動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

著者 :
  • 木楽舎
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レビュー : 295
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863240124

感想・レビュー・書評

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  • 生物を構成する分子は日々入れ替わっている。
    私たちは、自分は自分だ、自分の身体は自分のものだ、という風に確固たる自己の存在を信じているが、実はそれは確実ではない。人間の身体はタンパク質などの分子で構成されている。しかし、その分子はずっと止まっているわけではなく、分子は絶え間なく動き、分解と合成を繰り返している。細胞は日々交換され、一年間の自分と今の自分は分子的に全く別物である。
    つまり、人間の身体は分子の「淀み」でしかない。ほんの一瞬しか“私”は“私”たりえない。生命とはその綱渡りのような微妙なバランスの上にある。それが生命であり、その分子的に動的な平衡状態が、自己を支えている。
    動的平衡とは、移ろう分子を差すのだ。
    では、タンパク質の集合体である肉体になぜ「いのち」が宿るのか。
    本書はそれは何なのか、それに対して私はどうふるまうべきなのか、を問いただした哲学的分子生命論である。

    また、生命の背景にある時間の概念は、どのように移り変わる分子と関係しているのかを考える。

    青い薔薇の不可能性を語る導入部の鮮やかさもさることながら、あまりに身近過ぎるが故に見落としがちな「身体」について、各節で様々な例を上げて“気づき”の視点をくれる。

    人間とは、一本の管である。という指摘はまさに感銘であった。
    口から入った食物は、胃に入ってもなお「体外」にある。つまり消化し、吸収するまでは厳密に体内に入ることにはならないと言っているのだが、その営みが無ければ、人間の身体はただ口から尻まで一本の穴が伸びている以外の何物でもないというのだ。この点でミミズと人間に何の差もない。分化している以外の違いなど原始的なモノと何も変わらないのが人間なのだ。


    生命の存在性の話も非常に興味深いものがあった。前述通り、人間の身体は分子の塊だ。そしてそれは移り変わって常に「淀み」の状態となっている。では、自我はどこに宿っているのか?
    行き着く当然の疑問は、精神論にも近い。
    著者は自我論においてデカルトの「罪」を挙げて論じている。
    哲学的な思考に、生物学的(あるいは分子的)な思考が加わると、自我の「居場所」はさらに流転する。


    それ以外にも多くの記述があり、どれも面白い論である。


    生物学に興味があるけどお堅い理系本はちょっと、という方が読むのには最適。
    この著者の著作から入るときっと楽しめるだろう。

  • おそらく、難解なテーマの内容が、簡潔な文章で書かれており、とても読みやすい。
    理解できた気になってしまうのが怖い

  • 1

  • 大人の時間は何故早いのか問題に対して、基礎代謝が落ちるからというのには説得された。

    2000カロリー(一般的な男性の一日の基礎代謝カロリー)を消費する時間がドンドン掛かってくるようになるので、比例して体内時計が指し示す1日の量も長くなる。
    その積み重ねが実際の時間を大きく突き放して、本人の感覚値では半年そこらなのに実際は1年経ったりする。

    なので、大人は時間が早く感じてしまうということだ。


    <blockquote> 目の前のネズミは昨日と同じネズミだが,その中では恐ろしいスピードで物質が入れ替わっていて,それはまさに「物質の流れ」なのである。シェーンハイマーは「生命とは代謝の持続的変化であり,この変化こそが生命の真の姿である」という,新しい生命観を提唱した。秩序(生命体)を維持するためには,絶え間なく破壊が必要だったのだ。その破壊が行えなくなったとき,生命体は死を迎えるのだ。 </blockquote>

  • 大学では経済学部に入学したのに一番影響を受けたのは生物学だった。温和な老教授の講義で楽に単位が取れるから受講者が多く教室は私語で五月蝿く内容もレジュメを淡々と読むものだったが、題材が生命とは何かということで、動的平衡という言葉がキーワードだった。
    動的平衡の意味を知りこれだと思ったらあとは早かった。生命は分子の「淀み」であり、生命も「環境」であり、全ては相互作用が時間次元で移りゆくことそれ自体の「効果」を指すのだということは一気に連想されたし、理解できた。
    しかしその大元の本書は未読だった。存在を知りつつ10年近く経過してやっと読んでみると、なんだか思ってたよりライトな読み物だ。安易な考え方に陥らないように、と言いつつわりと明確な根拠がないスピリチュアルな、あるいはナイーブな想いの吐露が見受けられる。
    どちらかというと、「アンチ◯◯」に与しそうなタイプの文章だ。なんというか、もうすこし冷静な感じの文章の方が好みだ。
    本書の結びでは、生命は動的平衡である、ゆえに科学の不可能性が明らかになるとするが、個人的には動的平衡という捉え方を得たのだから、まだそれを観測し干渉するだけの科学的フロンティアはあるのではないかという楽観的な考えを持っている。

  • 生物はつねに入れ替わっている
    それが平衡(へいこう)状態

  • 体の構成分子はずっと同じものが使われるのではなく、脳まで含めてどんどん入れ替わってるらしい。同じ種類の分子が入れ替わることで機能している。それを動的平衡と言っている。

  • 人に薦められた本を読む第7冊目
    職場の先輩に薦められ。生命とは?だいぶざっくりとしたテーマを生物学者の視点から、様々な興味深いエピソードを交えながら答える。私達の身体は謂わば「分子の淀み」であり、頭のてっぺんから爪先まで絶えず置き換わっている状態。自らを絶え間なく分解し作り変える事でしかエントロピーから免れる方法はなく、結果それが生命なのである、という考え方は面白かった。かなり表層的な説明で終わってしまったが、考えの取っ掛かりとしては良いのでは。

  • 生命に関する様々なテーマに対し、分子レベルでわかりやすく解説した本
    生物は様々なパーツでできてはいるものの、
    機械とは全く異なるダイナミズムがあり、
    可変性、全体としてのバランスを保つ機能が非常に優れている。
    この機能を動的平衡と表現している。

  • 科学エッセイ。
    思ったほど分かりやすくないし、面白くない。
    この分野に興味がないのかも。
    人間機械論の話で
    カズオイシグロのNever let me goを思い出した。

著者プロフィール

青山学院大学 理工学部 教授

「2019年 『マッキー生化学 問題の解き方 第6版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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