特務機関長許斐氏利―風淅瀝として流水寒し

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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863100756

作品紹介・あらすじ

北一輝のボディガードを務め、戦時下の上海・ハノイで百名の特務機関員を率いて地下活動に携わる。戦後は、銀座で一大歓楽郷「東京温泉」を開業、クレー射撃でオリンピックにも出場した、昭和の"怪物"がいま歴史の闇から浮上する。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和前半、動乱時代の日本の巨悪や巨怪のノンフィクションを好んでよく読む。正力松太郎、里見甫、児玉誉士夫、笹川良一等々。この本もこの係累に属するものだが、なにせ知人の実父の話だからますます興味深く読めた。

    本の主題は上海やハノイで陸軍の長勇から依頼を受けて特務機関を作った許斐氏利の生涯を描くものだが、資料的に乏しい為か許斐氏利以外の昭和前半の特務機関がなぜ生まれどういう機関が存在したか、またその特務機関と密接な関係を持った日本軍による中国大陸での麻薬取引の実態、許斐氏利と関係の深かった大川周明のこと、長勇と皇道派、統制派との関係などなど、日本陸軍末期の実態を深く知れる内容になっているのが非常によかった。

    福岡で武術を極め、東京でテロを起こし、大陸に渡って馬賊の隊長、そして特務機関長として謀略の限りを尽くし、沖縄戦で九死に一生を得、戦後派はトルコ風呂経営者になる、、こんな波乱万丈な人生、いまの時代に後れるものだろうか。。実話なはずだが、ある種のファンタジーを感じてしまう一作である。

  • 丸の内の三菱UFJ信託銀行の地下1階のレストランのレジに飾ってあったので手に取った。独特の苗字と「氏」の字が入った人物の伝記。

    「許斐先輩のご先祖様は破天荒な方だったらしい」という話はチラホラ聞いていたが、その通りの本だった。

    著者は日経の記者。ボリュームある文章だが、新聞記者ならではの整理された文体なので読みやすい。

    昭和初期の動乱期の物語。226事件の首謀者の北一輝のボディガードを経て、満州にわたり民兵組織の隊長になる、さらに上海で帝国陸軍の別働隊である特務機関をつくる。終戦後は政治活動とは袂を分かち、実業の世界に。現在のペニンスラある日比谷の土地(堀を瓦礫で埋め立てた土地)に日本最初のトルコ風呂「東京温泉」を設立する。

    当時の政治情勢の背景説明に加えて、日本軍が中国大陸での活動資金を捻出するための麻薬取引の実態も詳述。公文書や極東軍事裁判の証拠文書には三井物産などの実在の企業名や、後の政治家が登場し驚愕する。例えば、大平正芳が課長を務めていた昭和14ー16年の「興亜院」という役所が作った「支那阿片受給計画表」など。

    読み始めてから1年以上かかった。

  • 北一輝のボディガード。
    国会議員を襲い逮捕。逮捕されるが起訴されず。
    桜会のメンバーで、沖縄で切腹した長勇参謀長の元で特務機関長として上海で活動。戦後は、東京温泉創業。クレー射撃で五輪出場。アジア大会優勝。大川周明の大東亜構想に従い、上海からアジアへ。
    長が和平交渉で帰国する際にはボディガード。長勇の墓参りで小指を切る。
    東京温泉成功の祝いで薬指を切る。筆者がベトナム取材で許斐の息子と知り合い、その父の存在を知る。大企業の駐在員は東京温泉の社長で小指がないので関わらないほうがいい。取材する時にはすでに亡くなっていた。
    博多の夕刊フクニチの連載記事、昭和竜虎伝
    阿片との関わりは記録なし。戦犯として投獄されたが黙秘、51日間食事拒否で入院。出所。博多の作ったキャバレーはつぶれた。
    息子にも、戦争中の話は全くしなかった。

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