- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863241121
作品紹介・あらすじ
話題発酵で3万部突破!
お酒、味噌、醤油、麹、イースト、藍に乳酸菌……話題の発酵デザイナーが、ミクロの世界から日本のルーツや社会現象を捉え直す!
感想・レビュー・書評
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装丁がまず最高!60年代~70年代のヒッピームーブメントっぽいイラストがなんともぐっと来ます。
僕が発酵というものに興味を持ったのは何と言ってもぬか漬けです。ぬかに塩を入れて混ぜているだけで乳酸発酵する不思議な代物。なんで腐らないでこんなに美味しいものが出来るのでしょうか。やってみると簡単なのに、少しの変化で味が変化して不味くなってしまうんですね。まさに生き物を飼っているような気分でした。
これは筆者であるデザイナーが何故か発酵にはまり、発酵食品業界専門のデザイン、プロデュースに特化するという変人ルートから、発酵にまつわる事をフリーに語っていく良作です。
ハウツー要素は無いのですが、味噌作ってみたくなるワクワク感が有って、その先を見たくなるような本であります。
日本酒、ワイン、味噌、醤油など色々な発酵食品の作り手が沢山出てきてとても興味深いです。一番の衝撃は甲州にぶどうが伝来したのが1300年前という事でした。この100年くらいで伝来して取り入れたのかなと思いきや、相当前から栽培していたようです。
地酒としての葡萄酒も昔から飲まれていたそうで、まさに驚天動地でした。
ラフな文章で親しみやすいので好き嫌いあるかもしれませんが、情熱は非常に感じられて僕はとても好きな本です。ビバ発酵! -
会社で腸活に力を入れていく動きがあり、ちょうど発酵について知っておくと良いかな〜という軽い気持ちで読み始めた。結局腸活ではなく本当に発酵に関する内容だった。
筆者の肩書きは「発酵デザイナー」で全国各地のメーカーなどを訪れて学んだり、ワークショップで味噌作り体験を行っていたり、とにかく発酵にまつわることに携わっている。
発酵というと味噌やヨーグルトなどをイメージするが、その2つは違う発酵をしていて味噌や醤油は麹菌が働いているが、ヨーグルトは乳酸菌によって発酵したもので全く違うものだということが驚きだった。
冷静に先祖は腐らせているものをよく食べたなと思ったし、日本に納豆を定着させた人もすごいなと感じた。
読みやすい書き方だったので知識がなくても入り込める。
とにかくお酒の話になった途端に興味がなくなってしまい後半失速してしまった… -
一度知り合いに勧められてこの本を読んだが、その時は全然ピンと来なかった。
それから数年経ち、腸内細菌と発酵食品に興味を持つようになり、改めて読んでみるととても発見が多かった。
特に4章の「ヒトと菌との贈与経済」はオススメ。
菌が提供する「気前の良さ」が世界に平和と秩序をもたらしいるっていい話だな。
反対に「憎しみ」と「ずる賢さ」が世界に争いと混沌を生み出してることは、今現実に起きてる戦争を見ていると誰もが頷ける真理だと思った。 -
発酵文化人類学を読んで
この本との出会いは、蔦屋書店にて各ジャンルのコンシェルジュたちが、各々おすすめの本を紹介する企画でみつけたことがきっかけ。
文学コンシェルジェが選んだ本はどのような者なのであろうと気になり、購入しました。そして中身を見ると、「発酵文化人類学」と書かれている。なんだ?このタイトルは?一体どんなことが書かれているのだろうか?気になって仕方がありませんでした。
読み始めてみて、小倉ヒラクさんのフランクな話口と内容の密度の濃さに、やられてしまい、ページを繰る手が止まりませんでした。
そもそもこの発酵文化人類学という言葉自体が、この小倉さんが生み出した造語であるというのがもう面白い。そしてこの方の職業も発酵デザイナーというのだけれど、これも生み出した職業。やることなすことめちゃくちゃかっこいいなと思いました。
この発酵というのものは、他のさまざまなものと繋がりを見せていて、例えばITの側面からも、プログラミング的な理論を用いて、遺伝子の組み替えを行ったりする。人食いバクテリアを人類に有用に活用できるように改造しちゃったりなんて、少しSF味のある切り口からの話もロマンあふれるし、面白かったです。
あとは、ニューギニア諸島の「クラ」という交換文化。これが面白かったなー。
主に腕輪と首飾りを交換するのだけれど、それ自体に意味はなくて、交換する際につける付加物に意味があるのだそうだ。その付加物はもらったものより豪華でなくてはならない、つまりインフレがえげつなく進む。かつこのゲームに参加したらやめられないというすごいルール。こんなの途中で破綻するかと思いきや、この交換文化自体が、円滑なコミュニケーションを図るのだそうだ。すごいよね、気前よく豪華な付加物をあげることで、争いも無くなるし、富の蓄積もなくなるので傲慢な人間も現れなくなる、よくできた文化だなと感心しました。
試しに取ってみて良かったと思える書籍だったし、この企画をしていた蔦屋書店には大いに感謝ですね。
さて、次の本読もう。 -
味噌も醤油も大好きだし、発酵の潜在能力の高さを知ることができてよかったけど、わたしにはちょっときれいすぎる人たちのお話だった。そこそこ後ろ暗い人たちの "コンタミネーション" がある社会の方が、わたしは好きだな。
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「マリノフスキーやモースおじさんが発見した「文化人類学的」贈与の世界は、第2次世界大戦以降、過剰なエゴによる個人主義と等価交換が引き起こした争いで消耗した近代西欧社会に対するカウンターカルチャーの象徴になった。
その再来を、21世紀の日に生きる僕たちは「発酵的」贈与の世界に見出だし始めている。個人対個人の、市場原理に基づくコミュニケーションではなく、共同体の中で、愛と贈与の原理に基づくコミュニケーションの可能性を夢見ている。ただひとつのモノサシで規定される価値観で他人と競争するのではなく、多様性のなかでお互いの個性を認め合う世界を求めているのだ。
これまでの資本主義と違う、贈与の仕組みで動く世界を「ギフトエコノミー(贈与経済)」と呼ぶ。これはモースおじさんの言う「全体的給付」の世界観で形成される経済のこと。個人の損得を超え、お隣さんに気前よく贈り物をすることで回っていく経済のカタチだ。
それは別に夢物語ではなく、ボランティアや地域コミュニティ、そして家族の中で当たり前のように存在している。モースおじさんの贈与理論を経済学において発展させたハンガリーの経済学者、カール・ポランニーは、
「経済システムと市場を別々に概観してみると、市場が経済生活の単なる付属物以上のものであった時代は現代以前には存在しなかった、ということがわかる。原則として、経済システムは社会システムのなかに吸収されていた」
と言っている。つまり現在における資本主義経済以前には、贈与経済「しか」なかったということだ。何かを交換する時は、必ず社会を構成するための「副産物」がいっぱいくっついている。マナーや愛や祭りや見栄が複雑に絡み合い、交換することで社会秩序が保たれる時代。「経済が社会システムの中に吸収される」ということは、つまり経済行為を通して「他人同士が仲良くなる=秩序が形成される」ということだ。
交換を繰り返すごとに強者はより勝ち、弱者はより負ける。そんなシビアな近代の市場経済とは真逆の可能性が贈与経済に託されている。周りを蹴落とす強い個体で満ち溢れた環境は、はたして住みよい世界なのだろうか」
小倉ヒラク(2017), 「発酵文化人類学(木楽舎)」, p190-191 -
タイトルと表紙からはお堅そうな専門書の印象がありますが、素人でもとても読みやすい一冊でした。
発酵を通して地方や日本の文化にスポットを当てるアプローチを取りながら、これからの将来どうしていくべきか考えさせられました。
これまでお酒にはあまり興味もこだわりもなかったですが、お酒の醸造方法や醸造家のこだわりなどが詳しく書かれていたので、これからは違いを意識しながら色々なお酒を飲んでみたくなりました。 -
ヒラクさん@o_hirakuの『発酵文化人類学』スゴ本すぎて畏怖の念も...。発酵について門外漢すぎるのだけど、タイトルにあるように文化人類学も基底に据えているから知的好奇心がビンビンに沸き立つ。本の作り方、デザイン、ディストリビューションまで瞠目の一冊!
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発酵と文化人類学を一気に学んだ本。頭のもやもやがスッキリしました。