悪友

著者 :
  • 書肆侃侃房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863854055

作品紹介・あらすじ

第二回笹井宏之賞大賞受賞!

「一首一首が頑なに手放そうとしない純粋な心のきらめきのようなものを、とても得難いものだと感じた。(……)奇跡が、この歌集のなかでは何度も起こっている気がする」(大森静佳)

「普遍への眼差しを一貫して保った、厳しさと勇気にあふれた歌集だと思う」(染野太朗)

「一冊を読むと、世の中から半分ずれてちょっと格好良くやっている「僕」たちのよるべない魂が感じられる。応援しよう。遠くからだけど」(永井祐)

「どうか勝手に縛られて落ち着かないで、ゆらゆらと濡れて乾いていく作者の息遣いを聞いてみてほしい」(野口あや子)

「作中の彼らは、自分らだけで伝達しあえる符丁で、まじないのように精神を共有しあう。それを作者は連作の題に据え、連作内ではその説明をしなかった。そのすべての言葉の取り扱いに対し、僕は信を置く」(長嶋有)

【歌集より5首】

ことばから補助輪が外されてなお漕ぎ出した日のことを言うから

雪の染みた靴から君が伸びている そんな顔で笑うやつがあるか

散るときがいちばん嬉しそうだった、そしてゆったり羽織るパーカー

立ちながら靴を履くときやや泳ぐその手のいっときの岸になる

スノードームに雪を降らせてその奥のあなたが話すあなたの故郷



【栞】

対岸へのひたむきさ  大森静佳

映画のように  染野太朗

座り直して季節は過ぎる  永井祐

孔雀と螺子  野口あや子

サードランナーはいない  長嶋有

感想・レビュー・書評

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  • 「悪友」とはどんな関係だろうか。
    新明解国語辞典くんによると、
    ‘’相手を悪い方に誘い込む、好ましくない友達。(反語的に、親友を指すこともある)←→良友‘’
    と説明されている。
    「そうだ、作ろう」と思って作れるものではないだろう。
    どうしても、そうなってしまった、というようなある種くされ縁的なもの。
    それは、意識的に作る恋人よりも、エロい気がする。(個人の意見です)

    [イヤホンを耳から抜いて葉桜の下でちいさく名前を呼んだ]『悪友』

    この歌は一読してそのエロさに慄いた。
    私が女子中学生だったら、「えろい、えろい」とクラス中の同級生に推しまくって、めっちゃウザがられたい。

    [欲しがってくださいあらゆる避雷針抜けて轟くような祝いを]『猫はどこに行く』

    この歌には胸を突かれて泣きそうになった。
    ああ、欲しがってもいいんだ、と、欲しがることを許された気がした。

    他にも、

    [機内食のプリンの完成度の高さ 高尚でもなくても生きようよ]『いつかの冬』

    「束の間の寿命がのびる 有線にあなたが諳んじた春の歌」『飛び級』

    [もたれていたガードレールの粉はらい白夜みたいに笑ってくれた]『はためく』

    [洪水のあとの世界で鳥であるきみに摘まれるオリーブがいい]『はためく』

    [そうか、紙吹雪のなかに宝くじあなたが混ぜてくれたのだった]『20ゼーロを賭けて 漫画・アニメ‘血界戦線’より』

    [雨後にある歩道橋へと陽が射してあれは夏の門ともみえて]『はためく』

    [降車してすぐに電話をくれたってわかるよ 生きることが私信だ]『悪友』

    [アクションを観る才能がない同士わからないとき笑ってしまう]『生前』

    好きな歌が多くて選びきれない。
    榊原さんはオタクを自称していて、この歌集にも推しに捧げる短歌“推し短歌”が何連作か選ばれている。
    その名も『推し短歌入門』というタイトルの短歌入門書も今秋出版。

    すうっと軸が通ったガラスペンのような繊細さとうつくしさ。
    それでいてオトコマエな歌集だと思った。

    印象的な装画はハタ屋さんという方。
    腕のスジと顎から首のラインがいい。




    • 5552さん
      まことさん、こんばんは!

      榊原さんの短歌、分かりやすくはないですよね。
      私の解釈も合っているのかどうか…。
      もしかしたら、御本人がレビュー...
      まことさん、こんばんは!

      榊原さんの短歌、分かりやすくはないですよね。
      私の解釈も合っているのかどうか…。
      もしかしたら、御本人がレビューを読んで「全然違ーう!」と思っている可能性も高いです。
      短歌って、詠み手と読み手の相性もありますよね。
      私は、榊原さんの歌は「理解してるとは言い難いけど、好き」だなと感じます。
      俵万智さんは、前にも書いたかもしれませんが、自分で歌を作ってみるとその凄さがよく分かります。
      平易かつ自然な日本語で三十一音に収めながら、読者に豊かなイメージを与える歌って、そう簡単に出来ないですよね。
      2023/11/04
    • まことさん
      5552さん、こんばんは♪

      突然ですが、『NHK短歌12月号』佳作掲載、おめでとうございます!
      私、定期購読しているので、今日届きました。...
      5552さん、こんばんは♪

      突然ですが、『NHK短歌12月号』佳作掲載、おめでとうございます!
      私、定期購読しているので、今日届きました。
      岡野大嗣さんに、(たぶん)自由詠が選ばれていました。
      どこに、コメントしようか、(しないでおくか)考えたのですが、おめでたいので、コメントさせてもらいました。自分で、見たいからやめてほしい時はおっしゃってくださいね。m(_ _)m
      5552さんの、優しい気持ちから生まれた歌なんじゃないかと思います。
      私は、先月分から、投稿をはじめたのですが、後から考えると、とんちんかんな歌を送っているので、まず、今回もダメだろうと、最初から思っていたので、特に落ち込みはなかったです。
      でも、以前、おっしゃっていただいたように、5552さんと、一緒に載せてもらうのが夢です。

      5552さんのレビューも、楽しみにしています。
      そちらにも、あらためてお祝いにいきますね!

      私も、読んだら発売日前にレビューしてしまうかもしれませんが。
      2023/11/17
    • 5552さん
      まことさん、おはようございます!

      ええっ、岡野大嗣さんに選ばれていたのですか!
      びっくり。
      実は今『推し短歌入門』をちょっとずつ読んでいて...
      まことさん、おはようございます!

      ええっ、岡野大嗣さんに選ばれていたのですか!
      びっくり。
      実は今『推し短歌入門』をちょっとずつ読んでいて、「自分、短歌の基本のきの字も知らなかった…」と、自信をなくしていたので、嬉しい驚きです。
      なので昨夜、まことさんにコメントを頂いてから、ふわふわと落ち着かない気持ちでした。今はもう落ち着いたのでお返事書かせてもらってます。
      教えていただきありがとうございます!
      たしか、岡野さんには4首送ったので、どれが選ばれているのか楽しみです♪
      でも、定期購読って発売日の結構前に届くんですね。
      購読を検討しようかな。

      ある歌人が、ネットで、「歌を読んで詠んでいると先に目が肥える。だから自分の歌が稚拙に見える。」と、書かれていました。(前にも書きましたかね。)きっと、成長してるってことですよね。
      まことさんの歌が掲載される日を楽しみにしています!

      もしも私の歌がまた掲載されていたら教えてくださいね。
      コメント書いていたらまた嬉しさが蘇ってきました。

      2023/11/18
  • 正直分かりやすい歌集ではないと思う。それでも強い力を持っている歌が並んでいる。

  • あとがき
    「この歌集が、読んでくださった方の心の中で、あらゆる呪いを解くための武器となることを願います。強く願います。」

    呪いも武器もとても強い言葉。
    その強さが違和感なく感じるほどに鋭い歌たち。
    透明で繊細で、でもそこにある芯はどんなに曲げてもひゅるんと真っ直ぐ上を向くよう戻るしなやかさがあるーそんな風にも感じる歌たち。

    歌っていいな、言葉ってすごいな。
    そう思える歌集でした。

    「どうぞお元気で」
    というあとがき最後の挨拶

    またお会いできるのを楽しみにしています。

    とお返ししましょうかね。

  • 「ローソンが潰れてできた大きめのローソン 性善説を信じる」(32頁)
    神の見えざる手が働く市場の性善説を信じたくなる出来事である。日本では市場原理を敵視する公務員的管理主義の発想が根強い。店舗の新規出店を市場原理に委ねると、チェーン店が個人経営の店舗を駆逐する一方、チェーン店は採算が取れなくなれば簡単に撤退してしまい、住民は買い物難民になるとする類の見解である。
    しかし、市場原理は需要があれば需要に応えるものである。むしろ、公務員的な管理主義は需要ではなく現状の供給から逆算して考えがちである。病院のキャパシティがオーバーするから、入院をさせずに自宅療養でしのいでもらうというような。

    一方で本書は海外旅行という非日常を詠んだ短歌もある。日本文学独特の表現形式の短歌と海外の組み合わせには妙味がある。西行のように旅と和歌の組み合わせは昔からあった。

    「カタルーニャ国旗はためくバルコンに沿ってジェラート屋にめぐりあう」(70頁)。
    スペイン旅行の短歌。カタルーニャはスペインの自治州であるが、独自の歴史や言語を持ち、2017年10月にはカタルーニャ共和国として独立宣言が行われた。日本人は同質性が強いために意識が低いが、独立を求める人々の熱い思いが感じられる。

    さらに本書には漫画やアニメから詠んだ短歌もある。漫画やアニメは現実の体験ではないが、そこから本人が感じたことは本人にとって本物の感覚である。日本には直接体験でなければ経験ではないという風潮が根強いが、「我あり、故に我思う」ではなく、「我思う、故に我あり」である。

    「怒りをごまかすことなく、恨みを美化することなく、進んでいきたい」(126頁)。これは表現者の正しい精神である。文章を書くことは過去にこだわることである。日本には過去を水に流すことを美徳とする愚かしい傾向があるが、奴隷根性を増やすだけである。

  • 『推し短歌入門』を読んだあとなので、いくつかの歌は誰をモデルに読んでいるのか知っている。それでもまた別の"推し"がよぎり、彼の人たちの関係に思いを巡らせた。
    特定の人物を描いても、三十一文字に詰め込むことで余白が増えて想像の余地が生まれることが短歌の魅力であるように思える。知らない人の話でも、情景が限られるからか知ってる人のような気がしてくる。素敵な作品でした。

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著者プロフィール

1992年愛知県生まれ。奈良県在住。第2回笹井宏之賞大賞、第31回歌壇賞次席。2020年に第一歌集『悪友』(書肆侃侃房)、2023年に第二歌集『koro』(書肆侃侃房)を刊行。過去に京大短歌、奈良女短歌、短歌結社「未來」の「陸から海へ」欄、同人「遠泳」に所属。現在は短詩集団「砕氷船」の一員。

「2023年 『推し短歌入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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