- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863855144
作品紹介・あらすじ
お互いにワンパンし合う関係で倒れた場所を花園とせよ
『おもろい以外いらんねん』『きみだからさびしい』の大前粟生、初めての短歌集。
ひとつ読むごとに 自分の中の知らないスイッチが押されどこかで知らない窓が開くこの感情、どうすりゃいいの?
────岸本佐知子(翻訳家)
このお言葉、あのお言葉、お日柄によって「グッ心地」が変わりました。
────もう中学生(芸人)
【収録歌より】
この痣を月に結んで大丈夫とびひざげりの妄想をする
棺桶に詰められるならパフェに似た佇まいでと約束の夏
ポカリスエット突然に目減りして光の代わりに光が入る
晩年はふいに浮上すたとえば鳥たとえば歌の途中で焦げて
ほがらかな血液の流れ悲しみは取り除けないからめぐらしてみる
感想・レビュー・書評
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『ぬいぐるとしゃべるひとは優しい』で注目された小説家・大前粟生(おおまえ・あお)さんの第一歌集。
まずは好きな短歌を。
「人間が濃くなるようにマグカップ黒々とした度胸の煮凝り」
「まなざしの祈りも呪いもこやしにできる枝垂れ桜に私らなるから」
「雲間から絵の具が落ちてセイヨウアブラナとして踊る夜」
「顎を置くのにちょうどいい心だと思われた昼、動けない」
「降りしきる夜の隙間を縫いがてら孤独を探し土つつく」
「反射する光はランウェイ駆け抜けて走って走って爆発しないで」
「なけなしの感受性さえ吸い込まないけどまあ上手カレーうどんだったね」
「俺という俺という俺という距離の病を俯瞰する病」
「閉店後ひとりでお茶がしたいから空地を見つめる幽霊になる」
初読は正直、訳わからん、と思いました。
でも何度も読んでいる内に愛着が湧き、だんだん楽しくなってきました。
大前さんは、奇想小説も手がけられている作家さんで、私のような奇想に慣れていない者にはまだ早かったかな、と最初は考えましたが、読んで良かっです。
短歌の世界がまた広がりました。
大前さんの短歌も「ほとんどの歌は目の前の出来事を元に仕上がっていっ」ているそうで、それがこんな短歌になるんだ、と驚きを隠せません。
そして「実感があるかどうかを第一に作」っていると書かれている。
他者の「実感」ってこんなにも訳わからないものだと実感。
やっぱ、他者ってワンダーだわ、と思いました。
柴犬の短歌が何度か詠まれているのが微笑ましい。
一緒に暮らしてらっしゃるんでしょうか。
あと、大変インパクトのあるこの装丁。
実物はもっと派手で、蛍光レッドの中に金のラメ、ブルーの文字が浮き上がってみえるようになっています。
目がチカチカしますね。 -
小説を書いている、大前粟生さん。なぜか小説では、物語の時間につきあうばかりで、自分自身の時間や体のことをどんどん忘れてしまう。一方短歌は、もっと自分自身から発せられる実感をそのままに表現できるおもしろみがある、と。
でも、大前粟生さんお短歌は難解、心の底は難解。その中でも、なんとなく気になった歌は。
顎を置くのにちょうどいい心だと思われた昼、動けない
巡る度深くなる目の下のくま来世に来たら経験と呼ぶ
地下鉄の湿気でたわむ広告を自由にするため目は閉じた
公園のシャボン玉から生まれた君とでんぐり返って花束になる
約束に現れた人を遠くから眺めたさびしさつながりますように
電柱を倒す計画犬の尿革命はもうはじまっている
体から力が抜けてコーヒーの蓋開けられなかった六地蔵駅
ポカリスエット突然に目減りして光の代わりに光が入る
生活を味わうための文体として雪 遅く起きるから降っていて
ほがらかな血液の流れ悲しみは取り除けないからめぐらしてみる -
ほぼ、ぜんっぜん訳わかんない歌なんだけど
意味はわかんないけど、感情や歌に込められた
祈りだったりは、ほのかに伝わってくる。
朗らかさだったり
怒りだったり
おかしみだったり。
ぶっ飛んでて、かなり好きな短歌集でした。
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詩歌を読むということ
武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000247835 -
新しい短歌の形。
近代美術館で、不思議なモニュメントを見た時のような奇妙だけれど惹かれる感覚に陥ってとても楽しかった。現代美術的な雰囲気を多分に感じました、
認識や思い込みをぶっ壊される。
ただしその分意味がよくわからないし、リズムも壊されている感じ。
言葉遊びのようでいて、光景を想像するとなんだか笑えたり、寂しくなったりする。
考えることを放棄して読んでもいいけれど、考えたり想像したりすることで、イメージが広がっていく感覚になれた。
もしかしたら読み方があるのかもしれないけれど、一読しただけだとその奥に意味があるのか、はたまた意味なんてなくて感覚的なものなのか掴みどころがない感じです。
身体を分解するイメージの短歌や、犬の目線になる短歌、子どもや犬が印象的に登場する短歌など、非常にユニークな世界観。 -
字余りが多すぎて腹が立ってきた。
もちろん字余り自体が悪い訳ないが、短歌であるにもかかわらず全体的に三十一文字に入れ込もうとする熱意と誠意が感じられず、好き放題字余りにしている印象を受けた。これじゃ短歌にしている意味ないのでは?と思いました、、、
大前さんは、ほとんどの歌は目の前の出来事から仕上がっていった、とあとがきに書かれているので、
「平...
大前さんは、ほとんどの歌は目の前の出来事から仕上がっていった、とあとがきに書かれているので、
「平熱がいままでになく高いんだラウンド・どうも・ブリリアント・カット」
という歌は、もしかしたら、恋人にプロポーズしたのかな、なんて、想像(妄想)するのも愉快です。(ブリリアントカットって、ダイアモンドによく使われるカットなので、指輪を贈って、緊張してたのかな、と妄想。)
岸本さんの帯文は強力な吸引力ですよね。
岸本さんなら、大前さんの歌からさらに妄想を広げて、常人には想像もつかない世界を思い描けそうです♪
「平熱がいままでになく〜」は、たしかに5552さんの妄想?通りに、プロポーズでカァッとテンション上がっている雰...
「平熱がいままでになく〜」は、たしかに5552さんの妄想?通りに、プロポーズでカァッとテンション上がっている雰囲気ありますね!妄想楽しそう。
岸本佐知子さん大好きなので帯で食いついちゃいます。
お、111108さんもそう思われますか。
そう思うと、ドキドキしちゃいますよね。
頭を捻り...
お、111108さんもそう思われますか。
そう思うと、ドキドキしちゃいますよね。
頭を捻りながらの妄想、楽しいです♪
111108さんも機会があれば是非。
私も、他にもいろいろな短歌に触れてみたいです。