忘却の引揚げ史《泉靖一と二日市保養所》

著者 :
  • 弦書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863291553

作品紹介・あらすじ

戦後日本の再生は、ここから始まる。
いわゆる戦争問題は、本土大空襲、原爆、沖縄戦を中心に語られることが多い。さらに、戦後史の重要問題として、「敗戦後の引揚げ」があるが、この問題はほとんど研究対象にならず忘却されてきた。
本書は、戦後最大の戦争犠牲者=引揚げ者の苦難のうち、大陸でソ連軍等から性暴行を受けた日本の女性たちを救護(中絶処置、性病治療)し、戦後を再出発させた人々に光をあてた労作。さらに、その中心人物で、〈災害人類学〉の先駆者・泉靖一を再評価する。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の取材量がはんぽなく多いためか、矢継ぎ早にエピソードが紹介されて悪く言えば話があちこちにとんで、非常に読みづらいものとなっている。なので内容としては凄まじいものがあるが、タンタンとしており感情移入がしにくい。それがかえって良いのかもしれないほど凄まじい内容である。
    戦後の引揚げは舞鶴が岸壁の母で有名であるが、人数的には博多、佐世保が圧倒的に多かったらしい。おそらく舞鶴は長期にわたりの引揚げとなったのであろうが。
    また泉靖一というのちに著名な学者となられる方の行動力で作られた二日市保養所はまさに戦後の歴史に埋もれた真実であろう。ロシア兵などに強姦され妊娠した引揚げ者のご婦人に対し、秘密裏に国家の下、堕胎を行った施設である。2年間で約500人の堕胎を行ったとされている。記録は処分されたので口頭などによるものである。
    全国で同様のことが行われ、2000人規模になるとの事。ロシア人の婦女暴行はすさまじいものであり、1日に5,6人に強姦されることも珍しい事ではなく、10人に2,3人は舌を噛み切って自殺したり、青酸カリで集団自決もあったとの事。多くの被害者は戦後も口を閉ざすのは日本人の習性であり、だれもが知らない歴史となっている、また、満州からの引揚げ者のうち25万人が亡くなっており、これは東京大空襲の10マン人を大きく超え、広島長崎にならぶような人数であるが、多くの日本人にその認識はない

  • 日本の一番長い日と無名の日本国民が、混乱の極致にあった「ソ連が満州を侵攻した夏」は、帝国崩壊の同時代記録として読まれなければならない

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著者プロフィール

1949年7月、鹿児島県国分市(現在の霧島市)生まれ。大阪大学法学部卒。毎日新聞東京本社外信部、ソウル支局、論説委員等を歴任。韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授。2015年定年退職し、近現代史、韓国、台湾、映画を中心に取材執筆中。著書『私のコリア報道』(晩聲社)、『忘却の引揚げ史 泉靖一と二日市保養所』(弦書房)、『日本統治下の朝鮮シネマ群像―戦争と近代の同時代史』(弦書房)、同韓国語訳『植民地朝鮮のシネマ群像』(プリワイパリ出版社、ソウル)。

「2020年 『占領と引揚げの肖像BEPPU』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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