- Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863322394
感想・レビュー・書評
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私が『monkey business』を買ったり立ち読みしたりするのは、何も柴田元幸さんが編集人だからではなく、これ(と岸本佐知子さん『開かずの日記』)が読みたいから!という連載の単行本。表紙・扉・目次デザインともクールで、本編に進むのももったいない(笑)。
私は勝手に、「カフカをマンガにするなら、水木しげる先生か楳図かずお先生!」と思いこんでいたので(笑)、この線は意外でした。硬質で、ちょっとユーモラス、それに浮遊感のある絵柄。池内紀さんの訳を底本として大胆にトリミングされており、「脚本・池内紀、演出・西岡兄妹」の映像を見ている感じ。カフカは「不条理」でくくられてしまうことの多い作家さんですが、不条理ではないと思う。理屈が通っていても、それを全部見せないから、「ワケわかんねー」的になるような。美しい言葉で、「貴方はこのようなことを考えたことがないとでもおっしゃるのですか」と、ひたひた詰めていく怖さ、イヤさは、絵柄とともにくる(笑)。どの作品もラストの1文が効きすぎ!
そういったイヤ感を漂わせながらも、「家父の気がかり」は微妙にポップなSF、「バケツの騎士」は哀しさをこめたメルヘンのようにも読めます。「兄弟殺し」は残酷でうっすら甘美なノワールとして完璧だと思うけど、個人的には「流刑地にて」が、思いきった演出も、あとをひくイヤげな感じもマイ・ベスト。
文章で読んだときの感触を大事にお持ちのかたなら、正直、「えっ?」と思うところもおありかと。でも、想像を超える(と思う)ものに会う衝撃はかなりのものなので、これを無視するのは惜しいように思います。
-----[2010.5.14 未読リストアップ時のコメント]-----
猛烈に欲しいんだけど、自分の中でブレーキをかけている本(人にすすめまくってるくせに:笑)。カフカの小説をマンガで…という、なかなか強烈な企画。硬質な線とキャラ造形はマンガというより画文で、マンガに抵抗のあるかたの鑑賞にも十分堪えられると思います。なんたってカフカだし、サブカルじゃないと思うけど…結構そちらのカテゴリにはまって売られている本。連載元の『monkey business』だって、どっぷりアメ文(だと思う)なのに〜。岡崎京子『うたかたの日々』、横山光輝『三国志』、大和和紀『あさきゆめみし』に匹敵する文学マンガだと思いますが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カフカと西岡兄妹の相性は、好い。