- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863852419
作品紹介・あらすじ
■あの第155回芥川賞候補作、待望の単行本化!
文学ムック「たべるのがおそい」創刊号に掲載された注目の表題作ほか、書き下ろし2編を収録
【新たな今村夏子ワールドへ】
読み始めると心がざわつく。
何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。
淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。
あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」。おばあちゃんと孫たち、近所の兄妹とのふれあいを通して、揺れ動く子供たちの心の在りようを、あたたかくそして鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3編を収録。
感想・レビュー・書評
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どこにでもあるような家族の不思議な手触りの三つの物語。
あらすじを聞いても全然そそられないかもしれないけれど、これを読まないで今年を終えたらきっと後悔すると思う。5年後とか10年後に、きっと後悔する。そんな一冊。
しかしなんだろう。このざわざわとした感じは。
読んでいる人の皮膚の下を動き回るような、そんな落ち着かないざわざわした感じがくせになりそうで。
普通の毎日、何気ない日々、当たり前の時間。そういうものを少し斜めから見ている視線。
こういうなんかよくわからないけど読んだ後、ずっと時間が経ってから何かの拍子に表にぽんっとでてくるような、そんな物語を描く人なんだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読書芸人で光浦靖子が紹介していた作家「今村夏子」さんの本。
以前から気になっていたため購入、読了。
全体に漂う「違和感」、「気持ち悪さ」、「怖さ」何だろうこの作品は。
今まで色んな本を読んだが、この作風・読後感は唯一無二ではないだろうか。
ホラー作品とも違う、人間の内面を描くこの深くエグってくる感じの怖さはある意味でそれ以上だ。
一方で気付いたら抜けられなくなっている中毒性がある、これがまた不思議。
個人的には「あひる」が一番印象に残った。
のりたまの替え玉を用意する父親、宗教にのめり込んでいる母親、そして感情が見えず・何となく無気力な主人公、作品全体に不穏な空気感を漂わせる要素が散りばめられている。
作品としてはこの家族の異質さが最も目立っている。
だが一方で、個人的には別のテーマがあるように感じた。
それは「人の興味の移り変わりの残酷さ」だ。
この家族は最初は「ニワトリ」を飼っていた。
だが、いつの間にかいなくなってしまっていて、このニワトリ小屋を取り壊す形で「あひる」が飼われ始める。
そして今度は「あひる」から「弟の子供」へと関心が移り、あひる小屋は撤去されブランコとなる。
これは物語の裏でも同じことが起こっている。
あひるをくれた新井さんは、あひるを忘れて今は子供の家族と幸せに暮らしている。
家に遊びに来ていた子供達も、誕生日パーティーには結局来なくなり、家からも離れていってしまう。
これは別に異質な家族だけに限定されたことではないように思う。
何となく人間の暗い部分を見つけたような、そんな気持ちになった。
新たなジャンル、作家さんを探していたのでそういった意味ではとても良かったように思う。
その他の作品も読んでみようと思う。
芥川賞を受賞する日も近そう。
<印象に残った言葉>
・おかしい。これはのりたまじゃない。(P19)
・三びきとも?(P55、女の子)
・のりたまの小屋は工事が始まると同時に潰された。庭にブランコを置くのだそうだ。(P62)
<内容(「Amazon」より)>
読み始めると心がざわつく。
何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。
淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。
あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」。おばあちゃんと孫たち、近所の兄妹とのふれあいを通して、揺れ動く子供たちの心の在り様を、あたたかくそして鋭く描く「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の3編を収録。 -
あひるののりたまと両親のものがたり。
自分の子供時代を思い出すような昭和な風景が描かれていた。
子供の無邪気さと冷静さと少しの残酷さ。
こどもは大人が思っているより物事をわかっているけど、そう思いたくないのは大人たちだなというお話し。
表題作他に短編2つ入 -
怖い。
一見ハートフルとも思える始まり方で、じわじわと、気がつけば脱出不可能な、地獄のような日常に追い詰められている恐怖。
読後しばらくは謎の焦燥が止まらない。
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衝撃作と言うとまた大袈裟に!と言われそうだが掛け値無しで衝撃作だった「こちらあみ子」…それ以来「書きたいものがない」と半ば引退同然だった今村さんが「書きたいもの」が出来たときのペンは鋭く次作を待ち望む気持ちを裏切ることはなかった。
誰にも似ていないその世界観はなんと例えたらいいのだろうか?
強いていえば「合わせ鏡のホームドラマ」…
一見なんの変哲もない家族の風景なのだが重なり合う鏡の何枚かに見てはいけないものが写り込んでいるような心のざわざわ感がこの人の作品の特徴でこれがまた癖になる。
短い本だが紛うことない傑作 -
違和感を楽しむための小説かな・・・
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表題作『あひる』は、読み進める内に知らず知らず心拍数が上がっていく。ぼやけた部分で本当は恐ろしいことが起こっているんじゃないかと。
平凡だけど何かが欠乏した家族。その病変がじわじわと広がっていくようで未来に胸騒ぎを覚えてしまう。長女の存在が悲しくてしょうがない。
『おばあちゃんの家』と『森の兄妹』は連作になっている。子供の敏感な心の動きに感じ入ってしまった。
この二話にも鳥が出てきて、それがあひるとの対比にも見える。 -
可愛らしいローズピンクの装幀、あひるの絵、一見牧歌的なこの本の中身には、毒や棘がチクチク仕掛けられていて大変怖かったです。中編3作収録、どれも長閑な田舎を舞台に子供たちが登場するにも関わらず、読後にはなんともいえない不穏な気持ちになる。
表題作は、老いはじめた両親と暮らす主人公女性の家で、引っ越す知人から引き取ったあひるの「のりたま」を飼い始めた途端に、あひる見たさに小学生たちが庭に訪れるようになる。両親は賑やかになることを喜び子供たちをもてなし、交流がはじまる。一見ほほえましい情景だ。
しかし、ストレスで弱ったあひるを素知らぬ顔で取り換える父、妙な宗教にはまっていると思しき母、資格のために勉強しているが働いたことのない主人公、二十歳そこそこで家を出て結婚した弟は帰宅するなり怒鳴り散らし、子供たちはあひるが好きなだけでこの家を好きなわけではない。
作者の、ちょっとした棘の仕込み方が絶妙だなと感心してしまうのは、たとえば主人公の年齢や経歴についてなんの説明もないのでせいぜい20代前半かなと推測して読み進めていると、かなり後半になって弟は結婚してまる8年子供ができなかったと書かれていることで、少なくとも弟は20代後半以上の年齢であり、つまりその姉である主人公はすでに30代であることに読者は気づいてしまう。でも彼女は働いたことがない。
あるいは孫が欲しいと思う母、それ自体は罪ではなく自然な感情だけれど、それを息子とその嫁にぶつければ当然相手はストレスに感じるわけで、息子に怒鳴られてから母はそれを言わなくなったけれど、自分のデリカシーのなさに気づくことはないだろう。代わりにあひるを見に来る小学生を可愛がることの裏側にあるこの両親の闇。誰も本当の悪人ではないけれど、ウンザリさせられてしまう細部のリアリティ。
同じように「おばあちゃんの家」も「森の兄妹」も、おばあさんと交流する子供の話という表層だけなら微笑ましい話のはずなのに、なんともいえないザラザラしたものが読後に残ってしまった。悪気のない残酷さ、今村夏子は怖い。
※収録
あひる/おばあちゃんの家/森の兄妹 -
初読
人の家の暗がり、独特の臭い。
少し前に誰かが座っていた温もり。
どうという事もない、そこはかとない不快。
そういう印象。
なんとなく、どことなく、皆が知ってるような。
三羽ののりたま。
孔雀のような雉。
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