今宵、心をきみにゆだねて (ヴィレッジブックス F カ 5-2)
- ヴィレッジブックス (2008年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863320840
感想・レビュー・書評
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「黒髪のセイレーン」のヒロインの異母弟、ドラコート子爵がヒーロー。
ヒロインとヒーローの出会いのきっかけが最低すぎて、ヒーローの印象相当悪かっただろうな(笑)
前半はだらだら読んでたけど、中盤ヒロインが素直になってから面白くなってきた。
「ああ、セシリア」「くそっ、セシリア」とヒーローが何度もヒロインの名前を呼ぶのがツボ。
ヒロインに対する気持ちがダダ漏れで読んでいてニヤニヤする。
終盤のヒロインの女の勘はさすがでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
放蕩者のろくでなし子爵が、間違えて押し倒した女性を忘れられず……というあたりはよくある話だけど、途中経過がユニーク。そしてやんちゃでロマンス小説には珍しく流されないヒロインがいい。当時はストッキングも特注だったのか……と思ったけどそもそも当時は既製品がなかったのね。
主任警部ド=ローランとその愛犬ルシフェル、デイヴィッドの近侍のケンブル、セシリアの小間使いのエッタなど脇役がそれぞれにキャラ立ちしているので、会話シーンが面白い。
殺人事件に絡んだ謎解きの方は怪しい人多すぎでギリギリまで犯人が全然分からなかったけど、被害者になった薄幸な女性達の境遇には胸が痛んだ。(しかしここに書かれた民間の避妊法は本当に当時知られていたものだったんだろうか? 気になる) -
放蕩者のドラコート子爵は愕然とした。彼が娼婦だと思いこんで抱こうとした女は、没落した貴族の娘だったのだ。自分の勘違いを恥じると同時に相手に心惹かれた彼は、セシリアというその娘に求婚する。が、にべもなく拒絶され、屈辱を味わった。6年後、さる伝道所の管理をせざるをえなくなったドラコートは、意外なことにその伝道所でセシリアが慈善活動を行っていることを知る。彼が知らなかったのは、自分だけではなく彼女も6年前の出会いを忘れられずにいることだった…。『黒髪のセイレーン』のヒロインの弟を主人公に据え、19世紀のロンドンを舞台に描くロマンス・ノベル巨編。
結局のところ、最初からヒーローはヒロインに惚れていたんだなと。放蕩者の仮面を被ったヒーローが実は誠実で頼りがいのある人物だと、ヒロインと一緒に気づいていく過程が楽しい。ヒーローの出生の秘密は確かに大変な醜聞だけど、ヒロインへの愛に目覚めてから乗り越えていこうとするヒーローが良い感じ。またヒロインのしっかり地に足をつけた物言いが小気味良い。したいことをする、と言える立場は寡婦ならではだろうけど、安易な方に流されず地道に活動するヒロインは確かにヒロインの価値がある。そんなヒロインを堪らなく好きになってどんどんヘタレていくヒーローが、またいい。