文学ムック たべるのがおそい vol.1

  • 書肆侃侃房
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本棚登録 : 262
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863852198

感想・レビュー・書評

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  • 小説(翻訳を含む)とエッセイと短歌の3本立て。それぞれ、読むときのバランスをよく考えた配置がされていて、リーダビリティが高い。

    「こちらあみ子」の今村夏子さんの短篇「あひる」がやはりというか、ディープインパクト。前半の若干のスリラー感から、後半の「わたし」の隔絶感になだれ込むあたりが、パトリシア・ハイスミス「回転する世界の静止点」に通じるような気がする。円城塔さん「バベル・タワー」が森見登美彦作品っぽいヘンテコ感+くそまじめ感でかなり好きである。「日本文学全集」で「雨月物語」の現代語訳を手掛けられたことが効いているのかもしれない。西崎憲さん「日本のランチあるいは田舎の魔女」はちょっと伝奇めいた柚木麻子さん「ランチのアッコちゃん」っぽいと思いながら読んだ。

    短歌は挿絵とのレイアウトが美しいと思ったし、語句づかいも面白いと思ったものが多いけれど、正直な話、ナルシスティックに自分の内面を読んだものばかりで疲れる。小説だってつまるところそうなのかもしれないけれど、もう少しフィルターがかかって突き放して書かれたところというか、読者との距離感を取ったところが私は好きである。短歌の作者さんには申し訳ないけれど、下着一丁(あるいは全裸)で迫ってこられる感が強くて辛いんです、個人的に。

    掲載作品のなかでは、イ・シンジョ/和田恵子訳「コーリング・ユー」が一番好みだった。電話越しの知らない相手の内面に踏み込んでいく感じは、ちょっとニコルソン・ベイカー「もしもし」に似ているかもしれない。

    乱暴な言い方をすれば、これと『MONKEY』があったら、他の文芸誌をごっそり無視して前に進めるような気がする。でも他のも読むよ。

  • ・穂村弘 夢の中の町
    見慣れたものが、ほんのちょっと視点を――あるいは名前を――ずらすだけで、ぜんぜん別物のように見えるふしぎ。そんなふしぎを追い求めているのかな。
    ・今村夏子 あひる
    一見、ほのぼの系のお話で、とくに大きな事件もなく終わるんだけど、妙に不穏。なんともいえない、そこはかとない暗さというかこわさが立ちのぼってくる。この人の作品はこれが初めてだったので『こちらあみ子』(だっけ)も読んでみないといけない。
    ・再会 ケリー・ルース
    喪失をえがいた短編。一度読んだだけではちゃんと把握できなかったけど、今も把握できてるのかあやしい。
    ・バベル・タワー 円城塔
    こういう伝奇物っぽい話好き。とてもありそうに始まって、どんどんなさそうなところへ向かっていった。
    ・はばたく、まばたく 大森静佳
    「曇天に火照った胸をひらきつつ水鳥はゆくあなたの死後へ」
    (わからないけどなんか好きだった)
    ・桃とカルピスと砂肝 木下龍也
    「キリストの年収額をサブアカで暴露している千手観音」
    「青春の管理下にあるぼくだった 明日を平気で殺しまくった」
    (そこはかとないユーモアと、ぐさりとつきさされる自我を感じた。)
    ・虚構こそ、わが人生 日下三蔵
    ずっと年上の方だと思っていたら中学生で星新一とあったので、あれっと思って調べたら自分より十歳お若かった。わたしも星新一から図書館の大人コーナーに入っていったもんな~。裏と表の二重生活かあ。そういうのもありか。(息子のことを考えてる。)

    ……一編一編ぜんぶ書くつもりだったけど、力尽きた。でもぜんぶすみずみまでおもしろかった。つぎは紙版を買うつもり。

    いちばん好きだったのは、最後の「日本のランチあるいは田舎の魔女」。
    物語を読む楽しさを存分に味わった。そして出てくるランチがとてつもなくオイしそうだった。くもりさんとまた会いたい。

  • あひる、目当てで読んだ。
    いびつな人達のほんのわずかな日常の一瞬ってことなのだろうか?
    子供達にとっても、両親に取っても、あひるの存在は、かわりのものが届くまでのつなぎ、ってことなんだろうか?

  • 読んだりやめたり読んだりやめたり。そういえばこんな風に読むのは久しぶりだ。雑誌は出会いの場でもあるんだな。

  • 評判が良くて「あひる」読みたさに図書館予約を待ちに待って読んだけど、なんとも拍子抜けする内容だった。モヤモヤ感ある。

  • 今村夏子を読みたくて

  • 小説、随筆、短歌。
    様々な作品を一度に読めて、お子様ランチのワクワク感がある(気持ちの高揚についてであって、幼いという意味ではない、念のため)。
    木下龍也さんの短歌と今村夏子さんの小説が特に良かった。
    木下さんの歌は新鮮で、けれど前から知っていたように馴染む。
    そして今村さんの「あひる」はもう、もう、良さしかない。上手い!
    今後の刊行が楽しみだ。

  • 今村夏子さんの「あひる」に惹かれて手に取りましたが、味わい深い一冊でした。
    文学ムック「たべるのがおそい」は、福岡の出版社書肆侃侃房の小説と翻訳と短歌の本です。
    今村夏子、穂村弘、西崎憲、藤野可織、日下三蔵等をゆっくり食べようと読み始めましたが、ぐいぐい引き込まれ、早飯になってしまいました。

  • 藤野香織さんの「静かな夜」が良い。見えないもの―死者とか気配とか地獄とか―を扱っていて、タイトル通り、話者の息づかいが聞こえそうな感じに、近く静かに進むのがいい。前半は女性、後半は(女性のパートナーである)男性の一人称。
    この良さは、短編だからこそ、という気もする。長編はどういう作風なのか少し気になった。

    ほかの収録作品もぼちぼち読みたい。

  • 藤野可織「静かな夜」
    不穏で気味が悪いのに、なぜか読んでいて心地よかった。

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著者プロフィール

1962年、北海道生まれ。歌人。1990年、歌集『シンジケート』でデビュー。その後、短歌のみならず、評論、エッセイ、絵本、翻訳など幅広い分野で活躍中。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、連作『楽しい一日』で第44回短歌研究賞を受賞。2017年『鳥肌が』で第33回講談社エッセイ賞を受賞。歌集に『ドライ ドライ アイス』、『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』。他に、『世界音痴』『整形前夜』『蚊がいる』『短歌ください』『野良猫を尊敬した日』など著書多数。

「2018年 『ぼくの短歌ノート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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