階以上深く掘り下げられるか
    ・時間
    短期的な目標は何で、長期的な目標としてどこまでたどり着きたいのか
    そこに至る道筋はどういったもので、なぜその道筋が最適なのか、その途中途中にある目標を数値で明確に言えるか
    環境の変化についての時間的な見通しがあるのか
    <ツーリー構造で整理する>
    自分の理解をツーリー構造に書いて整理してみる
    ①深さ ツリーの階層、7段階以上
    ②広さ どうやったら、広げられるのか、こころ別の分け方にしたらどうか
    ③構造 ヌケモレやダブリがないか、もうこれ以上深堀できないかどうか
     ①+②+③複数の原因に優先度をつける、重要な1つに絞ってみる
    ④時間 ツリーの時間的な変化、どこがどう変化するのか

    ■行動なくして解像度は上がらない
    ・まず行動⇒粘り強く取り組む⇒型を意識する
    ・高い解像度⇐情報+思考+行動 高い解像度が得られないのは、行動が足りないから
    <まず行動>
    ・実用最小限 Minimum Viable Product (MVP) から始めよう
    ・情報得る⇒思考する⇒行動する⇒行動すると情報をまた得る⇒… これを短時間で繰り返していく
    ・実践的な行動のための知識を得ることで、行動が起こしやすくなる
    <粘り強く取り組む>
    ・簡単に良いアイデアが見つかるわけではない⇒だったら、時間を十分にかけることも重要
     最初のアイデア出し 200~400時間
     アイデア検証をする 200~400時間
     改めてアイデアを考える 200時間
     さらに検証をする 200時間
     まとめると、1000時間ぐらいになる ⇒そのためには粘り強く取り組み続ける
    <型を意識する>
    手当たり次第やればいいというのではない
    ・効率的な手段
    ・ベストプラクティス
    ・守破離もまず、師匠の型を学ぶところから始まる
    <ビジネスでは何の解像度を上げればいいのか>
    ・「課題」のより詳細の特定 ⇒ 「解決策」の技術的な改善 ⇒ 課題と解決策がフィットしているところをどんどん大きくしていく ⇒ 生み出される「価値」を大きくしていく

    ■課題:深さ
    ・よい課題を選べるかどうかで、価値が決まる ⇒ 大きな課題であり、合理的なコストで解決でき、実績が作れるよう課題を小分けにできる ものがいい課題
    ・いまは小さいが、将来大きくなる課題に今から取り組む
    ・課題の頻度、どれくらい頻繁に起きるのか
    ・現在解決できるのか、そして、合理的なコストで解決可能か
    ・課題を分解して、その中のもっとも大きな影響をもたらす課題から手をつける
    ・内化 読む・聞くを通じて知識を習得、振り返りやまとめを通じて、気づきや理解を得る
    ・外化 書く・話す・発表するを通じて、知識の理解や、思考を表現する、言語化する
    ・とにかく書く 詳細に課題を検討するときは、長文で書いてみる ⇒ 自分の考えの間違いや解像度の低さに気づける ⇒ 書く、書く、どんどん書く
    ・解像度が低いままなのは、情報不足、情報の整理不足かも ⇒ 関連情報を徹底的に集めて、整理する、用語集を作り、わかるものから手を付けていく ⇒ 範囲を広げたり、狭めたりして サベイを繰り返していく
    ・時間を決めて、サベイする。自分の課題に関連する業界の本を片っ端に読んでいく。日本語でも、英語でもキーワードで検索してみる
    ・現状をある程度理解したら、データを分析してみる。 量から質へ、定性的な情報に触れてみる
    ・人にインタビューしてみる。顧客と同じ現場で働いてみる ⇒事前に仮説をもって現場に行く
    ・メモを残す 不完全だとしても、とりあえずメモを残す

    ■課題:広さ、構造、時間
    <広さ>
    ・ゼロベース思考 既成の前提を疑い、ゼロから考える ⇒ そもそも何のため?、そもそも必要?、そもそもどうやって作ればいい?
    ・ものの見方を変える
     視座:物事を見る場所
     視野:見えている範囲
     視点:特定の部分に注意を向けた先、どこを特にみているか
    ・自分の立場より上の立場で考えてみる、できれば2段階以上の人の視座にたつ、観察、思考対象のシステムの境界を広げてみる
    ・相手の視座にたつ 相手がみている景色をともに見て、ともに考える
    ・未来の視座に立つ 
    ・レンズを変える 望遠や広角レンズを変えてみる、多くのレンズをもって視野を変えていく
    <構造>
    ・情報がうまく構造化できていないと洞察できない
    ・分ける、比べる、関連づける、省く
    ・切り口を工夫する
    ・MECE もれなくだぶりなく
    ・目的にあった適切な行動ができる単位まで分ける ⇒ 粒度
    ・分けることができないなら、まずは知識を身につけましょう
    ・大きさを比べる 大きなものから順にみていく、成長率など比率の大きなものも確認する、重み、価値を配慮する ⇒ようは重要なものかどうかを見て、手をつける
    ・グラフ化する
    ・分け方を見なおす
    ・まとめる(グループにする)、並べる(どうならべる、大きさ?、時間?)
    ・つながりを表現する 因果関係 ⇒ システムとして捉える
    ・レイアー(層)の概念、下敷きをたくさん作って、重ねてみる (社会、市場、業界、企業、チーム、個人等)
    ・図示する、表にまとめる、因果ループ図、マトリックスにしてどの部分が対象で、どの部分が不要なのかを検討する
    <時間>
    ・変化に着目する ⇒ パターンに分けてみる
    ・複雑な系では、時間的な遅延を配慮する必要がある、他の要素を反映する
    ・物事をステップに分ける ⇒ 分けたらプロセスを調べる(どの部分に課題があるのか)
    ・バリューチェーンなど、可視化してみる ⇒ そうすれば、どこを完全すべきなのかが見えてくる、独自のバリューチェーンであれば独自の価値を見出せる
    ・流量を見ることでボトルネックを発見できる ⇒流れの継続的な改善には、ボトルネックが有効、課題をより詳細化できる。

    ■解決策
    ・よい解決策 ①課題を十分に解決できる ②合理的なコストで実現できる ③他の解決策に比べて優れている
    ・課題以上の価値を期待しない ⇒ 最低、解決すべき課題は何かがわかっていないと、ぶれてしまう
    ・解決策のよしあしは、課題に大きく依存する
    <深さ>
    ・解決策も、課題と同様、言語化する
    ・優れた、最高の、といった不要の形容詞は取り除くこと
    ・自分たちの専門用語を使わない
    ・解決策を手で書いてみる
    ・デザイン行動でやる、デザイン思考+行動
    ・分解するとき「なぜ」をいれる なぜつくったか、なぜ部品や機能を使っているのか など
    ・体で考える⇒プロモビデオを作ってみる
    ・競合製品を使い倒してみる⇒体験を、体で考えるといっている
    <広さ>
    ・解決策を広く知らなければ、課題を解決できることに気づけない
    ・成功事例や失敗事例を知る
    ・実際に使ってみなければわからない
    ・自分にできなければ、人に頼んでみる、協力してくれる人、お金を出してくれるにたのんでみる。いいアイデアであれば、協力してくれる
    <構造>
    ・構造を築くことを意識する、システムを作り上げる目的、どういった課題を解決したいのか
    ・トレードオフ よいシステムにはかならず、欠点がある
    ・サービスレベルを極端に設定して、旧来のトレードオフを崩すことで真似しずらい構造にする ⇒課題の解像度が高くないとできない
    ・新しい組み合わせを生み出す ⇒ ①課題と解決策をたくさん知っておく ②新しい関係性を創り出す
    ・独自性の追求 機能追加より、何を捨てるかのほうが重要
    <時間>
    ・適切なステップを見出す ⇒そして、課題を1つ1つ順々に解決しながら、ステップを上がる
    ・ゴールから逆算して計画をたてる
    ・シミュレートする

    ■検証
    ・検証のための行動、つまり実験をしてみる
    ・実験はコストパフォーマンスのよい、小さな単位でしてみる。
    ・実験的につくってみると、新しい価値に気がつく
    ・泥臭いことをする
    ・初期の段階では、売上という成果より、学びを得ることが重要

    目次

    はじめに
    1 解像度を上げる4つの視点
    2 あなたの今の解像度を診断しよう
    3 まず、行動する・粘り強く取り組む・型を意識する
    4 課題の解像度を上げる ― 深さ
    5 課題の解像度を上げる ― 広さ、構造、時間
    6 解決策の解像度を上げる ― 深さ、広さ、構造、時間
    7 実験して検証する
    8 未来の解像度を上げる
    終わりに
    付録:解像度を上げる型一覧

    ISBN:9784862763181
    出版社:英治出版
    判型:A5
    ページ数:352ページ
    定価:2200円(本体)
    発売日:2022年11月24日第1版第1刷
    発売日:2023年01月27日第1版第4刷

  • 1.自分の言葉の粗さが気になっていたので読みました。

    2.ビジネスで成果を出している人ほど解像度が高いです。解像度が高いとは、相手の持つ課題を時間軸を考慮しながら深く、広く、構造的に捉え、最も効果的な解決策を提示できることを言います。
    本書では、48の型を紹介しながら、解像度を上げていくための方法を述べています。解像度をあげるにあたり、「情報・行動・思考」の3つの量と質を上げることが必須です。
    本書では、読むだけでなく、行動することが前提として書かれております。

    3.新しい発見はなかったのですが「わからないことがわからない、つまり質問がない・できないのは解像度が低い時の証拠」という箇所が刺さりました。最近、行動量を増やすことがメインだったので、ついつい流し読みしてしまうことがあります。ちょっと難しい記事に出会った時には「こんな感じか」とスルーしてしまうことがありました。この時に解像度が低いことを自覚し、あえて解像度をあげる訓練が必要だなと思いました。

  • 人材育成をしていると、問題発見能力と課題解決力に乏しい社員の教育に頭を悩ますことがある。本書はそのような社員の問題発見力と課題解決力の向上に資する良書である。

  • 行動・思考・情報を深める方法を、要素を明確に、構造立てて解像度高く解説。
    大きな課題に漠然と悩むのではなく、どのように取り組むのか、それが解決につながると希望の持てる展開も好感。
    思考の筋トレ。

    1 解像度を上げる4つの視点
    ①深さの視点:原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げる
    ②広さの視点:考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保する
    ③構造の視点:「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素感の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握する
    ④時間の視点:経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉える
    →深さは1つ1つの画素の色や鮮やかさ、広さは全体の画素数に例えられ、画素の適切な構造化が重要。表示が時間と共に移り変わることで静止画ではなく動画として捉える

    ◯「深さ」から始めてアンバランスを解消する
    →現場の希少で具体な情報を得て共有することで、人を巻き込みやすくなり、さまざまな情報を得たり議論することで、広さと構造、時間の視点を得る、解像度を上げるサイクルを回す

    2 あなたの今の解像度を診断しよう
    ◯分からないところが分からない、つまり、疑問がない、質問ができないのは、解像度が低いときの典型的な症状

    ◯製品/サービス紹介を例とした解像度チェック
    「状況」「課題」「対象顧客」「製品/サービス名」「製品/サービスジャンル」「利点」「既存の代替品・競合」「差別化要素」

    ①「構造」チェック:簡潔に話せるか、ユニークな洞察があるか
     →論理に飛躍がないか、So what?ではないか
    ②「広さ」チェック:多面的に話せるか
     →代替品・競合との差別化要素が複数の要素の中からどの点が優っていて、その点が重要であると認識する 等
    ③「深さ」チェック:その話はどこまで具体的か
     →課題の理由を7段階以上掘り下げられるか
    ④「時間」チェック:道筋は見えているか
     →短期、長期の目標、最初の一歩として何を始めればよいか、環境変化の時間的見通しがあるか

    ・解像度を上げるには時間がかかる。認知的負荷を高める。受動的かつ自動的に処理していた世界を能動的かつ積極的に処理する。

    3 まず行動する・粘り強く取り組む・型を意識する
    ◯行動・思考・情報
    ・まず行動することが重要
    ・Minimum Viable Product (MVP)によるフィードバックサイクル
    ・時間をかけて、型を意識して取り組む

    ◯「課題」と「解決策」の解像度を上げ、両者を重ねる

    4 課題の解像度を上げるー「深さ」
    ◯課題の大きさ以上の価値は生まれない
    →どの課題を選ぶかによって、生み出される価値は大きく変わる

    ◯良い課題の3条件
     ①大きな課題である
     ・大きさ=強度×頻度
     ・バーニングニーズであるか、1日に何回使うか
     ・今後大きくなるか
     ②合理的なコストで、現在解決しうる課題である
     ③実績をつくれる小さな課題に分けられる
     ・信用を得る、小分けした中で緊急性のある課題

    ◯「深さ」の視点とは、症状ではなく、病因を突き止めること
     ・市場の課題は、課題の集積や制度が生んだ症状
     ・これを生み出す個々の顧客の課題が病因

    ◯「深さ」のレベルを深掘りするための内化、外化、これらの精度を上げる
    ⭐︎第一歩はまず外化から!
     ①言語化して現状を把握する(外化)
     ・「今、何が最も重要な課題だと思っているか、それはなぜか」を文章として長文で書く
     ・考えの間違い、解像度の低さに気づくことから始める
     ・主語を明確に、動詞を入れ、明確かつ簡潔に言い切る。名詞は正確に使い、形容詞は数値化・具体化し、バズワードは避ける
     ・書く、声に出して喋る

     ②サーベイする(内化)
     ・最低100の事例に当たる
     ・調査は時間を決めて行う
     <Tips>
     ・Google scholar、Semantic scholar
     ・「site:サイトのURL(半角スペース)検索ワード」でサイト内検索

     ③インタビューをする(内化)
     ・顧客の意見ではなく、事実を聞く
     ・半構造化インタビュー

     ④現場に没入する(内化)
     
     ⑤個に迫る(内化)

     ⑥Why so?を繰り返して、事実から洞察する(外化)
     ・なぜそうなのか(そうではないのか)?
     ・十分具体化してから問い始める
      (×顧客は何かを習慣化したいけれどできていない
      ⚪︎都会で働く社会人3年目の顧客は、運動を習慣化したいけれどできていない)
     ・原因を人に帰属させすぎない

     ⑦習慣的に言語化する
     ・メモ、対話、教える

     ◯精度を上げるために、言葉や概念、知識を増やしたり、少人数から始めるコミュニティをつくる

    5 課題の解像度を上げるー「広さ」「構造」「時間」
    <広さ>
    ○前提を疑う
     ・ゼロベース思考
      例)エレベーターの待ち時間を課題と考えるとき、「そもそも『待つ』とは何なのか」を考え、「待つとは何もしないで時を過ごすこと」とした場合、解決策は「エレベーターを早くすること」ではなく「『待ち時間』として認識する時間を減らすこと」になる
     ・10×の問い:一桁違う改善策を考えることで、異なる課題や着眼点に強制的に向ける
     ・リフレーミング

    ○視座を変える
     視座:物事を見る場所
     視野:見えている範囲
     ・視座を高くする、相手の視座に立つ、未来の視座に立つ

    ○体験する、人と話す

    <構造>
    ○分ける
     ・切り口を意識してMECEに、目的に合った適切な行動ができる単位まで分ける

    ○比べる
     ・カテゴリーや抽象度を合わせて比較しやすくし、大きさや重みを比べて、視覚化する

    ○関係づける
     ・グループ化する、並べる、つながりを見ることや、アナロジーを活用することで、システムを把握する。システムの相互作用を理解し、どの要素に介入すべきか考える

    ○各過程において理解しやすくするために、「省く」

    <時間>
    ○時間の経過による課題の変化を見る
    ○バリューチェーン等のプロセスやステップごとに見ることで課題の所在となるボトルネックを見つける
    ○時間を遡り、変遷の歴史を辿ることで、課題が生まれた経緯を見る

    6 解決策の解像度を上げるー「深さ」「広さ」「構造」「時間」
    ○良い解決策の3条件
     ①課題を十分に解決できる:オーバースペックにならないように
     ②合理的なコストで、現在実現しうる解決策である
     ③ほかの解決策に比べて優れている

    <深さ>
    ・先にプレスリリースを書くことで解像度の現在地を確認し、行動可能な単位に落とせるレベルまでHowを問い、プロトタイプ、ロールプレイで深める

    <広さ>
    ・引き出しに道具を増やすように、解決策の他の可能性を追求するために、解決策の知識を増やす、「ない」は「今はない」だけであり外部資源活用を前提に考える。このために探索に日頃から時間やお金を割り当てる

    <構造>
    ・「構造を築く」ことを意識する
    ・解決する範囲を決め、要素間の相性を考えて新しい関係性を考え、それ以外を捨てること、省くことを考える。
    ・雑な構造から始める

    <時間>
    ・ゴールから逆順で考え、ステップを刻む
    ・一手先の最善よりも二手先、三手先につながる手を打つ
    ・好循環、アジリティ

    7 実験して検証する
    ・スケールしないこと=泥臭いことをして、売上よりも学びを得る
    ・行動することで、周りの環境が変わり、新しい機会を作り出す

    8 未来の解像度を上げる
    ・あるべき未来を考える=未来の視座を持つ
    ・大きな課題の解像度を上げて取り組むことのできる単位で取り組むことで、同じ課題に取り組む人が増え、前に進む

  • 行動あるのみ

  • スタートアップ向けに書かれた本なのでビジネスの課題解決の話がメインではあったけど、解像度の上げ方としては広く応用できそうな内容が多かった。特に序盤の、解像度とは何か、解像度が高いとはどういうことか、という部分はまさに高い解像度で書かれていて勉強になる! やっぱり行動すること、手や足を動かすことが大事だよなあ。

    【読んだ目的・理由】世界を見るときと文章を書くときの解像度を上げたいと思ったから
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆3.8
    【一番好きな表現】解像度を上げる試みは、普段いるコンフォートゾーンから抜け出して、世界の複雑さの前に絶望せず進んでいき、常に自分の見ている世界に疑問を持ち続けることでもあります。(本文から引用)

  • 営業職であろうが、技術職であろうが、事務職であろうが、どんな職種であっても、ビジネスマンであれば、めちゃめちゃ役立つ本だと思う。

    解像度を構成する要素としては構造・深さ・広さ・時間の4つがある。
    これらの中で欠如しやすいのが深さと言われていて、それはとても共感ができた。
    問題解決系の本によく書いてあるがwhy soを繰り返して事実から洞察を導くと言うところが非常に大事なんだなと思った。
    また解像度を高める上で内化と外化という概念が重要だと言うことに共感ができた。

    どこに書いてあったか忘れてしまったが、広さの視点を持つ上で、器用貧乏のように中途半端な知識を広く持つのではなく、ある程度極めたものを複数持つことで広さが実現できると言うところについてはその通りだと思った。
    自分はどちらかと言うと器用貧乏タイプだと思っている。
    自分が関わってきたこと(例えば仕事や趣味や学生時代の学部や部活動など)については、ある程度語れるレベルまで得しておくべきだったと思った。
    ベースの知識はあるので、今から知識を深めるのは遅くはないと思っている。今日から頑張る。

    もう一つ印象に残ったのが武道でよく言われている守・破・離と言う概念だ。
    これに対して、筆者はある程度の知識の深さや習熟度がなければ、応用はできないと主張していた。
    やはり深さは重要だと思った。

    理解を深めるための手段としての6W3H(why what who when where whom How how much how often )が役立ちそうだと思った。

    今会社でデザイン思考のワークショップに参加しているが、かなりデザイン思考の考え方を取り入れた手法が紹介されている本だと思った。

  • 解像度を上げるには、深さ、広さ、構造、時間を意識して、深く考え、行動し、検証する。そう簡単に解像度が上がるわけではなく、地味な考察、行動、検証、改善の結果だ。安易な近道があるわけでははない、と改めて思った。

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著者プロフィール

東京大学 FoundX ディレクター。
University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『未来を実装する』。

「2022年 『解像度を上げる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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