動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

著者 :
  • 木楽舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863240124

作品紹介・あらすじ

生命とは、絶え間ない流れの中にある動的なものである。読んだら世界がちがってみえる。哲学する分子生物学者が問う「命の不思議」。今まで体験したことのないサイエンス・ストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • とても興味深く読みやすいので一気読みしました。
    お馴染み福岡ハカセによる最新の生物・生命論を、一般人にもわかりやすくまとめたコラム本です。本題のごとく「生命」とは動的平衡=絶えず流動しながら均衡を保ち続けるものであると、様々な事例を引きながら興味深く論じています。
    より興味深かったのは、記憶は脳がいま作り上げたものである、年齢を重ねるごとに時間や月日が経つのが早く感じるのは逆に体内時計=細胞の新陳代謝が遅くなっていくのに比し物理時間は変わらないから、人間の脳は乱雑なものにもパターンを見出そうとする、コラーゲンなど非・必須アミノ酸は集中的に食してもタンパク質は結局アミノ酸レベルに分解・吸収され別のタンパク質に作りかえられている、体重増加はシグモイド・カーブを描きゆっくり食べる方が太らない、などなどです。
    また、病原体との戦いの章はスリリングでとても面白かった。ミトコンドリアは本来の細胞ではなく、別の生命体細胞を取り込んだ結果、共生しているものである(どこかで聞いたかもしれない)という話も興味津々でした。
    デカルト?の生命機械論が発展して、ES細胞やら臓器移植が進展しつつある世の中で、筆者は生命の「動的平衡」による揺り返しをとても危惧されています。いわく、生命は分子の「淀み」であり、「身体」は環境が通り過ぎているだけだと。人間の身体は摂取したタンパク質等によって絶えず新しい組織や細胞に置き換わりその中で均衡を保っているんですね。
    最後の象の話はとても感動的でした。

  • 学者にしては異常に文章がうまい事で知られる著者ではあるが、本作はそれなりに学術的なので難解ではあるが、それでも読ませる力がある。コロナパンデミックの中、有名になったPCR検査のことまで登場して、正に今日の状況を予言してような著作である。あらゆる生物の細胞が絶えず生と死を繰り返し平衡を保つ姿は不可思議であり、その解明に至るまで人間は誤りを繰り返してきたようであるが、今回のコロナに対する対応も正解なのかという疑問も出てくる、ただのインフルエンザの新種のような気がするが、政府はそれを認めたくはないであろう。

  • 先に確認してから読めばいいのだが、思ったよりライトな読み応えだな、と思ったら、雑誌連載の文章をメインに組み立てられているよう。一般向けに細胞や遺伝子、分子といったミクロな世界から見た生命の科学の世界を紹介してくれている本。

    中学高校の化学で分子、生物で細胞というものがあるらしい、くらいの理解しか持っていなかった私にとっては、分子と細胞はいったいどういう関係にあるのかが常々疑問だったので、そのあたりを一つの世界として描出してもらったところがとても楽しめた。

  • 「動的平衡」について約250ページかけて解説してくれた。かなり面白かった。食べ物と身体の仕組み(ダイエットの科学)、ES細胞、細菌とウイルスに関しての内容が特に面白い。やはり食べ物は、良いものを、過不足なく、ちょびちょび食べよう。
    生命を機械論的に操作することが何故難しいのか、なぜテレビのように部品1つだけを取り出して直すことが出来ないのか。この何故を発展させて最終的に行き着く生命の複雑さに神秘を感じた。感動した。
    食べ物から摂取する分子が身体のあらゆる組織や細胞を常に作り替え、いっときの淀みとして保たれながら私たちは生きており、「エントロピー増大の法則」と折り合いをつけて私たちは別の個体へと移行する、つまり「死」となる。こうして私たちは時間の流れを受け入れ自然と共存している、とのこと。

    活用メモ
    環境の一部、あるいは環境そのものである私たち生命にできることはごく限られている。生命現象がその本来の仕組みを滞りなく発揮するには、十分なエネルギーと栄養を摂り、サスティナビリティを阻害するような人為的な因子やストレスをできるだけ避けることである。つまり「普通」でいることが1番であり、私たちは自らの身体を自らの動的平衡にゆだねるしかない。

  • 再読 マイバイブル
    たまたま雑誌ソコトコに掲載されている文章を読んで著者のことを知ったのが10年ほど前
    これを読んで「死」そのものは怖くなくなった
    (死に付随するであろう苦しみとか痛みは怖いけど)
    科学的思考の面白さを知った一冊

  • 線形から非線形へ、機械論から動的平衡へ。これから益々重要になってくると感じている。物事のダイナミクスを感じとること、そして自分自身のダイナミクスとの繋がりも感じることを意識していきたい。

  • Podcastで愛聴しているJ-waveのThe Lifestyle Museumに何度か出演しているの福岡先生。 大体の話はすでに聴いていたけれど、ミトコンドリアが別の生命体由来のものであったのには驚いた。とても興味深い話をわかりやすく解説していて、嬉しかったです。

  • よく考えたら、ものを食べて分解してそれを自分の一部に変換するってすごいことですよね…。
    「生きている」ということが全ての出発点だなと思いました。まさに命あっての物種。当たり前のことなんですけど、ちゃんとその意味を認識してなかったなー。
    あらゆる頁がおもしろかったので、しばらくしたらまたゆっくり読み返したいです。

  • 分子生物学者・福岡伸一ハカセの生命をめぐる論考。
    ざっくりとトピックを書き出すと、こんな感じ
    ・人類という種を定義する際に頻出する「思考」や「認識」とは、どういうメカニズムなのか
    ・身体の構成という点で、食事とは何かを分子生物学的な視点から
    ・身体を構成する細胞について/生命の設計図である遺伝子について
    ・「分子の淀み」としての生命、機械論的解釈からの脱却"動的平衡"

    面白かった
    理系的、分子的・生物学的知識がほとんどない私にとっては、悉く目から鱗状態。
    いやーよくできた話すぎて眉唾ものに思えるくらい笑
    自分個人の生ではなく人類・生物全体としての生を考える視座はあまり触れたことがなかったので、新鮮でした。

  • この本の面白さは、細部に徹底的にこだわりながらも、「生命とは何か」という巨大な問いかけからの視線を失わないところにあるのだと思う。最終章「生命は分子の『淀み』」は論考でありながら詩的でさえある。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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