- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863851184
作品紹介・あらすじ
笹井宏之第三歌集
佐賀新聞読者文芸欄2004年10月~2009年2月掲載の全歌と新たに発見された歌を含む395首を収蔵
「佐賀新聞」に託した愛する世界
この世と、この世ならざる者との間で生じる思索を、言葉の音楽に変えていった青年の本心が、どの歌にもじっくりと座っている。
東 直子(解説より)
監修者選短歌五首
葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある
八月のフルート奏者きらきらと独り真昼の野を歩みをり
雨といふごくやはらかき弾丸がわが心象を貫きにけり
ひろゆき、と平仮名めきて呼ぶときの祖母の瞳のいつくしき黒
木の間より漏れくる光 祖父はさう、このやうに笑ふひとであつた
感想・レビュー・書評
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笹井宏之の作品をこれで全部読んだことになる。なんかもったいない気分だ。読んでいる最中はいつのまにか夢うつつになったり、歌が浮かんできて短歌を詠んだりしてたので、最後まで読むのはなかなか時間がかかった。
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九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1450855 -
この歌集は笹井宏之さんが、2004年から2009年に佐賀新聞に投稿された歌を編んだものだそうです。
佐賀新聞に掲載された全251首と、掲載されなかった歌も何首か載っています。
○八月のフルート奏者きらきらと独り真昼の野を歩みをり
の歌は実は佐賀新聞には選ばれず、笹井さんのパソコンの中に眠っていた歌だそうです。
この歌集の特徴としては旧仮名づかいを使用していること、家族を喜ばすという動機で詠まれたものが多いということがあるそうです。
八月のフルート奏者とは8月1日生まれのまさに笹井さん自身を詠んでいるのかと思われます。
特に好きだった歌を以下に。
○花束をかかえるように猫を抱くいくさではないものの喩えに
○焼芋を売るおるひと売られおるひと どちらも芋のごとしあたたかし
○日本語が熟れてゆきます うすあかりする古書店の春の詩集に
○告白のはじめの言葉はらはらと落ちるゆきやなぎの散歩道
○わがうちに散る桜あり 君の名を呼ぶとき君はきらきらと風
○涙にも温度があるといふことを頬のあたりに記憶してゐる
○昏迷の砂漠に声は響きつつ哀しからずや浜崎あゆみ
○どうしてもかなしくなつてしまひます あなたをつつむあめのかをりに
○午後きみはひかりのかごを編んでをり 居眠りをするわれの傍ら
○たましひの還る世界に似て遥か インターネットという混沌は
○ペットボトル半分ほどの優しさを生きとし生けるもの全てへ
○ゆつくりと私は道を踏みはづす金木犀のかをりの中で
○春の橋越えてわれへと降りそそぐひかりの子供たちの歓声-
こんにちは(^_^)/
まことさん♪
また、素敵な詩集を読まれたのですね!
私はもう少し修行してからにします( ^-^)
いい...こんにちは(^_^)/
まことさん♪
また、素敵な詩集を読まれたのですね!
私はもう少し修行してからにします( ^-^)
いいなと思ったもの
焼き芋を売るおるひと・・・・
告白のはじめの言葉・・・・・
午後きみはひかりのかごを・・・・・
情景が目に浮かびます。焼き芋をフーフー言っているところ、食いしん坊ですね! 微笑2022/08/11 -
アールグレイさん。こんにちは♪
歌集は修業しなくても、いつでも読めます♪
アールグレイさんの歌集レビューも楽しみにしていますよ!
...アールグレイさん。こんにちは♪
歌集は修業しなくても、いつでも読めます♪
アールグレイさんの歌集レビューも楽しみにしていますよ!
私が、3首選ぶなら、どれもいいので迷うけど、
○どうしてもかなしくなつてしまひます…
○午後きみはひかりのかごを編んでをり…
○ゆつくりと私は道を…
気分によって変わりそうです♡
○2022/08/11
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やわらかく、どこか純真無垢な短歌。
君でなければならなかったのだろうか国道に横たわる子猫の背
携帯のカメラでは上手く撮れぬからメールに書いた「夜空を見なよ」
香りは白木蓮とミルクティーあなたの目蓋おろし つつ春 -
My friend gave me a chance to read his book. I love to think what he thought when he chose the words that I read today.
前の世に出逢ひてゐたるあかしかと思ひぬ なにか君が懐かし
ひたすらに瞳の奥を確かめる あなたは炎かもしれぬから
君といふ空間にふと立ち入れば雲ひとつなき夕ぞらにあふ
涙にも温度があるといふことを頬のあたりに記憶してゐる
呼び合える名があることの嬉しさにコーラの缶の露光る夏
気兼ねなく好きだと言えるその人の手は僕よりも少し冷たく
どうしてもかなしくなつてしまひます あなたをつつむあめのかをりに
「いだきあふ、ひとつになれぬゆゑ」といふ歌曲を思ひつつ服を着る
伝はらぬ思ひがひとつ胸中に絵画のやうに掛かりてをりぬ
町中の赤信号の点滅がかなしくて思はず「あ」と言へり
君が差すオレンジ色の傘を伝うたった一粒の雨になりたし -
旧仮名遣いの歌たち。
それでもまた、どこかコケットで透明。でもなんだかより儚げ。
好きな歌
どうしてもかなしくなってしまいます あなたをつつむあめのかおりに
せつなさに心が洗われます。 -
26歳で夭折した青年の残した歌たち。
短歌のことはよくわからないけれど、あふれる出る豊かな感受性を知性でコントロールし「言葉」で切り取りハラリと差し出しているようで。
「あすひらく花の名前を簡潔に未来と呼べばふくらむ蕾」
「ゆっくりと私は道を踏みはづす金木犀のかをりの中で」
「かなぶんであそぶ子猫をみてゐたり破壊とはこんなにも純粋」