在るものと本質について

  • 知泉書館 (2012年3月30日発売)
0.00
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 11
感想 : 1
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (132ページ) / ISBN・EAN: 9784862851307

作品紹介・あらすじ

本書は従来,存在論あるいは形而上学の基礎概念や基本問題についての手頃な入門書ないしトマス独自の「存在」を核とする形而上学的革新の解説書とされた。
トマスの存在論的探究とは,神はわれわれの救いのために「自らを無にして」人間になったという受肉の神秘,すなわち真の神であって真の人間であるキリストの「存在」の神秘によって呼びおこされた驚異と讃美を根源とするものである。その神秘とは「最高の仕方で自己を被造物に伝える(自らを与え尽くす)」ところの最高善あるいは善性としての神の本質に他ならない。
「存在するもの」を最初に捉える「場」とは,感覚的に知覚している物質的な事物が存在する外界ではなく,われわれの精神や知性が自らの働きをふり返る,一種の自己認識に開かれる自己の内なる世界である。
存在するものの理解が成立するのは,知性が自己へと立ち帰ることを通じて遂行する判断の働きによる。精神が自己認識によって物体よりは高次の自らのあり方を学ぶことを通じすべての存在するものの第一の根源である存在そのものへと探究を進めることができる。
30歳前後で書かれた本書は,聖書の啓示により「神」と呼ばれる「存在」(エッセ),その「存在」を目指してトマスが遂行した根元的で徹底的な探究の試みである。トマスの全体像を理解するための基本文献。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

稲垣良典(いながき・りょうすけ)
一九二八年生まれ。中世哲学。東京大学文学部哲学科卒業。アメリカ・カトリック大学大学院(哲学)M.A.、Ph.D取得。ハーバード大学法学部研究員。南山大学、九州大学、福岡女学院大学、長崎純心大学大学院教授などを歴任。著書『現代カトリシズムの思想』(岩波新書、一九七一年)、『トマス・アクィナス「神学大全」』(講談社選書メチエ、二〇〇九年)、『カトリック入門』(ちくま新書、二〇一六年)、『トマス・アクィナス哲学の研究』(創文社、一九七〇年)、『習慣の哲学』(創文社、一九八一年)、『抽象と直観』(創文社、一九九〇年)、『神学的言語の研究』(創文社、二〇〇〇年)、『人格〈ペルソナ〉の研究』(創文社、二〇一〇年)、トマス・アクィナス『神学大全』翻訳(創文社、一九七七~二〇一二年)で毎日出版文化省受賞、『トマス・アクィナスの神学』(創文社、二〇一三年)、『トマス・アクィナス「存在(エッセ)」の形而上学』(春秋社、二〇一三年)で和辻哲郎文化賞受賞。

「2017年 『nyx 第4号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲垣良典の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×