スパコンとは何か (ウェッジ選書46)

著者 :
  • ウェッジ
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863100985

作品紹介・あらすじ

スパコン事業仕分け人になった著者による、次世代スーパーコンピュータープロジェクトへの提言。

感想・レビュー・書評

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  • 【概略】
     「世界で1位になるという理由はどこにあるのでしょうか?」「2番じゃダメなんでしょうか?」一般人の間に「スーパーコンピューター」という言葉が知られるキッカケとなったのは、時の政権・民主党による事業仕分けだった。スーパーコンピューターとは一体何なのか?スーパーコンピューターの誕生と変遷とは?またこれからのスーパーコンピューターの未来と、政官民がスーパーコンピューターに抱く期待とは?事業仕分け人にも名を連ね、スーパーコンピューティングの世界に生きる著者による一冊。

    2020年11月07日 読了
    【書評】
     「なんであなたがスパコンの本を読む必要あるの?」と、一部の人達からツッコミを受けそうな読書チョイス(笑)ちょいとばかりスパコンのことを勉強しないといけなくなって、まずは手に取った一冊というのが、この本。
     自分も「2番じゃダメなんでしょうか?」でスーパーコンピューターに物凄い予算が組まれてるのを知ったクチで。さらにはウィンドウズ95あたりから自分とPCの接点が始まった程度の知識レベル。「スーパー」という意味を大きく取り違えていたことが本書でわかったという。気象の予想のくだりから「格子」を例にだし、その格子の範囲の細かさ&その範囲内における計算スピートの速さ etc. etc. においてはスーパーコンピューターの存在意義というものは非常に大きいということ、十分に腹落ちした。
     この本が書かれたのはスーパーコンピューター「京」が誕生した頃の話で、ハードウェア的には(現状の技術水準、革新的な新機軸が出ない限り)スーパーコンピューティングのピークではないかというのが著者の意見。そのような頭打ちの状態で「スーパー」の競争を行っていくこと、むしろスーパーコンピューターをどのように「使う」ことに知恵を絞るか、という部分に、意識のシフトが必要な感じがしたね。
     あとは「2番じゃダメ?」の部分、これって当時から凄く違和感だったなぁ(笑)「ちょっと待てよ、1番やら2番を目指すってのは意識の問題であって、〇〇円の予算がないと1番が取れないってことを誰も担保できないのと同様、これだけの予算を差し上げるから2番で辛抱してくれってことだって誰も担保できないよなぁ」なんて思ってて。1位を取るつもりで、結果、2位だったという振り返り場面でした語れないことを予算段階で語ってどうするの?ってね。あれを蓮舫さんに言わせちゃった側も、もっと自身が取り組んでる研究をプレゼンテーションできないといけないよなぁ~・・・なんて、この本を読んで思った(笑)これはちょっと前にも話題に出た「基礎研究」に予算をどれだけかけるか?といった部分とも共通してるよね。国家百年の計を語ることができる人間(これは別に政治家だけじゃなくて、官僚だって民間だって含む)が増えないとあかんよなぁ~とも。あとは、こういった研究=軍事=禁忌 みたいな形にアレルギー反応をしないこと、は感じたな。
     自分が現在、会社という組織を統率する側になったことも、こういった「せめぎあい」の双方の気持ち、わかる。「糊口を凌ぐ」こともしていかないといけない、同時に会社が社会においてどれだけ役に立てるか?また10年後20年後30年後・・・の会社を想像して、どれだけの「投資」ができるのか?このバランスが本当に難しい。吹けば飛ぶような小さな会社ですら難しい訳だから、国家の舵取り・巨大企業の舵取りなんて・・・どんだけ胃をキリキリさせないといけないんだと、想像しただけで胃潰瘍になる(笑)
     さてさて、肝心の「なぜ、スパコンのことを勉強しないといけなくなったか?」の部分については、本書一冊のみでは・・・まだまだ「おりてこない」感じ(笑)いつ、おりてくるのか?なにが、おりてくるのか?そもそも、おりてくるのか?・・・まだまだ苦しい日々が続くね、これは。

  • 事業仕分けで何が問題だったのかを含む著者のイメージするスパコンのあるべき姿について、専門外の人間に向けて書かれた本。

    個別の文章は耳あたりがよく、なるほどと思うのだが、全体を通してみると、なぜ京プロジェクトに反対で、地球シミュレーターは評価できるのか理解できなかった。
    著者の勤務先である東大の大型計算機センターのかつてのやり方が一番との考えを強く抱いている点だけが妙に印象に残る典型的な団塊世代の文章のように感じられ、その点は興味深かった。

  • なぜ金田先生が「京」プロジェクトに反対?していたのかが良く分かった。もっともである。

    2012/10/20図書館から借用;直ちに読み始め;10/21で読了

  • 民主党政権発足直後の大きなイベントと言えば事業仕分けであり、そこでの蓮坊議員の「二番じゃだめですか?」との発言は未だに記憶に新しいものだが、その標的であるスーパーコンピューターが本書の話題。

    著者は仕分け人の一人として蓮坊議員と共にスーパーコンピュータ開発予算に疑義を唱えた方だというが、実際には初期のスーパーコンピュ-ター開発に携わり、円周率の計算でギネスにも登録された東大教授で、ある意味スーパーコンピュータに最も思い入れのある人でもある。

    スーパーコンピュータは科学の発展に必須というのは著者も認めるところであるが、一方で多額の国家予算を費やすのだからそこには既存のCPUを力ずくで並列に組上げでベンチマークの計算能力で一番を目標にするだけではなく、そこに何らかに技術的ブレークスルーが伴うべきであると今回の開発計画に疑問を投げかけている。

    更に、ハードだけが脚光を浴びているがスーパーコンピュータの能力を生かすも殺すも其れを動かすソフト開発の両輪が伴わなければ意味はないと嘆く。特により優れた計算アルゴリズムを作り計算能力を最大限に生かすソフトを開発するには経験が物を言う世界であり、単にメンツに拘る世界一のスーパーコンピュータが一台有るよりも、その一桁下の性能であろうとも多数台が使える環境を整えない限りソフト開発能力は鍛えられないと指摘する。また計算アルゴリズムの開発に携わる人間の教育・採用・昇進パスが日本社会には存在しないことから先行きは暗い、と嘆きは留まるところを知らない。

    スーパーコンピューターが本書のテーマではあるが、一方で日本の名だたる電子機器メーカーの昨今の凋落とGoogleを始めとする世界を席巻するIT企業の興隆具合を比較するに付け、こうした苦言はより現実性と重要性を持っているような気がする。

  • 最近、ウェッジには注目している。

  • スパコン仕分け当事者らしく、政治的内容にも言及されており参考になる。しかし、もっと「影響力の大きすぎる話」が残っているそうだ。

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