ナイン・ストーリーズ (ヴィレッジブックス)

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感想 : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863323957

作品紹介・あらすじ

サリンジャーが遺した最高の9つの物語。35年ぶりの新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 実に血腥い作品集だ。傑作選、というのとも違う。纏まりという点で言えば「バナナフィッシュ日和」「テディ」のようなスケッチや他愛もないミニマリズム、「笑い男」の病的な作り話ぶり、「エズメに捧ぐ」の退廃した世界などを概観すれば分かるように支離滅裂で、「九つの話」と表現するしかないことに気づかされる。この支離滅裂さがしかしサリンジャーの味なのだろう。基本的には大人と子ども、男と女の対比が「ストーリー」を浮き立たせており、何処に視点を置くかによって「恋愛小説」「シュール」「戦争文学」と違った味わいを抽出し得る。凄い

  • 「バナナフィッシュ日和」で始まり「テディ」で終わる構成がまず良かった。グラース家の人たちの話はやっぱり知ってる人たち!とときめくけど、この本では「コネチカットのアンクル・ウィギリー」が好きだな。ただふたりが話しているだけなのに読ませられてしまうふしぎ。
    グラース・サーガの長男シーモア・グラース-Seymour Glass-は”see more glass”でもあったのかという、サリンジャーならではの言葉遊びにちょっとテンション上がりました(バナナフィッシュ日和)

    訳者あとがきを読んでようやくぴんときたのだけど、サリンジャーの小説がふしぎかつすごいのは、「物語」になる直前の「個人」がそこにいるからなんだなあ。
    最後まで読んで「で、何?」と思うってことはわたしが無意識にその小説に「物語」を求めていたということで(だから何かを期待している)
    でも実際期待したとおりの展開が起こることは実生活で考えたらそう無くて、そこにあるのはただ会話であったりその合間にあるちょっとした動作、中座であったり、そういうことが積み重なって一日が成り立ってるわけで、サリンジャーにはそこがよく見えていたのだろうなと思った。
    結局「起こったこと」に対して何かを後付けで考えて物語にしていくのは読者の方の仕事なのかもしれない。

    サリンジャーの書く会話はほんとにすごい。こんな「ありそう」且つ「なんか変」な会話を書ける人はいない。
    すごく演劇的だし、見習いたいな〜と、勝手に思ったのだった。

  • 『バナナフィッシュ日和』
    室内での混み合った回線を通した会話から一転、はつらつとした子供と海へ場面が移り、またエレベーター・室内と閉じられた世界へ戻るといった構成のギャップが海の無垢さと鮮烈さを惹きたてているようで強く印象に残った。
    シーモアは自分が六本もバナナを食べたことで穴から出られなくなったことに気づいたのだろう。穴やバナナというのがシーモアを煩わせる事象の何らかを暗示しているのだろうが、あくまで抽象的にとどめたのが魅力になっている。

    『アンクル・ウィギリー』
    ウォルトを好きな人の目線で語られるので、彼がたいへん魅力的な人物に映る。
    元同級生、社会人と専業主婦の友人同士。比較的生活を自分の自由にできる社会人と違い、専業主婦は家庭が満足いくものでないと鬱屈するのだろう。

    『エスキモーとの戦争前夜』
    ぽんぽん飛ぶような会話の応酬がおもしろい。エリック、フランクリンと突然これといった説明もなく名前が飛びだすのがツボだった。
    エリックは初対面の人間へ真実の話を聞かせたのだろうか。コクトー版美女と野獣のように借金か何かで家財を持っていかれたという可能性もなくもない。
    セリフも男二人の挙動も愉快だったが、笑える一辺倒ではなく戦争や仕事に関する暗い影も差している。
    ジニーは死んだひよこに対する感情の類を、社会からドロップしているフランクリンへも感じたのかもしれない。

    『エズメに』
    過去が過去とならないPTSD。過去からのエズメの手紙。壊れた時計。日本語にはない時制を駆使した原文ではどのようになっているのか気になった。

    『ド・ドーミエ=スミス』『テディ』はキリスト教と哲学色が特に強く、どちらにも明るくないので読み取ることができないのがもどかしかった。
    聖書の人物や宗教画など含意されたものがあるのだろうけど、知識がないので字面を追うだけとなった。
    "タイルの壁四方に反響しているかのように"オチがいい。

  • 短編小説と長編小説とは全く別物であるように思う。ストーリー展開や、描写の積み重ねで徐々に引き込んでいく長編と異なる、なにかしらの魅力がない短編は、長編のなりそこないでしかない。

    この本はまさに短編小説。

    特異な緊張感によって一瞬で引き込まれ、短さを感じさせない重たさがある。こんなに訳がわからないのに再読したくなるのはなぜだろう。

  • サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』の柴田元幸訳。
    タイトル通り9篇の短編から成るが、とにかく頭の痛くなる作品でお世辞にもすばらしいとは思えない。3篇目くらいでうんざりしてこない人はいないのでは。
    村上春樹をひどくこじらせたような文体で、スイーツな頭の人物たちが全然噛み合ってない話をしてたり(これが無性にイラつくのだw)、狂った人物が出てきて訳のわからないことしたりして、筋も幕切れも意味不明で唐突なものばかり。
    特に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が好きな人が読むとギャップに苦しみそう。
    さっぱり訳がわからなった作品。

  • 「バナナフィッシュ日和」と「笑い男」は情景が目に浮かんできやすいのか、親しみやすかった。とくにバナナフィッシュ日和の情景描写のことばえらびがすてき。「エズメに――愛と悲惨をこめて」と「テディ」が個人的にすきです。エズメもテディもちょっと大人びた言葉づかいが生意気でいとおしい。テディの語る、愛することについての台詞にかなり、ぐっときた。"二人とも僕の親なんだし、僕たちはみんなたがいのハーモニーの一部なんだし"

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  • 1974年の野崎さん訳を読んだ後、読書会でみんなの話を聞いた上で2009年の柴田さん訳を再読。柴田さんの訳が読みやすかったのと、読書会でみんなの話を聞いた直後だという事もあり、こちらの方はかなり楽しく読めました♪全く同じ本なのに訳の違いでここまで感想が違った事にビックリ!!

  • 2020.7.25
    テディのオレンジの皮

    「これは信念の表明であって、私への反論ではない。 」
    「あらゆる痛みのゾーンが互いに依存しあっているように思えた。 」
    「マッチで火をつけて紐を燃やして開けた。小包を開けるより紐が燃え切るのを見る方が興味があったが、結局開けてみた。 」
    「幸福と悦びの一番大きな違いは、幸福は個体で悦びは液体ということである。 」
    「でもそれは単に起きること全てに大して名前や感情を持っているからにすぎません。」

  • バナナフィッシュ日和 / コネチカットのアンクル・ウィギリー / エスキモーとの戦争前夜 / 笑い男 / ディンギーで / エズメに――愛と悲惨をこめて / 可憐なる口もと 緑なる君が瞳 / ド・ドーミエ=スミスの青の時代 / テディ

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