- Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863855687
作品紹介・あらすじ
トロの吐露リスのリスクたわしのわたし掬ってほしい救ってほしい
涙、傷、痛み、女の身体をもつこと。今生きていること全部載せ。
正直でラフでせつなくて、作者を好きになってしまう。
────飯田有子(歌人)
日常のたしかな憤りとときどきの喜びが、
「わたし」の人生を祝福するように歌われていました。
────和田彩花(アイドル)
2023年4月全国書店にて発売予定です。
【収録歌より】
おんなというもの野放しにして生きるには多すぎる爆撃機
愛はお金お金は愛じゃないけれど津波のようなパトロンが欲しい
素敵なことと思う友達の妊娠は知らない国の夜明けみたいな
冷や麦をゆでる八月平和とはわたしでいること家系図途絶えて
iPS細胞は元気にやってるのかなあこっちは元気よマヨネーズ山盛り
女の子を好きなぼくに好きだと言う男の子をなでるぼくの手のひら
賃金のすくなさ自転車を漕ぐちから肉まんふたつ分のおっぱい
独身のからだでどこまで行けるだろうずっと遠洋の漁船の灯り
【目次】
永遠に嚙めないフランスパン
生理休
おんなへん
やわらかな手のうさぎ
空飛ぶ虎
Ms. たらこくちびる
サンドイッチ・ハム男
人生をミニストップ
俺は星屑
心の皮膚
冬の放熱
多くない給料
あかるい前歯
【著者プロフィール】
菊竹胡乃美(きくたけ・このみ)
1995年福岡県生まれ。2015年から短歌を始める。
感想・レビュー・書評
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#菊竹胡乃美
著者は1995年福岡生まれ。2015年から短歌を始めるという略歴のみで、あとがきもなく著者情報が少ない。
女性の叫びにも似た等身大の赤裸々な喜怒哀楽を感じて、笑ったり泣いたりこちらの感情が揺さぶられる。何かと闘っていて気疲れしているときにボディブローのように効いてくる結句。ひらがなにもしっかりとした自己主張ができることを実感できる。読了後も心がざわめき、何度か読み返した。連作の題も真剣さが伝わる。
自分の歌にしたいくらい心を鷲掴みにする歌が並んで選びきれない。何度かスランプは乗り越えたけど同じところをぐるぐるして壁を乗り越えられない状態が続いています。お手本にしたい歌集。
見たことのないヘルシンキの水平線そこはそこでの生きづらさ
人ひとりあきらめると友達が増えるね出勤途中の秋風
抱きたいと言われ脳が滑走する元気はどこかの河川敷
女性は女性の見方とはかぎらない立ち上がり立てたい焼きたてのパンののぼり
手洗いで下着を洗う福は内 男の人のさびしさは外
人生下手倶楽部のために開かれるブラインドタッチの放課後学習
好きなタイプに好かれないけど好きな犬に好かれるうれしさ菜の花に風
初恋が死んだ記念日夕方の畑で野焼きじいちゃんと二人
たのしいことのひとつひとつかなしいことのひとつひとつ電子レンジのオレンジのひかり
わかってほしい橋を渡ってわかられないままでもいっかの草原に着く詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1ページ目読んで即買い
うわって撃ち抜かれるような素敵な短歌がたくさんでめちゃ好きでした。
こ、これだ〜ってなったやつ↓
「社員証の私ウケる誰にも心開いてないって顔」
社員証の自分の写真って見るたびに微妙にざらつくというかモヤモヤするんだけど、言葉にしてくださってありがとう、、、
何気ない苦しみとかもやもやを言語化して昇華してくれる短歌って素敵だなぁと思いました -
短歌の本を読むのは初めてだった。独特な世界観だけど、くすっと笑えたり、納得できたり。短い言葉の中に、色々な想像を掻き立たせる力があって純粋に面白い。年齢が近い作者だからこその共感できる短歌もあった。短歌に馴染みのない若い世代も手軽に読めて共感できる作品だと思う。
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「生理中のからだで何かを作ることてめえはてめえのお弁当を作れ」
「からあげを揚げるような手軽さで子供が欲しいと言わないで」
「女子じゃないのに女子大生になりたいと思わず叫ぶ 春だから」
短歌初心者です。現代短歌パスポートに載っていた、菊竹瑚乃美さんの短歌に惹かれてついこちらも購入。書評等を確認せずに読み始めたがすっと心に入り込んできた。性や生理、セクハラなどなんとなく言いづらいことをシンプルにピュアな言葉で、だけれど力強く表現していると感じた。