誤解だらけの電力問題

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  • ウェッジ
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863101258

作品紹介・あらすじ

なぜ電力会社は原子力発電所を止められないのか、再生可能エネルギーで自給自足は可能なのか、自由化すれば電気料金は下がるのか。東京電力の中・外から見た著者が語る、電力と電力業界の"本当"の話。

感想・レビュー・書評

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  • 原子力発電、料金規制、電力システム改革。
    この逆風の中、電力会社は、そこに勤務する人々は、いったいどうして、原子力再稼働なんかに血道を上げるのか。
    そこにどんな素敵な、守るべき既得権益があるのか。
    そこを切り口とした本。

    切り口は秀逸であり、各種説明内容も適切だと思う。

    著者は電力業界が原子力再稼働を主張する理由を、現在までの電気事業体制にフィットした「合理的な」思考、その思考癖に見つけている。
    その思考癖とは、電力の安定供給を第一に置く価値観。筆者の言葉づかいでは「供給本能」。

    でも「供給本能」が理由か、と問われると、そんなに簡単なお話でもないとも思う。

    東京電力にかつて籍を置き、福島事故後に退職した、という十字架を背負い、かつ、電力業界からそう遠くない領域で執筆活動を行う著者。

    この本も、巻末に紹介された朝日新聞への投稿も、その微妙な立場故、書けた内容であると同時に、微妙な立場の人が書いちゃったから、誰が読んでも今一歩迫力と説得力に欠けてしまっているのが残念なところか。

  • 再稼働についてそれ以前の問題点が多い

  • 基本書ながら電力・エネルギー問題を体系的に整理、秀逸!
    東京電力の勤務経験から「現場」「現実」を踏まえつつ、主張は極めて中立的で、説得的であり、好感が持てる。

    電力会社は変わるか? ポイント3点 1脱原発 2再生エネ 3独占・原価最高料金
    原発再稼働 電力各社の社長は本当に進めたいのか? 自分のリスクと認識してる?

    発電コスト(30) /KWH
    10円 原子力 石炭火力 LNG火力 一般水力  
    20円 風力陸上 地熱 小水力 太陽光
    30円 風力洋上 バイオマス

    シュタットヴェルケ 独インフラサービス会社 地域密着型
    電気 水道 ガス 交通 1000社以上

    ドイツ 再エネ大国 00年6.6%⇒14年26% 急拡大 
    FIT負担 家庭3万円/年 二重の設備投資 進まない送電網の整備

    電気料金の国際比較(130)
    小売全面自由化 やるべきは今か?
    適切な投資は進むか 総括原価制度で保証されているが、シュリンクする
     EX 初期投資の大きな、原子力事業は誰もやらなくなる ⇒供給力不足「停電」
    総括原価主義 ファイナンスコストを抑制

  • 難しい選択ですね。好き嫌いで判断してはいけない。

  • 産経新聞正論執筆者のお一人です。
    読みながら「上手いな・・・」と思いまして。
    昔の書籍を購入した次第です。


    美人さんですよね・・・・・。
    変なAVで熟女もん流行っておりますが(失礼)
    こちらさんは正真正銘の容姿端麗でございますよ!

    「じゅんこ」さんではありません「すみこ」
    さんなんですね・・・もはやどうでもいいが・・・
    学生時代幾度となく間違えられていたことでしょう。
    その度ごとに「す・み・こですぅ!」とやっておった
    のだろうか。
    私の場合、存在自体希薄だったので飛ばされる始末やがな

  • 元東電社員による著。まず、太陽電池普及政策&ビジネスをドイツを引き合いに出してダメ出し。ドイツだけでなく、西ヨーロッパでで電力買取制度が破たんしていること、結果、電気料金が値上がり続けていることは周知の事実のはず。ドイツでは2000-2010の10年で、燃料費のコスト変動などを除いて純粋に11ユーロ/年も値上がり。でも、知らない人、いまだに先進的と思い込んでいる人もいるので、ちゃんと読んでほしい。再エネ導入では安くならないということなのです。数値的な議論になると、すべてのデータが公開されているわけではないので、もしかしたら、都合のいい分析をしているかもしれないが、事実ベースで読めるものは読んでおくのが正しい姿勢だと思う。

  • 原発必要、反対、というような極論に立つのでなく、客観的に電力に関連する情報をまとめてくれている、と読めた。電力会社の電気供給を切らしてはいけない、という考えが社風を作っている、というのもスッと理解。
    3年前の本なので、状況の変化はあるかもしれないが、大枠をつかむのに良い本なのかな、と思った。

  • エネルギー政策の議論では、どうしても供給側に目が向きがちです。省エネや需要コントロール策は、国民一般を巻き込む必要があり、費用対効果が悪い、あるいは、不確実性が高いとされてきたのです。しかし東京電力福島原子力事故と言う大きな経験をして今こそ、こうした取り組みを発展させるべきではないでしょうか。

  • 「チャレンジは失敗のもと」という言葉が印象的だった。
    確実性が最優先の電力会社。自由化により変わらざるを得なくなる。

  • p20
    太陽光発電の平均稼働率は12%にすぎない

    2012年
    ・水力 8.4
    ・火力 88.3
    ・新エネルギー(風力、太陽光など) 1.6
    原子力は2010年では28%

    →代替技術にするには桁が違う

    日本の消費者にとって安定供給は
    、「されて当然のこと」になってますが
    電力会社にとっては、「これこそが使命」
    →ここにギャップがある

    電力は「同時同量」

    東西周波数を統一しようとすると10兆円かかる試算

    エネルギー政策の3つのE

    Energy security
    Economy
    Environment

    LNG 液化天然ガス
    ・日本は世界最大のLNG輸入国→もっと交渉力を発揮すべき
    →日本は島国なので、ガス管で運べない
    →天然ガスの温度をマイナス160度まで下げ、液化させ、
     タンカーで運ぶ
    →ふたたび温度を上げ、ガスにする
    公害対策と、オイルショック後石油依存度を下げるために、莫大な設備投資がなされた

    カタールやUAEなどホルムズ海峡先から輸入するLNGは3割
    →イランなどに封鎖されたら、オイルショック再び

    メタンハイドレート
    →安定的に取り出せるまで15-20年かかる

    周波数は電圧と並んで重要な電気の品質
    →交流の電気が一秒間に繰り返す波の数
    →脈拍、上半身は60回、下半身は60回というのはありえないのと、おなじ、同じ系統につながる発電機、モーターはすべて一緒のリズムで動いている

    周波数の統一
    →発電機、タービン、変圧器等の交換だけで、10兆円かかる
    →現実的ではない

    ドイツでは、再エネが補助によって圧倒的に安い値段で市場に出回るため、
    環境にすぐれているが高価な天然ガスが減り、環境には悪いが安い石炭などが優位性を持つようになった
    →皮肉だが、再エネを応援した結果CO2が増えた

    再エネの稼働率
    太陽光 10パーセント(日本では12)
    風力 20パーセント

  • ポイントがよくまとまっていて、読みやすい。

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著者プロフィール

国際環境経済研究所 理事/U3イノベーションズLLC共同/東北大学特任教授(客員)
東京大学大学院工学系研究科にて博士(工学)。
慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力入社。主に環境部門を経験後、2012年より独立の研究者として地球温暖化対策とエネルギー政策の研究・提言に携わる。国連気候変動枠組み条約交渉にも長年参加し、内閣府規制改革推進会議ほか政府委員も多数務める。2018年にはU3イノベーションズLLCを創業し、新事業の創造による環境・エネルギー問題解決を目指す。著書に『誤解だらけの電力問題』(ウエッジ)、『原発は”安全”かーーたった一人の福島事故報告書』(小学館)、共著に『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0 へのゲームチェンジ』『エネルギー産業2030への戦略』(いずれも日本経済新聞出版)など多数。

「2022年 『電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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