ジャパン・ディグニティ

著者 :
  • 産業編集センター
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863111011

作品紹介・あらすじ

22歳の美也子は津軽塗職人の父と、デイトレーダーをしているオネエの弟との三人暮らし。母は、貧乏暮らしと父の身勝手さに愛想を尽かして出て行った。美也子はスーパーのレジ係の傍ら、家業の津軽塗を手伝っていたが、元来の内向的な性格と極度の人見知りに加え、クレーマーに苛まれてとうとうスーパーを辞める。しばらくの間、充実した無職ライフを謳歌していたが、やがて津軽塗の世界に本格的に入ることを決めた。50回ほども塗りと研ぎを繰り返す津軽塗。一人でこつこつと行う手仕事は美也子の性に合っていて、その毎日に張りを与え始める。父のもとで下積みをしながら、美也子は少しずつ腕を上げていき、弟の勧めで、オランダで開催される工芸品展に打って出ることに。第1回暮らしの小説大賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 9月公開映画
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99734355

  • 自分と重なる部分があってあっという間に読ませてもらいました。
    映画公開が楽しみです。

  • 高森美由紀さんの作品は『藍色チクチク』に続いて2作目なんですが、伝統工芸を題材に小説書いたらこの人おいて他にないんじゃないかって位注目してます。職人気質で妻の愚痴に耳も傾けずひたすら効率の上がらない仕事を淡々とこなす漆職人の父と主人公の美也子はコミュ症で陰キャ、弟は男子高を卒業するやワンピースに身を包みオカマになってしまった。家計のやりくりに悩み、ウダツの上がらない父に愛想尽かして母はとうとう家を飛び出して離婚届を送りつけてきた。
    何もなかったように岩木山を見上げラジオ体操をして毎日が始まる。近所に住む吉田の婆ちゃんからは野菜のお裾分けが届いたり、たまにくるお客は修理の依頼だけど物を大切に使う人達のため丹精込めて仕上げている。壊れたら新しいのを買った方が早いし安上がりな感覚が身についていると、大切なことに気づけないそんな時代かもしれないけど・・・
    登場する人がみんな個性的で眩しかったです。
    世話好きな吉田の婆ちゃんとか、妹?のユウとか意識しなければ女子以上にガーリーなんだけど突き刺さって暖かい。美也子も父の仕事を継ぐことに決めてからは少しづつ充実した毎日を送る、お花を買ったり、料理を覚えたりと。
    日常がコミカルに描かれていてほっこりしたりで笑いどころも満載でした。

    読了後は何処かの音楽祭を鑑賞したような余韻に、ガーベラの香りが放たれましたっw
    花言葉は神秘・冒険心・我慢強さ
    津軽漆塗りの黒が漆黒の輝きを放ちスタンディングオベーションしたくなるような良質な心地に触れることができました。この人の作品もっともっと読んでみたく思いました。

    • しずくさん
      おはようございます、しじみさん!
      しじみさんのレビューで髙森美由紀さんを初めて知り、あちこち検索散歩。読んでみたい興味を持った作家さんで...
      おはようございます、しじみさん!
      しじみさんのレビューで髙森美由紀さんを初めて知り、あちこち検索散歩。読んでみたい興味を持った作家さんですね。 
      2023/06/14
    • つくねさん
      しずくさん、こんつはww

      青森で活躍されてる作家さんのようで、読みやすくて暖かな気持ちにさせてくれるし注目してます。笑いどころも上品な...
      しずくさん、こんつはww

      青森で活躍されてる作家さんのようで、読みやすくて暖かな気持ちにさせてくれるし注目してます。笑いどころも上品な感じがして好なタイプです。この作品は「バカ塗りの娘」ってタイトルで9月に映画公開されるようなのでこちらもいまから楽しみにしてます。
      しずくさんも是非是非読んでください。レビュー楽しみにしてます。

      2023/06/14
  • 初めて作者。
    表紙はほわほわとした消しゴムはんこ調で、内容がよくわかんないな?と開くと口絵に美しい津軽塗の帯飾りやストラップの写真。
    あージャパンって漆のことね。

    青森のうだつの上がらない漆職人父娘の挑戦を描いた第一回暮らし小説大賞受賞作。

    モノ作りとか職人の話は好きなので借りてきた。
    悪くはないのですが、主人公の娘が漆職人になるまでが少し長いし、彼女の性格がネガティブでちょっとしんどいので、そっちに引きずられないよう要注意。
    読み終わってから著者紹介みたら、私より少し年下の派遣社員と書かれていて、「あーだからしんどさがなんかリアルなわけだ」と思った。共感しちゃうんだよね。
    オネエの弟がいい味出してる。
    オネエキャラ出てきたらだいたい良い人なのテンプレみたいになってるけど、君がいてよかった。

    装画 / とみこはん
    装幀 / ベターデイズ

  • 人見知りで何をやってもうまくいかなかったみやこが、父の営む津軽塗を継ぐ決意をしたことで成長していくストーリー。
    スーパーのレジで働いていた頃のみやこは、ひたすら可哀想で、胸が痛くなったが、ゲイの弟の、そんなに辛いならやめちゃえば?という一言に背中を押され一歩を踏み出す。
    始めは津軽塗の難しさに直面するが、徐々にどうしたらもっと売れるか考えるように…
    オランダに移住した弟がキッカケで参加することになったコンテストを期に世界が広がっていく。

    ゲイの弟、ユウくんを筆頭に、工房のお客さんや、近所に住むおばあさん等、面白キャラが大勢出てきてクスっと笑えるシーンも多くて楽しかった。

  • スーパーのレジのバイトをしながら、父親の漆塗りを手伝っている女性。自分の目指すところがわからず、迷っていたが……。最後のほうがうまくいきすぎといえばそうなんだけど、ありそうでもある。

  • 伝統工芸は大事にしたいものだ。
    でも、津軽塗りのプツプツした模様はちょっと苦手。

  • 舞台は青森。主人公・美也子、22歳。
    スーパーのレジ係をやめ、稼業である津軽塗の手伝いをすることに──。
    職人としての腕はいいが、頑固で呑兵衛な父。
    そんな父に愛想を尽かして出て行った母。
    楽天的なオネエの弟。
    この弟(妹?)がとてもいい味で、主人公の美也子よりも気に入ってしまった。

    驚いたのは津軽塗の工程。
    塗り・乾燥・研ぎを繰り返し、完成まで四十八工程、二か月近くかかるらしい。
    唐塗り・七々子塗り、紋紗塗など色々あって、
    その写真も載っていて興味深かったです。

    正直言うと、漆器ってお手入れを考えるとつい億劫で、滅多に使わないんですよね。
    どんな器も、日常に使ってこそ。
    しまいっぱなしの漆器、出してあげなくては…。

    最後は上手くいきすぎた感はあるけれど
    「ジャパン・ディグニティ」ぜひ継承していってほしい。

    すごく耳に残っているのが、登場人物たちの方言。
    方言って温かい感じがして好きなんですが、
    津軽弁はさすがに手ごわい(笑)。

  • 才能より何よりやるかやらないか。続けるか続けないか。自分のことは自分が一番見えていないこともある。どんな人でも周りにいる人も自分の世界の登場人物で、自分にとってありがたい人、自分ひとりで生きてる気になっちゃいけないね。

  • 最初の方は古臭い伝統工芸に夢中で夫として、家長として不適格な父親、それについにキレる母親、田舎でさぞ生きにくいと思われるオカマの弟、そして何をやってもオドオド自信のない主人公という家族の話になんだか暗くて嫌だなぁと思ったけど、読み進むうちに姉弟(妹?)のお互いの思いやりや、不器用な父親の愛情、近所や周りの人のそれぞれ辛い気持ちも抱えながらの温かさにじんわり胸が温かくなった。
    弟が彼と結婚してオランダへ渡ってからは、斜陽産業ともいうべき津軽塗の良さを知ってもらい、再生させるために一心不乱に展覧会の出品作りに打ち込む。
    まぁ上手く行きすぎって感じもなくは無いけど、こちらも息を詰めて応援したくなる、読後感のいい本でした。
    津軽塗の何かが欲しくなった。
    東北へ行ってみたいな。^ - ^

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著者プロフィール

青森県出身。地元で勤務しながら創作活動を続ける。2014年『ジャパン・ディグニティ』で第1回暮らしの小説大賞受賞。2023年「バカ塗りの娘」として映画化。主な作品に『おひさまジャム果風堂』『お手がみください』『みさと町立図書館分館』『みとりし』『ペットシッターちいさなあしあと』『羊毛フェルトの比重』(すべて産業編集センター)、『藍色ちくちく 魔女の菱刺し工房』(中央公論新社)など。

「2023年 『[新版]ジャパン・ディグニティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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