緑の祠 (新鋭短歌シリーズ10) (新鋭短歌 10)

著者 :
  • 書肆侃侃房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863851320

作品紹介・あらすじ

冷徹な青春歌
感傷や郷愁をふりほどき、今ここにある光を掬う。
東 直子

自選短歌五首
物干し竿長い長いと振りながら笑う すべてはいっときの恋

泥のしみこんだ軍手を手にもって立っている次に見る夢にも

地声から裏声に切り換えるときこんなにも間近な地平線

朝焼けのジープに備え付けてあるタイヤが外したくてふるえる

若いうちの苦労は買ってでも、でしょう? 磯の匂いがしてくるでしょう?

感想・レビュー・書評

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  • すごい好きだ。歌集を読んだことでこのひとの元にある言葉をより知れたのもよかった。草原とか草むらの存在しているところがいい。いくつかの歌を合わせてすっと心のうちに入ってくるものもしばしば。

  • 海、草原、天候のような抽象度が高い語彙が自分にはあまりハマらなかった。付箋を貼った歌は生活感のある歌が多い。たぶん、五島諭らしくない歌ばかり好きになってる。

    ・もう一度話したいだけ コンビニのユニセフ募金箱に10円
    →募金する動機のほとんどは、その場でのいい格好したさだろうな。そんな不純な10円の積み重なりで、1人の命が救われている。その2つの場面の繋がらなさに悪い笑いをしてしまった。下心と飢餓は程遠いな。ありがとうを求めてボランティアをするな、って話を聞くことがあるけど、この歌の主体は、そもそもアフリカの子からのありがとうを求めてもないし、到底ありがとうに及ばない人だから嬉しい。

    ・一年に五回くらいは考えを整理するのに俳句を使う
    →この歌も定型で、かっちりが好きな主体なんだろうなと可愛らしさでホッコリする。手帳とかに書くのかな、たぶん趣よりも型を優先した、標語っぽい俳句なんだろうな。

    ・夏の本棚にこけしが並んでる 地震がきたら倒れるかもね
    →こけしが倒れる時の滑稽さにまずは笑う。あと、この歌には超現実の不思議さがある。たぶんこの「かもね」の出来事は起こらない。こけしは東北名物だから冬っぽいし、7、8月に地震は起こらなそう。

    ・大吉を引けばいいけど引かないと寂しさが尾を曳く、でも引くよ
    →この主体は過去に友達とおみくじ引いて、自分だけ末吉みたいな事があったんだろうし、その一年はちゃんと寂しさが尾を曳いてたんだろうなと思うとその繊細さでめでたい正月を乗り切れるのか心配してしまう。まぁ、引くと曳くで上手く言えて1人で笑えてるなら大丈夫か。

    ・買ったけど渡せなかった安産のお守りどこにしまおうかなあ
    →「売ります。赤ん坊の靴。未使用」を想起させる。そのパターンとも読めるし、ただただ渡せなかったパターンとも読める、産休入っちゃったとか。とりあえず、安産のお守りみたいな、狭い用途のお守りって不便なんだなと思った。他の人に使い回すのも違うし、自分で使うと厄介事になるし。いらね〜って思われてる場面が安産のお守りにもあるんだな。

    ・月光が差していて生け垣がある ビートが途切れないように歩く
    →共感した歌。月光とか言っちゃう日は、ビートとかも言っちゃうよね。ただの歩くリズムを。




  • 短歌選と返歌による感想。五島諭 短歌 久々に銀だこのたこ焼きを買う雨の大井で大穴が出る シャワーでお湯を飲みつつ思うぼくの歌が女性の声で読まれるところ 「失態を演じる人」の「演じる」のあたりで五月雨が川をなす 涼しげな香りのどくだみ化粧水ただそうやっていればいいのに 死のときを毎秒察知するようにホースの中を水が走るよ 祈るときますます強く降る雨の撥ねっかえりでまっ白い道 p20 こないだは祠があったはずなのにないやと座りこむ青葉闇 返歌 祠ならあっちにあるよと指をさす緑の藪のそのまた向こう

  • 一角 という同人誌の「わたしの五島さん」というエッセイを読んで、知らない五島さんに興味がでた。現代の短歌というものを本で読んだのはそのときがはじめてだった。友人が「おもしろいよ」と貸してくれ、あまりにおもしろかったので自分でも買った。

    そこで紹介されていた
    海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海をみている
    地声から裏声に切り替えるときこんなにも間近な地平線

    の二つがやっぱり印象的です。平安時代の人が読んでも「わかる〜」って言ってくれそう。

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著者プロフィール

1981年生まれ。2000年早稲田短歌会入会。
同人誌「pool」、ガルマン歌会で活動。

「2023年 『緑の祠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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