動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

著者 :
  • 木楽舎
4.01
  • (229)
  • (316)
  • (181)
  • (16)
  • (2)
本棚登録 : 2347
レビュー : 295
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863240124

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 新たなタンパク質の合成がある一方で、細胞は自分自身のタンパク質を常に分解して捨て去っている。なぜ合成と分解を同時に行っているのか?この問いはある意味で愚問である。なぜなら、合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」であるからだ。
    合成と分解との平衡状態を保つことによってのみ、生命は環境に適応するよう自分自身の状態を調節することができる。これはまさに「生きている」ということと同義語である。p75

    ヒトの脳は約140億個の神経細胞から成り立っている。神経細胞はニューロンとも呼ばれ、ニューロンは互いに連結して大きな回路を形成している。この回路を電流が走ることによって脳が働いている。
    神経細胞の数は特殊な例を除いて、生涯増えることはないが、回路の連結の仕方はいくらでも新しく形成することができる。繰り返し練習を重ねることによって、ピアノで難しい曲が弾けるようになったり、複雑な器械体操ができるようになるのは、脳内に新しい回路のパターンが形成されるからである。p80

    生命とは機械ではない。そこには、機械とはまったく違うダイナミズムがある。生命の持つ柔らかさ、可変性、そして全体としてのバランスを保つ機能―それを、私は「動的な平衡状態」と呼びたいのである。p163

    【「動的な平衡」とは何か】p231
    生体を構成している分子は、すべて高速で分解され、食物として摂取した分子と置き換えられている。身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられ、更新され続けているのである。
    だから、私たちの身体は分子的な実体としては、数カ月前の自分とはまったく別物になっている。分子は環境からやってきて、一時、淀みとして私たちを作り出し、次の瞬間にはまた環境へと解き放たれていく。
    つまり、そこにあるのは、流れそのものでしかない。その流れの中で、私たちの身体は変わりつつ、かろうじて一定の状態を保っている。その流れ自体が「生きている」ということなのである。シェーンハイマーは、この生命の特異的なありように「動的な平衡」という素敵な名前をつけた。
    ここで私たちは改めて「生命とは何か?」という問いに答えることができる。「生命とは動的な平衡状態にあるシステムである」という回答である。
    そして、ここにはもう一つ重要な啓示がある。それは可変的でサスティナブルを特徴とする生命というシステムは、その物質的構造基板、つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす「効果」であるということだ。生命現象とは構造ではなく「効果」なのである。

    【アンチ・アンチ・エイジング】p245
    「エントロピー増大の法則」:エントロピーとは「乱雑さ」の尺度で、錆びる、乾く、壊れる、失われる、散らばることと同義語と考えていい。
    ⇒秩序あるものはすべて乱雑さが増大する方向に不可避的に進み、その秩序はやがて失われていく。
    →私たちが棲むこの宇宙において、輝けるものはいつしか錆び、水はやがて乾き、熱あるものは徐々に冷めていく。時間の流れの中で、この流れに抗することはできない。

    生命は自分の個体を生存させることに関してはエゴイスティックに見えるけれど、すべての生物が必ず死ぬというのは、実に利他的なシステムなのである。これによって致命的な秩序の崩壊が起こる前に、秩序は別の個体に移行し、リセットされる。

  • 綺麗で読みやすい文章に、生命についての考察が分かりやすく述べられている。
    生命は機械ではない。
    その結論を導く数々の凡例は、読んでいてとても気持ちが良い。

    現在答えが出ているように見えているものに対して、一石を投じる姿勢が小気味いい。

  • 生物とは何か。

    身近なテーマから具体的に生命の成り立ち、「動的平衡」の持つ意味を解き明かしているのだが、不思議な感銘を伴うのは、文章が詩的で、論考が哲学的だから。

    「時間どろぼうの正体」
    「太らない食べ方」
    「生命は時計仕掛けか?」
    「病原体とヒトのいたちごっこ」
    「アンチ・アンチエイジング」

    コラーゲンを摂取すれば体内にコラーゲンが吸収され補充される、というような仕組みに私達の身体はできていない。
    そうした私達の理解の誤りを指摘するにとどまるのではなく、生命の実際の振る舞いから、生命は何を志向するものなのかといった姿まで描き上げている。

  • 福岡先生の文章は読みやすい.広範な専門知識を分かりやすく書けるのは素晴らしい技術だと思う.人間の体をちくわに例えているのが良い.コラーゲンに関して関連商品の空虚なところを次のように記載している.「食品として採取されたコラーゲンは消化器官内で消化酵素の働きにより、ばらばらのアミノ酸に消化され吸収される.吸収されたアミノ酸は血液に乗って全身に散らばっていく.そこで新しいタンパク質の合成原料になる.しかし、コラーゲン由来のアミノ酸は、必ずしも体内のコラーゲンの原料とはならない.むしろ、ほとんどコラーゲンにならないといってよい.」その他のサプリメントも同じことだと思うが、あんなものが売れるのが理解できない.最後の方にでてくる「全身の細胞が一つの例外もなく動的な平衡状態にあり、日々壊され更新されている.」という言葉が結論のようだ.

  • ◆結論 ~ 星の数 ~
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)

    ◆感想文 ~ 読む前、読んだ後 ~

    ◇読む前の感想

     FAJの友人から紹介されて即購入。そして、放置すること約半年。(--;)正月休み中に読みます!・・・と豪語したもの、実際に読んだのは梅雨明けでした。(・・・ごめんなさいごめんなさい。)

    ◇読んだ後の感想

     「生命とは何か」、「生きるとは何か」について、生命工学、生命分子工学の観点からアプローチした本です。私のような凡人にでも分かるように説明する一方で、その深遠さを全く失っていない、素晴らしい本です。(数学エッセイ本の大半は、全くその逆で、平易に説明しようとする余り、大切なことを陳腐なことのように書く傾向があります。・・・ということを、動的平衡を読んで気付きました。)まるで、自分が生物学者にでもなった気分で、大変気持ち良く読み進めることができました。(^^)
     第一章の中で「記憶とは分子レベルで考えるとどういうことか?」の問いには、私の中に眠っていた科学少年の心を激しく揺さぶられました。(ええっ!?いやだっ!えっ!?何?記憶ってどいうこと!?!?・・・って感じです。w)
     その後、シナプス、ニューロン、中枢神経、末梢神経と言った言葉がワンサカ出てきますが、全く苦痛では無く、寧ろ専門用語の海に浸ることが心地良いような、そんな気持ちで読めました。(^^)

     さて、かなり衝撃的な内容がありました。ちょっと箇条書きにしてみます。(カッコ書きは私の感想)

    ・人はなぜ錯誤するか
     (え?科学的に説明できるの?)
    ・コラーゲンを食物からたくさん摂取すれば肌の張りを取り戻すことが出来るだろうか。答えは端的に否である。
     (マジで!?!?!?ご近所のコラーゲンファンのおば様に教えなきゃっ!(汗))
    ・各細胞はそれぞれ徐々に専門化の道を歩み始める。(略)この分化はどのように決定づけられているのか。あえて擬人的な喩えをするならば、各細胞は周囲の「空気を読んで」、その上で自らが何になるべきか分化の道を選んでいるのである。君が脳になるならば、僕は脊髄になる。君が皮膚になるなら、私はその下の支持組織になるという具合に。
     (ええっ!?設計図があるわけじゃないの!?「空気読んで」って・・・。要は、行き当たりばったりってこと!!??)
    ・カニバリズムとういう行為がもたらす生理的嫌悪感の由来に、生物学的根拠を求めるとすれば、そこに病原体に感染する多大なリスクがあるからに違いない。
     (おおっ!その仮説は思い付かなかった!納得♪)

     おまけ
     以下は、意味が分からなかった熟語。
     (勉強になります・・・。(滝汗))
    ・陥穽 ・箴言 ・思惟 ・巷間 ・嚆矢 ・捨象

    (参考:評価基準)
    ★★★★★:座右の書である、または、座右の書とすべきである(10%)
    ★★★★:自分の知り合い、友人、家族全員が読んで欲しい(20%)
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)
    ★★:暇な時間で読めば良い(20%)
    ★:読んでも良いが強く薦めない、他にもっと良い本がある(20%)

  • 生命とは何か、という疑問に対する、生物学者としての持論をつづったエッセイ。
    専門的なことには踏み込んでおらず、読みやすかった。

    「生命とは、動的な平衡状態にあるシステムである」ということです。
    それはそうですが、それだけでは生命と認定される幅が随分と広くなりますね。少なくとも、というところなのでしょうか。

    ともあれ、健康一番、コンビニ三昧の食事を改善したくなりました。

  • やっぱりこの人の文章はエッセイっぽくて読みやすいんだな、と思っていたら、書き下ろしじゃなくて「ソトコト」の連載だったとは。
    今さらながらに知った。
    道理で"サスティナブル"という単語も頻発するわけだ。

    あくまでも著者の主観によるところも大きいが、分子生物学に片足突っ込んだ理論を分かりやすく噛み砕いて、誰にでも伝わる平易な文に仕上げる能力は素晴らしいと思う。
    「生物と無生物のあいだ」と重複する内容もそこそこあるが、基本的な感覚を掴む上では格好の書籍だろう。

  • あんまりだったかな。全体的に「ホンマでっか!?TV」みたいな内容(言い過ぎかも)。

    カッコいいタイトルの割に、よく知られたことをツラツラ綴ってただけな感じ。

    動的平衡っぽいのは最終章で、ほとんどの細胞がその組成を入れ替えながら更新され続けている、と述べた後の「生命現象は、構造ではなく、流れがもたらす効果なのである」と言ってたとこぐらいかな。

  • もう牛を食べても安心かを読んだ直ぐあとだったので、書かれていることが重複しすぎていて胸焼けした。あんまりどの本でも同じこと書いて恥ずかしくないもんなのかな? もっと小綺麗にはまとまっていますが。
    コラーゲン配合の食品を食べても肌はよくならない、コラーゲンだっていったんアミノ酸レベルまで分解しないと吸収されないし、コラーゲンを構築しているアミノ酸はありきたりであらゆる食品タンパク質から補給されるし、コラーゲン自体はむしろ効率よく消化されないタンパク質だと言うのは目から鱗。無知は怖いな。もうだまされないぞ。
    あとドカ食いではなくちびちび食いでダイエットしようと思いました。

  • メモ:『私とは何か』の分人の考えに似た部分があるらしい。

全295件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

青山学院大学 理工学部 教授

「2019年 『マッキー生化学 問題の解き方 第6版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

福岡伸一の作品

ツイートする