お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

著者 :
  • 書肆侃侃房
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本棚登録 : 1331
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863853652

作品紹介・あらすじ

ポップでシャープでフレッシュ!フェミニズム批評とは、
男女問わず世界の見方を何倍にも豊かにしてくれる超強力なツールであり武器なのだということを、
この快著は教えてくれる。
ライムスター宇多丸(ラッパー/ラジオパーソナリティ)


フェミニストの視点で作品を深く読み解けば、
映画も演劇もこんなにおもしろい。
自由に批評するために、自らの檻をぶち壊そう!
映画と演劇を年に200本観るシェイクスピア研究者による
フェミニスト批評絶好の入門書。

ウェブサイト「wezzy」の人気連載、待望の書籍化!


<登場する作品> 

『ワンダーウーマン』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ナチュラルウーマン』
『わたしを離さないで』『華麗なるギャツビー』『アナと雪の女王』『ファイト・クラブ』
『バベットの晩餐会』『嵐が丘』『すばらしい新世界』『タンジェリン』『フェミニジア』
『キングスマン』『ダウントン・アビー』ほか

<登場する人物> 

ヴァージニア・ウルフ、エマ・ワトソン、マーガレット・サッチャー、
バズ・ラーマン、マーガレット・アトウッド、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェほか

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ただ「面白かったー」がなんとなく物足りなくなってきて、もう一歩、深く楽しんだり、調べたり、理解したいな……
と思う時に必要なのが「批評」です。(……)私は不真面目な批評家なので、批評を読んだ人が、
読む前よりも対象とする作品や作者をもっと興味深いと思ってくれればそれでいいし、
それが一番大事な批評の仕事だと思っています。(まえがきより)
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イギリスの有名なミステリ作家G・K・チェスタトンの短編「青い十字架」に、
「犯罪者は創造的な芸術家だが、探偵は批評家にすぎない」という有名な言葉があります。
たしかに、批評家はテクストを犯罪現場みたいに嗅ぎ回り、犯罪者、つまり芸術家がばらまいた手がかりを見て、
ヘマを探し出そうとやっきになる探偵で、あまり独創性がないかもしれません。
でも、この本に登場したミス・マープルのような名探偵は、
何が何だかわからないカオスから正しいものを救い出してくるヒーローです。
私は批評家にすぎませんが、ミス・マープルと同じような仕事だと言われるならばそれは光栄です。
(あとがきより)
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ゆるめのコラム収録!
・初任給とヴァージニア・ウルフ
・バーレスクを見にいってみよう
・北米のシェイクスピア祭り
・フェミニストの洋服えらび
・『ダウントン・アビー』と女性参政権運動

感想・レビュー・書評

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  • フォロワーさんに教えていただいた本です。めっちゃ面白かった~。ありがとうございました!

    ‘ただ「面白かったー」がなんとなく物足りなくなってきて、もう一歩、深く楽しんだり、調べたり、理解したいな……
    と思う時に必要なのが「批評」です。(……)私は不真面目な批評家なので、批評を読んだ人が、
    読む前よりも対象とする作品や作者をもっと興味深いと思ってくれればそれでいいし、
    それが一番大事な批評の仕事だと思っています。(まえがきより)’

    そう、そうなんです!
    私が無い頭振り絞ってえっちらおっちら批評の本を読む理由もそれなんです。

    ‘フェミニスト批評は、これまでの批評が実は男子文化だった、というところに立脚しています。(まえがきより)’

    そのフェミニスト視点で古典の名作や最近の話題作を読み解くと、、、おやまあ、目から鱗が何枚も、、、!小気味よい筆致でウキウキドキドキしながら読み進められます。一編読む毎に靄が晴れて視界が広がったような爽快な気分。

    腐女子が読む『嵐が丘』/キモくて金のないおっさんの文学論ー『二十日鼠と人間』『ワーニャ伯父さん』/プリンセスは男のロマンー映画に出てくるお姫様と男たち/ロマンティックな映画としての『ファイトクラブ』/理想郷か、公共彫刻か?ー『アナと雪の女王』/愛の理想世界と、ブスー夢見るためのバズ・ラーマン論/etc、、、

    もう一回読みたい、観たいものがたくさんできました。

    本文中にも記されていますが、映画『ファイト・クラブ』は激しいネタバレがあるので注意!

    • まことさん
      5552さん。おはようございます!

      ご紹介ありがとうございました!
      途中まで読んで、わからなくなり、もう一度最初から読み直しました(...
      5552さん。おはようございます!

      ご紹介ありがとうございました!
      途中まで読んで、わからなくなり、もう一度最初から読み直しました(*^^*)
      こういう新しい本の読み方があるんですね!
      とても新鮮で面白くはあったけど、テクストの読み方も複雑化してきているのだなあと思いました。
      最近、簡単な本ばかり読んでいますが、文中に出てきた本で、読みたい本があり、いつになるやらわかりませんが、読んでみたいと思っています♬
      またこういう面白い本があればご紹介ください♡
      2020/01/27
    • 5552さん
      まことさん、こんにちは♪

      実はこの本、他のフォロワーさんからご紹介頂いた本なんです。
      読んでる間はとっても面白くて、読了後に興奮して...
      まことさん、こんにちは♪

      実はこの本、他のフォロワーさんからご紹介頂いた本なんです。
      読んでる間はとっても面白くて、読了後に興奮してレビューを書いたはいいものの、ちゃんと理解ができていたのかと問われたら微妙です(^-^;
      とはいえ、新しい本の読み方を提示してくれたので、楽しみが増えました。

      私も読みやすい本ばかり読んでいるので、歯ごたえのある古典を読みたいな、と思って積ん読だけはしています、、、。
      でもなかなか重い腰が上がらない、、、。

      こちらこそ、良い本があったらご紹介くださいね。
      コメントありがとうございました♪

      2020/01/27
  • レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。

    著者の専門はウィリアム・シェイクスピアのフェミニスト批評だそうです。

    以下抜粋。
    フェミニスト批評は、これまでの批評が実は男子文化だったということに立脚しています。
    批評の歴史において批評家は男性中心的な社会の中で作られたテクストを読み、それが普遍的に通用する解釈なんだ、と無意識に性別や性的指向を問わず、知らず知らずのうちに、男性中心的なものの見方を身につけてしまっています。
    女性は自然と男性にあわせた見方でものを見ていることも多く、なにか変だな…と思ってもうまく言葉にできなくなりがちです。
    その中で、フェミニスト批評や、その近接分野であるクィア批評というのは、女である私にも楽しめる読み方を提供してくれるものでした。
    以上抜粋。

    フェミニスト批評の考え方を身につけることで、著者は、ハスクリーの『すばらしい新世界』に対する感想を、ただの嫌いから、興味深い嫌いに変えることができたそうです。

    今までに私が読んだ文芸批評の本らしきもので、一番面白いと思ったのは池澤夏樹さんの『世界文学を読みほどく』という大学での講義録でしたが、今は、ジェンダーでテクストを読むという時代なんだと初めて知ったのが衝撃でした。
    取り上げられているテクストや映画は古くはシェイクスピアから『アナと雪の女王』まで。
    今まで、何げなく読んでいたテクストや映画にこんな隠された(気が付かなかっただけかもしれませんが)深い意味が数多く表現されているとは、そこまで読み込めないと読書をした、映画を観たといえなくなるのかと考えてしまいました。
    こういうわかりやすい批評の本が、もっとあれば私のような読解力の浅い人間にもよくわかるのだろうと思いました。
    ここにとりあげられた本ではディストピア小説を読んでみたく思いました。

    • 5552さん
      まことさん、こんにちは♪

      読了されたのですね!
      まことさんも楽しまれたようで嬉しいです。

      私は普段読書してると「?」と思うとこ...
      まことさん、こんにちは♪

      読了されたのですね!
      まことさんも楽しまれたようで嬉しいです。

      私は普段読書してると「?」と思うところでも、「まあまあまあ、、、」とスルーしちゃうタイプなので、この著者のようにしっかり考えたり、調べたり出来る方を大尊敬します。
      それを分かりやすい言葉でこうして本にして下さって、、、ありがたいです。

      まことさんならお読みになったことあるかもしれませんが、斎藤美奈子さんの『妊娠小説』『文壇アイドル論』が面白かったです。そういう切り口があったのか!と思いましたよ。

      レビューで言及されていた池澤夏樹さんの本が気になりました。
      機会があれば読んでみたいと思います。



      2020/01/27
    • まことさん
      5552さん♪

      お返事ありがとうございます!
      5552さんは、映画にもお詳しいので、さぞかし、理解されて、面白く読まれたのだろうな~...
      5552さん♪

      お返事ありがとうございます!
      5552さんは、映画にもお詳しいので、さぞかし、理解されて、面白く読まれたのだろうな~と思っています(*^^*)

      斎藤美奈子さんの本は何冊か積んでいますが、その2冊はありません、図書館で目にしたことがあるので、読んでみようと思います♬どうもありがとうございます!
      2020/01/27
  • フォローしている方のレビューを読んで、フェミニズムについて楽しく学べるかな?と図書館に予約。
    半年以上待ってようやく順番が回ってきた!

    この本のタイトルは他の方も書いていたが、マザーグースの「What are the little boy made of?」の中の一節
    「What are little girl made of? 女の子は何でできている?」
    「Sugar and spice and all that's nice 砂糖にスパイスそれに素敵なもの全部」
    をアレンジしたものだ。
    素敵なものではなく爆発的ときたか!と先制パンチを食らった気分で読み始めたが、その通りなかなか刺激的であった。

    読書量、観劇、映画鑑賞も桁違いなのに、きちんと学術的視点で分析され、我々には「不真面目な」視点で解説してくれるのだから、相当に賢い方なのだ。
    しかし、どんな作品も裏の裏を読むその姿勢が、浅い読書しかしてこなかった人間には「うへぇ~、そんなん無理ですわ~。」となり、
    腐女子的読解術など、もうそれは腐女子の自覚がないと無理な気が…と挫折感を味わう。

    私は読んだことのない作品も多く、この本を堪能する上で「あ~スタート地点にも立ててないな~」というのが正直な感想。2020.10.3

  • ー マギー(マーガレット・サッチャーのあだ名)は私が常にきちんとした服装で、社会と波風を立てず、自分の成功だけに専心することを望んでいます。内なるマギーは、私の心の中にある男社会でバカにされず立派な人間として認められたいという野心を象徴しています。マギーに従えば男性中心社会や資本主義社会を生き抜けるはずなのです。利己的になりなさい!個人主義的になりなさい!あなたはエリートらしく振る舞わないといけないんです!

    そんなわけありません。マギーの言うことなんか聞いてはいけません。だいたい、なぜ男社会の決まりに従って成功しないといけないのでしょうか?スーツは捨ててヒラヒラのレースとかを着たっていいじゃないですか。他の女性が困っている時にはできるかぎり助けましょう。私は弱い人間なので、自分だってそのうち助けが必要になるかもしれません。おかしいと思ったことは批判しなければ良心が許しません。マギーは「家庭の天使」と同じくただの幻で、私が昔から抱えていた強迫観念に名前がついた存在に過ぎません。そういうわけで、理性で内なるマギーを頭から追い払います。 ー

    フェミニスト批評によって、普段何気なく見ている作品がより面白くなるという。
    フェミニズムの切り口に限らず、何かの切り口を念頭において作品を鑑賞すると面白味に深みが出てよいとのこと。
    読みやすくて面白かった。

    『未来を花束にして』は気になっていたので今度観よう。

    フェミニズムは苦手なんだけど、個人的に大事だと思う事は、
    (1)自分の価値観・感情を他人に押し付けないこと。あくまで自分の価値観・感情として表明すること。
    (2)自分の経験・体験を普遍化しないこと。あくまで自分の経験・体験として表明すること。
    (3)自分は常に何らかのコードに囚われて生活していると常に自覚的であること。そして、自覚的であればコードフリーになれるなんて思わないこと。

    この点に気を付ければフェミニストに叱られることはないんじゃないかと思われる…。

  • フェミニスト批評のエッセイ25篇を収めている。
    映画はあまり詳しくないので、あのシーンの、あのあたりから、と言ったあたりをつけることはできなかった。
    しかし、ディズニー作品、「シンデレラ」や「アナと雪の女王」をあつかっていたり、ドラマ「ダウントン・アビー」などは見ていたのでそれについて触れた箇所は楽しめた。
    可能であれば、本作に登場する映画や、書籍に目を通しておいた方が良い。
    何をテーマに語られているのかわかる。
    まあ、批評なので当たり前か。
    カズオ・イシグロの「私を離さないで」について触れた箇所は興味深い。
    カズオ・イシグロはノーベル賞作家の中では読みやすいし、故三浦春馬主演ドラマもあるので手に取りやすいかと思う。

    さて、そうはいっても全部を見たり読んだりするのは大変な労力なので、もちろん本作だけでも良い。
    キモいおっさん、とか、ブス、とかそんな視点で読むものも登場するので笑ってしまう。
    どんなものかと言うと、
    あの子にもう少し早く告白していればあの子は僕と結婚したはずなのに的思考。
    きっも!
    いや、丁寧に言おう。哀れで滑稽である。
    無人島に二人だけになってもそれはないよ、という女性サイドの意見は完全無視。
    文章だと、それはおかしいとわかるのに、実生活ではまかり通るのが不思議だ。
    女性だけのユートピアの話も面白い。
    男がいないと土木作業が云々、と言った批判を、著者が、君たちは道具としか見られなくて良いのかい?と一蹴するのは小気味良い。

    物によっては、「私はそこまで思わなかったけれど」というものもあると思う。
    それはそれとして良いと思う。
    正しい考えがあるわけではない。
    ただ、視点を変えて、色々な読み方をしてみるというのは、社会生活に必須だと思う。
    自分が信じることを信じ続けるのは尊いが、相手を受け入れる度量も必要だ。
    私は誰かを押さえつけていないか?
    自らに問い、日に三省するような人でありたいと本書を読んで感じた。

  • 腐女子の読解技術についての章、これか!!と思った。私は嵐が丘みたいなラブストーリーが大好きで、似たタイプの異性愛作品だとコレラの時代の愛とかBBC版SHERLOCKのアイリーンアドラーの回なんかがあるんだけど、結ばれることはないがゆえのこの感情の強さ、実質的には結ばれてる!!みたいな読み方、言われてみればBLから学んだのか〜
    私も割とフェミニズム的に読みがちだけどずいぶん前に読んだ『私を離さないで』はもう一回読みたい。『ファイト・クラブ』も…

  • これまで「批評とはなんぞや?」が今ひとつピンと来ていなかったけれど…
    著者によれば「読む前よりも対象とする作品や作者をもっと興味深いと思ってくれればそれでいいし、それが一番大事な批評の仕事」
    「不真面目な批評家」によるフェミニスト批評入門書。これからの観劇、読書に新しい視点(武器)を得られること請け合い!面白かった。

  • 「読んだり観たりするだけじゃなく批評しようぜ!」と
    いう批評へのお誘い本。

    私自身が読書をして「面白かった」「いまいち」
    「合わなかった」で終わってしまうので
    なぜそう思ったのか、を考えるときに「批評」する
    ことが必要なんだなと認識しました。
    「批評」には「精読」し、「何かひとつ
    切り口を見つけること」が必要だということ。

    個人的に面白かったのは
    ・さよならマギー…ヴァージニア・ウルフによる
    「家庭の天使」と著者による「内なるマギー」
    (=マーガレット・サッチャー)について。
    私にはこの2つが半々で心に存在してる気がする。
    ・キモくて金のないおっさんの文学論…
    身も蓋もないタイトルだけど内容には同意せざるを
    得ないほど面白かった。
    ・プリンセスは男のロマン!…そうだったのか!と
    衝撃を受けた。
    ・世紀末の悪女?自己実現のため戦う日論?
    ゲイのアイコン?…「サロメ」って色々な解釈が
    あるんだなぁ…感心した。
    ・理想宮か、公共彫刻か?…「アナ雪」見たこと
    なかったけど、引きこもって芸術作品作ってたら
    引っ張り出されたのか…えぇー…。

    多面的に読書ができたら、とても有意義だろうなと
    感じました。ただ私にできるかどうかは不明。

  • 今回、批評の意味を初めて理解した。
    東大の総長が蓮實重彦さんだったとき、初めて批評という仕事を知った。しかし、批評が何をするものなのかは、まだ、理解していなかった。

    批評とは、作品をある視点からみて、精査することだとわかったが、そもそも、自分で読む分には1つの視点空しか読めない。確かに成長してから読み直すと、2つめの視点で読むことができるかもしれない。批評はこれを意識的に行っている。

    ということで、同じ物語が、2回も3回も楽しめたり、そういう見方もできたんだ!という新鮮な感覚を目覚めさせてもらったりした。

    そんな新鮮な感覚が残った読後感だった。
    個別の議論は、皆様にお任せしたい。

  • 切り口はフェミニズムでの映画や文学作品や舞台の批評だが、フェミニズムは全く鼻につかず、えっ!そうだったのという新たな発見もあり、かなり面白くまた気取らずカジュアルな感じで読める本書。読んでない本は読みたくなるし見たはずの映画ももう一度見たくなりました。

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著者プロフィール

英文学者、批評家。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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